北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

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2006.04.03
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朝陽公園南門の「パームスプリング・アパートメント」という高級マンション付設のショッピングモールにあった"ヨーカ堂"(正確にはヨークベニマル/王府井洋華堂朝陽公園南門店)が3月27日にひっそりと閉店してしまいました。昨年の8月にオープンしたばかりですから、半年ちょっとの短い命でした。利用者の一人として大変残念です。

ちなみにイトーヨーカ堂(北京では「華堂商場」)は、現在北京に5店舗あります。営業面積9,000~20,000平米の総合スーパー(GMS)として、食料品だけではなく衣料品や家電なども販売しています。「華堂商場」(少なくとも私が良く行く2店舗)はいつも賑わっています。顧客の中心は、北京の中流より上の層といったところで、ローカルなお店として北京に根付いてきた感じがしています。
いっぽう、今回無くなってしまった(北京の日本人の多くが呼ぶところの)"ヨーカ堂"は、日本で言えば「ヨークベニマル」のほうで、営業面積5,000平米以下で食料品を中心に販売するスーパーマーケットです。北京の老舗デパート「王府井百貨」との合弁で正式には「王府井洋華堂」(社名がヨーカ堂だから紛らわしいのですね)と言い、2004年に東三環路の南側に最初のお店をオープンし、朝陽公園南門店は2店舗目でした。

「王府井洋華堂(ヨークベニマル)」の朝陽公園南門店は、ある意味でチャレンジングな出店だったと勝手に思っています。
100mも離れていないお隣に「京客隆」というローカルな食品スーパーがドンと構えています。「京客隆」は北京に100店舗以上展開していますが、その「京客隆」は恐らくその中でも最も大きく、食品スーパーであるものの、日用品なども充実していて、いつも賑わっているお店なのです。食品スーパーである「王府井洋華堂(ヨークベニマル)」の商圏は徒歩圏内で恐らく半径1~1.5Km位でしょうし、商圏内に競合となりえる食品スーパーは「京客隆」以外にありませんから、ヨークベニマルのほうが敢えて人気店「京客隆」にガチンコ勝負を挑んだのだと思いました。
しかも「京客隆」はバス停のまん前なのに、「王府井洋華堂(ヨークベニマル)」は通りにすら面していないアクセスの悪い地下店舗です。かなりチャレンジングだと思いました。

もちろん、「王府井洋華堂(ヨークベニマル)」には「京客隆」には無い"強み"がありました。それは先発のイトーヨーカ堂(「華堂商場」)が培ってきたノウハウです。例えば、中国的なものだけではなく、お寿司や焼きそばやおでんやピザやトンカツやサラダなどのお惣菜が充実していること、そして火を通して好みの味付けをするだけでよい半完成食品が充実していることです。
「京客隆」の顧客の中心が中流以下の層とするなら、「王府井洋華堂」(ヨークベニマル)はお惣菜や半完成食品や"小湯山"産オーガニック野菜などの"ワンランク上"の品揃えも整え、中流よりちょっと上の層までを狙うことができると考えたのではないでしょうか。
現に「王府井洋華堂(ヨークベニマル)」朝陽公園南門店の背後にはお金持ちのローカルや外国の駐在員が住むような高級マンションが控えており、さらに東側には"小金持ち"のローカルをターゲットとした準高級マンション群が立ち並んでいます。


ところが誤算その一は、背後に控える(準)高級マンション群の入居者が思うように増えなかったことでしょう。「パームスプリング・アパートメント」は別として、その東側のマンション群は竣工が遅れたり、投機目的買いなのに店子が見つからなかったりで入居率が低く、結果として商圏内の高所得者人口がなかなか増えなかったのでしょう。
更に誤算その二は、当てにしていた高所得家族の多くはお手伝いさん(アーイ)を雇っていて、食品購入店の選択権はお手伝いさんが握っていたと言うことでしょう。多くのお手伝いさんは、良いモノをより安く買うことを半分生き甲斐にしていますから、どちらかと言うと身近で安心感のある「京客隆」を選んでしまったようです。そもそも、手料理を作るのが役割のお手伝いさんがヨークベニマルで買って来たお惣菜で済ませるわけにはいきませんし....。
このように、商圏内の"小金持ち"が予想より増えなかったこと、そして高所得家庭の食品購入はお手伝いさんが仕切っているという現実が、「王府井洋華堂」(ヨークベニマル)朝陽公園南門店を窮地に追い込んだ原因ではないか、と私は勝手に推測しています。

オープンしたての頃は、お惣菜も日本や洋風の食材も大変充実していました。北京に住む日本人にとっても魅力的な品揃えだったのですが、お客さんの入りが厳しくなるにつれて、お惣菜はローカル化していき、品揃えも怪しくなってしまいました。コスト削減のためかレジ係が一人か二人になってしまい、一時的に長い行列ができることもあり、サービスの質も低下した感じでした。そうしたことから、ここ数ヶ月は中心ターゲットであるローカルの人たちからだけではなく、北京在住の日本人からも支持を失う状況だったようです。
そして3月27日、ほとんど予告無しにひっそりと「王府井洋華堂」(ヨークベニマル)朝陽公園南門店は閉店してしまいました.....。

ある意味、英断だったと思います。ここ北京はレストランもスーパーもスナックもカラオケも、儲かりそうに無くなると、スパっと無くなってしまいます。方策を尽くしてもダメだったなら、潔く撤退する、という"引き際"こそ大切だと思います。幸いにも北京のイトーヨーカ堂(「華堂商場」)は元気なようですし、「王府井洋華堂」(ヨークベニマル)も起死回生を図ってもらいたいと願っております。





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Last updated  2006.04.03 18:21:06
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「王府井洋華堂」朝陽公園南門店  
通行人 さん
「王府井洋華堂」朝陽公園南門店が閉店した理由は、パームスプリング側の契約違反です。
当初、立体駐車場を作る約束だったのに、
いつまでも作らないビル側に
王府井洋華堂側が痺れをきらして撤退したのです。
ただ、客が入らないのも撤退した理由の一つでしょうね、それにしても早い決断力が素敵。 (2006.04.29 10:04:04)

Re:「王府井洋華堂」朝陽公園南門店(04/03)  
通行人さん、コメントありがとうございます。
立体駐車場の未整備などパームスプリング側の問題も大きかったのでしょうね。
ご指摘の通り、早い決断はご立派だと思います。

(2006.05.09 01:12:29)

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