男のくせに

男のくせに

March 16, 2006
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カテゴリ: ファッション
「服部」じゃないよ。


服の話です。(久々に、何でもないことを書きますね。)

服狂いが服について話すのです。

服狂いにとって、服は、福なのです。


たぶん、いつもの読者にはツマラナイ内容です。
「内容が分からナイヨウ」と、毛先程も面白くないことを言ってしまうと思います。

でも、服が好きな人、つまり自己陶酔型の気持ち悪い人には向いていると思います。





【今回の食材】バレンシアガ

「今時、バレンシアガなんか誰が着るの?」

と言ったのは、数年前のママン(カミュ風)です。



でも、もし今、ママンがこのセリフを吐いたなら、角材で殴るでしょう。

おそらく、今のモード界で最も筋の通った服を作っている内の一人が、現バレンシアガのクリエイティブ・ディレクターであるニコラ・ゲスキエールだと思うからです。

必要以上に濃い顔の彼が生み出す服は、知性と品格を備え、花の様に無垢で繊細で、静謐な美しさを持っています。
(気持ち悪い表現でごめんなさい。ソムリエをしていた頃の癖です。)
それは、本当に服が好きな人、目が肥えた人、財布がもっと肥えた人なら、きっと欲しがる服です。

時代を作るのがファッションなら、時代に左右されないのもまたファッションです。
彼の作る服は後者ですが、かといって全く前者に位置しないわけでもありません。
というのは、現在のメンズ・モード界は、ロックの恋人で、モードの司祭でもあるエディ・スリマンが君臨していますが、そうした時代を作るデザイナーと同じ所をちゃんと視界に入れていると思うからです。

腐るほどファッションブランドがあり、腐るほどデザイナーがいる中で、大半は大司祭エディの物真似であぶく銭を稼ごうと必死ですが、バレンシアガのそれは決して物真似ではありません。
むしろ、一見するとどこにも共通点は無いように見えます。
生徒会長に薦されるのがバレンシアガで、勉強は出来ないけど女にはモテる不良のヒーローがディオール・オムなのです。


なぜなら二人とも、「現状」に満足するタイプではないからです。
そして二人とも、そんな現状を自分のやり方で変えようとしています。

生徒会長の彼は、もちろんルールに則ったやり方で挑みます。
学校の伝統を踏襲しつつも、古くなって時代に合わない部分はばっさりと斬り捨て、時代に合った形に変えるのです。
つまり、伝統が持つ「品格と知性」は生かしつつも、伝統があるが故に硬直化してしまった部分を取り去り、むしろ柔軟なものに変えようとするのです。

だからこそ、人を魅了する新しいものが出来るのです。

一方、不良少年君は、不良ですからルールを破ることに意味を見出します。
しかし、ただルールから逸脱するのでは暴走になってしまいます。
不良であることの意味は、壊れやすく繊細な少年性を貫く所にあります。
実は非常に賢い不良少年君は、そこのところを分かっています。
だから、少年とロックという同じ壊れやすい存在を前面に押し出して、それが壊れるがままを楽しむことにしたのです。
産んでは破壊し、産んでは破壊しを繰り返すことで、壊れやすい存在のみがもつ大きなインパクトを、常に与えることに成功するのです。
それまでのルールや伝統がどうとか、お洒落とは何かとか、男らしいとは何かとか、全部ぶっ飛ばして、その瞬間格好いいと思われるものだけを求める姿勢で、凝り固まった現状をぶち壊したのです。

二人にとって重要なのは、常に未来であり続ける今をしっかりと認識することです。
決して「今」は安定的なものではなく、「過去」を重ねることで出来上がったものではありません。
必ず次に続いていくもので、出来上がった状態などあり得ないのです。
「過去」の積み重ねから、普遍らしきものを取り出し、それだけを踏襲するという一種の「イイとこ取り」をして、それを下地に「今」のほんの一歩先にある「新しい今」を作り出そうとするのです。


先程、「時代を作るのがファッションなら、時代に左右されないのもまたファッション」といいましたが、これは実は同じことなのです。

なぜなら、どちらかを達成するためには、もう一方も出来てしまう能力が必要だからです。

時代から逸脱したいなら、時代を正確に捉える嗅覚が必要です。
意図的な非常識に最も必要なのは、常識以外の何者でもありません。

時代を踏襲したいなら、時代を疑う観察力が必要です。
時代を作って来たものは、過去において新しかっただけであって、今から見れば同じように古めかしいものなのです。
時代が生んだ伝統を新しかったものの墓場にするか、再び新しいものを上塗りして生まれ変わらせ、未来の新しいものへとつなげていくかは、それをはっきり認識できるかどうかにかかっています。
伝統に酔いしれるのではなく、伝統を批判的に扱える姿勢が必要なのです。


前者の代表ディオール・オムか、後者の代表バレンシアガか。

ここから先は、各人の判断に委ねます。




オススメは、お金を貯めて、どちらも買って、着てみることです。

服においては、「無駄遣い」という概念は存在しません。


全てはモードへの「お布施」であり、また自分の「授業料」だからです。




おしまい



《予告》

【次回以降の食材】 アレキサンダー・マックイーン(←たぶん天才)
             トム・フォード(←たぶんスケベ)
             クリス・ヴァン・アッシュ(←たぶん男前)







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Last updated  March 16, 2006 08:58:03 PM
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