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2006/01/03
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数ヶ月後、アルブレヒトが机に向かい一通の手紙をしたため終えたところへ、館の執事が報告に来た。
「お荷物は全て馬車に詰め終わりました。ご確認を。」
「分かった。今行く。」

彼は封筒に蝋を垂らし指輪で刻印を施すと、暫しそれに視線を落としていた。

アルブレヒトの進退については、あれから随分と物議をかもした。
結局、法学者ピヒトの助け舟もあってレティシアの訴えが認められ、アルブレヒトはかろうじて解任を免れたのである。
無罪放免とはならなかったが、責を負っての謹慎も今日で解ける。
彼は伯爵家の屋敷を出て、完全に王宮に移り住むことにした。
身の回りの主だった物を荷詰めしてしまった彼の部屋は、最早よそよそしい。
「部屋は良いようにお使い下さいと、父上に伝えてくれ。もうこの屋敷で暮らす事もないだろう。」
最後に残された白い封筒を、側に控えていた老臣に託す。
「これをあの人に・・・こんな役目を頼んで、すまない。」
忠実な宿老は、静かにそれを受け取った。
「ご立派なお覚悟でございます。騎士として、一身を賭してお仕えなさいませ。いずれ若様は、ブランシュ家の家名を至上の栄誉へと導かれることでしょう。」
「”立派”などではない。ただ己の弱さ故・・・だがそれでも私は・・・」

レティシアの言葉に応えたい。
己に向けられた信頼と愛情に、背を向けたくはない。
「アルっ!」
部屋の入り口にひょっこりとレティシアの姿が現れて、彼を呼んだ。
「姫様・・・!どうしてここへ?」
「あのね・・・迎えに来たの。」

久しぶりの再会にはにかんでいるのか、レティシアは扉から体半分のぞかせたまま、なかなか近寄れずにいる。
小さな革靴が足踏みしているのを見て、アルブレヒトの顔がほころんだ。
数歩近づいて腰を落とし視線を合わせると、レティシアはようやく駆け寄って彼の首に抱きついた。
「さぁ、参りましょうか。」
主を抱き上げると、アルブレヒトは部屋の外へと踏み出した。


アルブレヒト・・・
       あなたは 黒獅子の騎士になる


あの雪原で、レティシアの言葉は啓示となった。
祈りに似た思いで、彼はその言葉を聞いた。
「姫様・・・私はもう一度、お側にお仕えしたい・・・今度こそ、全てをかけて・・・」
あの日、彼は雪の中でレティシアのぬくもりを抱きながら、思い定めていた。
レティシアの他に、大切なものなどあってはならない。
想い人も。
家族も。
忠誠を揺るがす障壁は、あってはならない。
成すべきことは、そのようなものではない。
今度こそ己を捨て、レティシアを守り・・・・
そしていつか、女王の傍らに立つ。
レティシアと共に重責を分かち合い、
レティシアと共にフライハルトの体現者となる。

「姫様・・・私は、決してお側を離れません。」
アルブレヒトの言葉に、レティシアは黙って頷いた。





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Last updated  2006/01/04 10:45:39 PM
コメント(6) | コメントを書く


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Re:天空の黒 大地の白(3-7.5)間章ー誓約(5)(01/03)  
なまけいぬ  さん
アルブレヒト、苦渋の決断ですね。
いや、彼にとっては苦渋ではないのでしょうか。

>レティシアの他に、大切なものなどあってはならない。
>想い人も。
>家族も。

ここの部分がすごく切なかったです。
己の忠誠心のために全てを投げ打つアルブレヒトは、すごく魅力的ですね(>_<) (2006/01/05 04:30:30 PM)

Re:天空の黒 大地の白(3-7.5)間章ー誓約(5)(01/03)  
蘭世にょ~  さん
かっこいい・・・(よだれ)

私にもこんな騎士がいてくれたらいいなぁなどと、安易な感想を持ってしまいましたが、この決断は彼の潔さの象徴のように思います。
レティシアのそばに悠然と控えるアルはここから始まったんだなぁと思うと感激しました。 (2006/01/05 09:05:09 PM)

Re:天空の黒 大地の白(3-7.5)間章ー誓約(5)(01/03)  
なんも書く気になれないっす。
アルの気持ち・・・どうコメントすればいいやらーー;
やっぱ切ないなぁ。 (2006/01/05 10:05:26 PM)

Re[1]:天空の黒 大地の白(3-7.5)間章ー誓約(5)(01/03)  
black_obelisk  さん
なまけいぬさん
お察しの通りです。
アルにとっては、自分の信念に従った結果で。
ただ婚約者のお嬢さんを傷つけた事だけは、自責の思いとなって残っているのではと思います。
>>レティシアの他に、大切なものなどあってはならない。
>>想い人も。
>>家族も。
>ここの部分がすごく切なかったです。
そこは絶対書こうと思っていた部分なので、コメントを頂けて嬉しいです。
(ちなみに家族というのは父母や兄弟ではなく、妻子の方をイメージしてもらえればと。悩んだ結果、そうは書きませんでしたケド。)


(2006/01/05 11:02:08 PM)

Re[1]:天空の黒 大地の白(3-7.5)間章ー誓約(5)(01/03)  
black_obelisk  さん
蘭世にょ~さん
いやーん、こんな騎士が側に欲しいですね!!ふふふ。←不気味

>この決断は彼の潔さの象徴のように思います。
こういう結論に行き着くのが彼らしいですよね。
歴代の黒獅子の騎士が、ここまで自己犠牲を払っていたとは思いません・・・
その分、アルとレティシアの結びつきは深く純粋で。
彼は自分が忠誠を尽くす限り、レティシアとの信頼も揺るぎないことを確信しています。
ランゼさんの仰る通り、今回の決断あってこそ、だと思います。

(2006/01/06 12:15:22 AM)

Re[1]:天空の黒 大地の白(3-7.5)間章ー誓約(5)(01/03)  
black_obelisk  さん
凪坊ヤ★クゥ。さん
>アルの気持ち・・・どうコメントすればいいやらーー;
>やっぱ切ないなぁ。
アルのこと思いやって下さって、有り難うございます。
彼にとっては、己の生きる道を見つけたという思いの方が苦しみより強いのかも。
レティシアの怪我は自分の罪と思っていますから、もう一度仕える事ができる=彼にとっての許しなんです。
選択肢としては、このまま騎士を辞めて人並みの生活をするってのもあるわけですが・・・
こうとしか生きられない道を、彼は選んだと思います。

(2006/01/06 12:47:12 AM)

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