世界で一番愛する人と国際結婚

プロポーズまであと一歩




ブランは、帰国後も頻繁に連絡をくれた。休暇が取れるのなら
どうしてもアメリカに来て欲しいと何度も言ってきた。

つい最近まで、ブランに会いにまたアメリカに行くことなど、
もう絶対にあり得ないと思っていたのに。


一体私に何がおきたのか。


会社で夏休みの予定を提出するよう、お知らせメールが周るや否や、
7月の初め、私は部内で一番早い夏休みを取った。




LAXの空港に私を迎えに来たブランは、バラの花束を持って立っていた。
信じられないかもしれないが、ブランからお花をもらったのは
この時が初めてだった。私は嬉しくてブランに飛びついてしまった。


プリティウーマンの舞台になったホテル、ビバリー・ウィルシャーの
部屋から、彼はシャンパンと苺をオーダーし、私を驚喜させた。


翌日、ラグナビーチまでドライブし、
さらに翌日はサンディエゴまでドライブした。


ブランとのひとときは本当に楽しくて、いつもあっという間に時間が
たってしまう。


だがこのままでは、また何も変わらないまま帰国日を向かえてしまいそうだ。
つい数ヶ月前は、もう結婚にこだわらないと考えていたくせに、
私は内心腹をたてていた。


『この人ったら、今現在のことしか考えていないのかしら。
私はわざわざ、アメリカに会いに来てあげたのよ。
さっさと将来の話を切り出しなさいよ。』


そういう気持ちはおくびにも見せず、ブランに優しく言ってみた。

観音様のような微笑をたずさえながら。



「あなたと一緒にいると本当に楽しい。
あっという間に時間がたっちゃうね。もっともっと一緒にいたい。
離れているのは寂しい。」


「そうだね、離れているのは寂しいね。」


「私はあなたと一緒に住めれば、もう結婚という形にはこだわら
なくていいの。私はただ一緒にいられれば、それでいいの。」



『結婚しよう』、とは自分から言えなかったが、『一緒に住もう』
なら言えた。



実は、内心、そこで一気にプロポーズなるか、と賭けにでたような気がする。


「僕もだよ。ここで一緒に住まないか。」


ブランがニコニコして言ってきた。


「本当?嬉しい。」



プロポーズではないことを不満には思ったものの、私は一緒に住む
ことを承諾した。日本人の私が、そんな簡単にはアメリカで
一緒に住めないではないか。そうなっては結婚は時間の問題だし、
以前のブランを思うと、同棲を考えるだけでももの凄い進歩だ。


では、いつから、どういう方法で住むか、、、、


私達は具体的な話をし始めた。私は手っ取り早く、学生VISAで
渡米でも構わないと思っていた。


私達が出した案は、私が年末を目処に会社を辞めること。
その間に学生VISAを取ること。1月から一緒に住むことを決め、
私は帰国した。


ところが数日後、


「結婚をしない形で、君に全てを捨てさせて一人でアメリカに来させるのは、
いかにフェアじゃないかと思う。」


とブランが言い出したのだ。


同棲の話は立ち消えになったものの、今度はブランが婚約者VISAを
取ると言い出した。いつの間にか、VISAのことを色々調べたらしい。


しかし、この人プロポーズもしないで婚約者VISAを取るつもりかしら。


だが、一時はもうあり得ないと思ったブランと結婚が
できるのなら、プロポーズはもう諦めてもいいと思った。


明らかに彼からは、結婚に対しての前向きさが感じられていた。


その3ヶ月後はハワイで待ち合わせ、また楽しい時を過ごした。

ブランは、『将来、僕達の子供が欲しいね』と言った。

子供には何の関心もなかった彼が、またしてもものすごい進歩だ。


だが、婚約者VISAの準備を進めながら、将来一緒に住むということと、
彼のほうからは、私から決して離れていかないだろうという安心感と
共に、きちんとしたプロポーズをされない一抹の寂しさはあった。


ハワイを発つ直前、私はブランに(プロポーズがないことに対して)
すねてみた。


つづく


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