地球人スピリット・ジャーナル1.0

地球人スピリット・ジャーナル1.0

2009.01.05
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カテゴリ: agarta-david


「『夢見』の密室」 マヤ終末予言
小森健太朗 1999/04 祥伝社 新書 327p

Vol.2 No.501 ★★★★☆

 Oshoは 「私が愛した本」 の中で、かなりの数の 小説 にも触れている。当ブログは、小説嫌いを公言しているので、このジャンルは一番後回しになるだろうな、と思っていた。だ が、よ~くこのリストを見てみると、30数冊が挙げられてはいるが、ひとりの作家でも複数の作品が挙げられており、一番多いのは、 カリール・ジブラン の9冊だ。ここから攻めていけば、このジャンルを踏破するのは、必ずしも困難ではなさそうである。

 カリール・ジブランと言えば、思い出すのは、この作家の「漂泊者」を翻訳している小森健太朗だ。彼にはウスペンスキーとグルジェフの絡みを小説化した 「Gの残影」 があるが、ミハイル・ナイーミの「ミルダッドの書」の訳出もある。ここからは個人的な見方だが、小森健太朗は、Oshoの「私が愛した本」の影響をかなり受けている、と考えることもできる。

 そう考えてみれば、かなりの数の著書や訳書を持っている小森の本もひととおり読んでみる価値はありそうなので、「Gの残影」の隣にあったこの本を読んでみることにした。

 この手の本を何というのだろうか。古代文明ミステリーファイル、というシリーズの中の一冊のようだから、いわゆる「ミステリー小説」というジャンルに振り分けられる本のようだ。このジャンルは、むしろうちの奥さんが大好きなジャンルで、私は大の苦手。同じ部屋で、二人して読書にふけっていながら、互いが読んでいる本のジャンルはかなり違う。

 ミステリーのどこが面白いのか、奥さんに聞いてみると、「次は何が起こるのかしら、とワクワクする。自分の知らない世界がどんどん展開するのが楽しいのよ」ということなのだが、私には、ストーリーを追っかけていくのが、ちょっとまどろっこしいと感じられることが多い。彼女にとっては「頭がいたくなるので、まず読む気にはなれない」という哲学や心理学のジャンルのほうが、私には向いているようだ。

 だいたいにおいて、この本では、「自分が知らない世界」が展開されているのだろうか。ストーリーや他の団体、他の文化圏ということでは、もちろん「知らないこと」がたくさん登場しては来るのだが、すでに知っている、あるいはすでに体験して、自らすでに処理済みである部分について、再構成されている部分が多い。はっきり言って、冷やかされたり、戯画化されている部分があるので、読み手としては、すこし醒めてしまうところがある。

「トランスパーソナル心理学派のセラピーは、法律で禁止されるまでは、日本国内でもLSDを使った心理療法を実施していましたが、それが非合法になってからは、呼吸法を用いて、脳内物質の活性化をはかるという技法が使われているようです。
 薬物か呼吸法かは知りませんが、どうやら見た感じ、トランスパーソナル派に近い技法が、この団体でも用いられているようですね」
p137

古代マヤ文明 に影響されたとする小さな団体を、カルトと決めつける脱カルト精神科医のセリフだが、このように単純化された図式を描けば、実態をなにも知らない読者の興味を惹くことは可能であろう。だが、多少は関連のことを知ってしまっている読者には、「これから何がおこるのかしら」とワクワクするよりも、ああ、できれば、あまり歪曲した描き方をしないでね~、とドキドキしてくることになるのではないだろうか。

 ここでは スタニフラフ・グロフ をモチーフにしてストーリーを展開しているのだろうが、ひとことでトランスパーソナル心理学派と言ってしまうと、素直な読者には、戯画化された虚像が刷り込まれてしまうので、私には、やっぱり小説はちょっと怖いなぁ、と思ってしまう。別な意味での恐怖「ミステリー」だ。

 この本ではヤキ・インディアンの「ドン・ファン」シリーズのストーリー展開もモチーフに使われている。Oshoは「私が愛した本」の中で次のように述べている。

 それは、アメリカ人カルロス・カスタネダが創作した仮空の人物である「ドン・ファン」のようなフィクションではない。この男は人類に対する大いなる害をなした。人は霊的虚構(スピリチュアル・フィクション)を書くべきではない。その理由は単純で、人々が霊性(スピリチュアリティ)とは虚構にほかならないと考え始めるからだ。「注目すべき人々との出会い」は、真実の書だ。 Osho 「私が愛した本」 p173 

 グルジェフ+ウスペンスキーに関心が強く「Gの残影」という小説までものしている現代日本の気鋭の作家であるがゆえに、この点は、要チェックと考えている。「霊的虚構(スピリチュアル・フィクション)」と「真実の書」との線引きは、奈辺にあるべきか、きわめて重要なテーマである。

 当ブログの中では、カルロス・カスタネダの「ドン・ファン」シリーズに触れた本が数多く登場したため、私もそのうちこのシリーズを再読しようと思って枕元に積み上げているのだが、どうもまだその気になれないようだ。読むとしても、あいかわらずこのシリーズは批判的にしか読むことができない。

 「ウィットゲンシュタインの『論理哲学論考』では『使用されない記号は意義を欠く』というのがオッカムの剃刀の真意とされていますが、元のオッカムの剃刀の格言では『存在は必要なしに増加されてはならない』となっています。ある事態を説明するときに、説明に使う事項は必要最小限のものを選ばなければならない、という論理学上の格言と理解すればいいでしょう。この格言 は、不必要な存在を切り落とすという意味で、不必要な髭を剃る剃刀にたとえられたために、『オッカムの剃刀』という異名をもつようになったそうです。
 もし前世の記憶が私にあれば、私は当然、前世の存在を信じます。
 ですが、私には前世の記憶なるものがは存在しません。
 この事態を説明するのに、輪廻転生を信じる一派は、私にも前世が存在する、しかし、今世では私はその記憶を忘却している、と説明します。しかし、輪廻転生を認めない人たちは、単に前世や転生はないのだと言います。後者の説明の方が、オッカムの格言に照らせば正しいのです。なぜなら、私には前世の記憶がないという事態をより簡単に説明していますから。転生派の人々は、私の前世が存在した上でそれを忘却するという、二重の事項を持ちこまないと、。私の中に前世の記憶がないことを説明できません。この立場は、必要なしに存在を増加させるという、オッカムの禁を犯しています。
 ただ、これはむろん、客観的な正しさとか真理を保証するものではありません。あくまで事態を説明するときの簡便さを追究するというだけのことです」

 ちなみに私個人は「前世ある派」である。たくさんの著書や訳書のある小森のことゆえ、小説の中の一登場人物のセリフを持ってその真偽を云々すること自体、徒労なことであるが、むしろあちこちの文献を提供している、というくらいに受け止めていればいいのだろうか。だが、だとするなら、小説とはなにか、というごくごく初歩的な個人的な疑問に押し戻されてしまうことになる。

事件からほぼ、10年がたった今、なぜ、この記録の公表を踏み切ることにしたか。一つには、この事件に重大なかかわりをもつ当事者の一人が最近物故したため、この記録を公表することによる差し障りがほとんどなくなったと考えられるからである。もう一つには、最近一部の週刊誌等に、犯罪事件を起こしている一部の宗教団体と、この記録で扱われた団体とを無根拠に結びつけるような記事が掲載されたためである。そのような誹謗に対して私は、断固たる抗議文を送付したが、私がかつて所属していた団体内で生じたとされる犯罪事件に関して、できる限り公平な視点で、ことの経緯を明らかにする必要を感じたためである。 p319

 この本がミステリー小説である限り、いちいち登場人物たちの言動に振り回される必要はないのだが、エピローグに登場するこのストーリーの語り部とされる人物のこの部分のセリフは、作家・小森健太朗の生の声にやや近いのではないか、と私は察する。

 この本が書き下ろされたのは1999年3月であり、話題の「世紀末」の年に差し掛かっていたとしても、念頭にあったのは1995年のあの忌まわしい 事件 のことだろう。この事件のおり、私もまた、上の登場人物のセリフのなかにあるような抗議活動を経験したことがある。こちらの 「10年前の事件」 については、日本の出版界がようやく重い腰をあげることができるようになるまで、「20年」という年月がかかったが、なんであれ、人生は生きるに値する神秘に満ち満ちている。

 当ブログの隠しテーマ 「来るべき人々」 もまたブルワー・リットンの「小説」であった。小森が最大限に評価する ニーチェ もまた「小説家」である。21世紀の身近な小説家として、今後も期待しながらこの作家の作品に注目していきたい。






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Last updated  2009.07.25 22:33:14
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