音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2016年09月05日
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テーマ: Jazz(1978)
カテゴリ: ジャズ

60年代末、ヨーロッパでの“一期一会”


 スライド・ハンプトン(Slide Hampton,本名ロクスレイ・ウェリントン・ハンプトン)は、1932年ペンシルヴァニア生まれのトロンボーン奏者。音楽一家に育ち、幼い頃に家族とともにインディアナに移住した。そこで1950年代には、ライオネル・ハンプトン、バディ・ジョンソン、メイナード・ファーガソンのバンドで演奏した。その後、1960年代にはブッカー・リトルやフレディ・ハバートらとオクテットを形成したほか、多くの有名ジャズ奏者と共演している。

 そんな彼は、1968年にウディ・ハーマンのバンドの一員として渡欧したが、そのままヨーロッパに10年ほど住み着くことになった。当時のアメリカにはもうジャズを真っ当に演奏できる場がない、という限界を感じてのヨーロッパ移住だったと言われる。その翌年初頭に録音されたのが本盤『ザ・ファビュラス・スライド・ハンプトン・カルテット(The Fabulous Slide Hampton Quartet)』ということになる。

 スライド・ハンプトン自身の技巧も凄いのだが、何より4人の演奏者の顔ぶれが凄い。当時ロンドンにいたフィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)がパリに来て参加している。残る2人はヨーロッパ出身者である。ヨアヒム・キューンは東ドイツ出身で西ドイツに亡命したピアノ奏者、ニールス・ペデルセンはデンマーク出身のベース奏者で、それぞれ当時25歳と23歳と若い(録音時の年齢は、フィリー・ジョーが46歳、スライド・ハンプトンが37歳)。この4人の不思議な取り合わせが生んだのは、何とも強烈な音の塊と激しさに溢れた演奏であった。

 冒頭の1.「イン・ケース・オブ・エマージェンシー」は、曲名(“非常事態”)そのままに突っ走るタイプの演奏で、スピード感のあるトロンボーンも凄いのだけれど、それを支えるリズムセクション(特にベースがいい)の精度の高さが目立つ。以降も勢いと迫力に飛んだ演奏が続くが、若干落ち着いた雰囲気を垣間見せるのが4.「ラメント」で、このナンバーのみスライド・ハンプトンの自作ではなく、J・J・ジョンソン曲。5.「インポッシブル・ワルツ」も曲名(“あり得ないワルツ”)そのままに、激しい演奏(特にヨアキム・キューンのピアノが絶好調)を繰り広げている。ハイテンションで激しい演奏が展開される中で、個々の演奏がばらばらにならず統一感が保たれたのは見事。その理由は何だったのかを考えてみると、最後はスライド・ハンプトンの冷静さ(それは本盤の随所で演奏に現れている)にあったんじゃないかと思う。


[収録曲]

1. In Case Of Emergency
2. Last Minute Blues
3. Chop Suey

5. Impossible Waltz


[パーソネル、録音]

Slide Hampton (tb)
Joachim Kuhn (p)
Neils Henning Orsted Pedersen (b)
Philly Joe Jones (ds)
1969年1月6日録音。




 ​
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Last updated  2016年09月05日 04時25分35秒
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Re:スライド・ハンプトン 『ザ・ファビュラス・スライド・ハンプトン・カルテット(The Fabulous Slide Hampton Quartet)』(09/05)  
suggie  さん
このアルバムは知りませんでした。
好みのメンツが揃っていていいですね。

ただ小生難聴になり片耳が聞こえず昔のように楽しめなくなったのが残念です。
(2016年09月06日 15時30分36秒)

Re[1]:スライド・ハンプトン 『ザ・ファビュラス・スライド・ハンプトン・カルテット(The Fabulous Slide Hampton Quartet)』(09/05)  
andale  さん
suggieさん
コメントくださりありがとうございます。
トロンボーンをいろいろ探索していて聴いたアルバムなのですが、メンツがとてもヒットした感じでした。
いろいろと大変でしょうが、機会があれば少しはお試しください。 (2016年09月06日 19時04分01秒)

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