K/Night

K/Night

理想と現実…?


風が吹く。
それは守護の風。
テラスに出てその風を受ける。
短く切られた黒髪が持て遊ばれた。
「そう…彼が…」
風が教えてくれた情報に、何時もの微笑をたたえ、『彼』を迎えに下に下りていく。

「久しぶり」
「久しぶりです、国王」城門前に迎えに行ったのは少し離れた国の王。
俺より年下で、俺より大人の国王。
「公式の場じゃないんだからさ、敬語じゃなくて良いって何時も言ってるよね?」
絶やさない笑みを向け、親しみを込めて肩を叩かれる。
「分かったよ」
国王であって国王でない。国民に近い存在だからこそ支持される彼。そんな彼だから俺も好感が持てた。
「それで?非公式に来た理由は?」
咎めているつもりはない。唯不思議なだけ。
彼は無邪気に笑う。
「世界を見て来ようかと思って」
「へぇ」
正直驚いた。だがそれも良いんじゃないかと思った。
「その間、王座はどうするんだ?」
「継承してもらったよ。世代交代って奴?今やらなくとも、何時かやるべき事だ」
「世代交代ね…」
そう、何時かこの国にも起こる事。
「そういえば、奥さんは元気?」
彼は何時だって笑みを崩さない。
「遠征中。もう戻って来る頃だ」
「寂しい?」
「当たり前だよ」
たわいもない会話。
「慰めてあげるよ?」
「また噂を広めるつもりか?」
たわいもないからこそ意味がある。
「まぁ、良いや。奥さんに宜しく言っといて」
風が吹く。
「もう行くのか?」
「うん。この事言いに来ただけだしね」
「もし、その気があるなら今度この国に滞在すれば良い。何時でも歓迎するよ」
ふわり、彼は空に浮かぶ。
「そうだね。今度来させてもらうよ」
屈託無く微笑む。
そして消えた。
移動呪文だった。
代わりに一人の女性が移動呪文で現れる。
「お帰り、奥さん」
手を差しのべる。
その手を握り、彼女は降りてくる。
「ただいま、旦那さま」人を魅了するその微笑み。
「誰か来ていたの?」
「あぁ、彼がね」
「仲が良いのね」
「…噂を信じてるわけじゃ無いよね?」
「私もしちゃおうかしら?」
微笑みの中に怒りらしきものを見付ける。
思わず冷や汗。
「俺が愛しているのは奥さんだけだよ」
「私もよ、旦那さま」
軽い口付け。
離れて微笑み合う。
「彼が宜しくだって。後でゆっくり話すよ」

それは幸せな生活だった。
ずっと続くとばかり思っていた現実。

焦点の合わない瞳で血で濡れた大地を見る。
霞む景色は要領を得ない。
唯漂ってくる血と鉄の臭いがそれが現実だと知らせる。
侵略し、侵略される。その繰り返し。
国の為。
人の為?
全身が血まみれで、既に乾いて皮膚に張り付いている。

彼は此処にいたのだろうか?
彼女は無事だろうか?

想いとは相反する自らの行動。

まだ足りない。
血が足りない。
殺し足りない。

自己嫌悪。
目を見開いて、血溜りの中に嘔吐する。

どうして。

他人の血で濡れた剣。
俺が殺した人のそれ。
腕に当てがう。
躊躇いもなく引く。
切口から見える骨。
どす黒くない、鮮やかな鮮血が飛び散る。
その血は大地に落ち、他の血と混ざって染み込む。
「この世に神という者が存在するのなら教えてくれ!!」
紅く染まる空に向かって叫ぶ。
「どうして…どうして俺は…」

―――存在するんだ?―――

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