器、そのすばらしき器3


 まる陶のショーウインドーに飾ってあった信楽焼きに目を奪われてしまい、中に入るとにこやかな若い店員が出てきました。
まる陶の主人の息子さんです、彼は親切に信楽について私に教えてくれました。 その信楽は私がそれまで見たどの信楽より赤く燃えているような色をしていました。作り方は全然違いますが私のメリタの珈琲カップに近いような赤です。
信楽の作り主は信楽駅近くに店を構える谷清右ヱ門窯でした。そこで信楽の作り方を教わります、紐作りであること、穴窯焼きであること。
 それは最近の釉薬(灰や鉄、などのうわぐすり)をかけた信楽で無く、日本六古窯と呼ばれる窯元で焼かれた古来から焼き方(焼締めと呼ばれます須恵器ともいいますが)で焼かれた自然な器です。
 ちなみに日本六古窯とは 信楽、常滑、越前、備前、丹波、瀬戸を云います。 皆、須恵器の窯で、いまだにそれぞれに窯元が存在します。これら古窯の元になったのは、今の愛知県にあった猿投焼(さなげやき 9世紀から12世紀サナゲでここから各地に分散して出来たのが六古窯です。

 信楽は価格も備前ほど高くなく、その頃の私でも手の出せる値段だったので船徳利や湯飲みを買って楽しみました。

  信楽焼きについて

信楽焼きは日本六古窯のひとつ、狸の置物で有名な陶器の産地です。
 もともとの信楽の土は荒い硅石が含まれた土です。今でも昔からの焼き締めの信楽を作るときにはこの土を使います。
 今はどの産地でも云える事ですが、土は買うもので、買った土で陶器を作ります。このために産地による陶器の特徴は薄らぎ、作家の個性だけで陶器を呼ぶようになって来ました。 昔は土を見れば判った窯元も今では作りと絵と焼きで見分けるしか無くなりました。個性が増えたようで乏しくなったような、複雑な気分で個展を見に行くことがあります。

 信楽は滋賀県の東海道線草津駅から草津線で貴不川駅へそこから信楽高原鉄道で終点の信楽駅周辺が窯元集中地です。信楽にはペンションや旅館もあり泊まり掛けで窯を見て歩くことが出来ます。  信楽焼きは千差万別ですが、私は穴窯で焼いた素焼きの天然釉薬、窯変があるものが好みです。
 穴窯は登り窯より小さく年に4回くらい焼くのが普通です。焼成温度は1100℃~1200℃ 焼き始めて2日位で最高温度に達します。 登り窯で焼くと最高温度に達するのに4日から5日かかります。
酸化、還元と言う工程をへて最高温度へ達しその後窯を閉め1週間程度で温度を下げ窯開けをします。 この時は胸踊るというより緊張感に包まれます。
 穴窯は登り窯に比べると一回当たりに焼く作品量が少ないため、時たま陶工は勝負をします。普通は最高温度に達した後4時間で火を止めるものを5時間6時間焼いたり、還元時間を長くしたりして窯変をより異なったものにする試みをすることがあります。
 こういった時は良い物が取れるかも知れない反面、変形や固着で取れない作品も多くなり、その結果は開けて見ないと判らない、文字どおりの賭けとなります。 採算も悪いため、今では余裕のある作家しかしなくなりました。  

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