BLUE ODYSSEY

BLUE ODYSSEY

棺おけの携帯電話


棺おけの携帯電話 [前編]



 健二のお祖父さんは模型を作るのが大好きだった。プラモデルから帆船模型まで何でも作った。
健二はこのお祖父さんの孫だった。健二、6歳。

健二もお祖父さんといっしょにプラモデルを作るのが大好きだった。
お祖父さんが新しい模型を買うと、いつも健二の携帯へ呼び出しの電話がかかって来た。

「健二、今日も良い物を買って来たぞ。”戦艦大和”の模型だぞ。いっしょに作らんかね?」

「わーーーーーい!」




翌日、健二はお祖父さんの家に行った。
そこで、いっしょにプラモを造る。
だが、健二は模型工作は下手で、作りながらよくプラモの部品を壊していた。
ある時などは、お祖父さんと二人でやっと作り上げた帆船の模型を、床に落として壊してしまった。

しかし、お祖父さんは一度も健二を叱った事が無かった。
健二はこんなお祖父さんが大好きだった。





 健二の通っている小学校が夏休みに入ったある日。
健二はまたお祖父さんの家に遊びに行った。
そしていつもの通りプラモデルを作り、その後、お祖父さんの家で夕食をごちそうになった。

夜の7時半からは、楽しみにしていたテレビ番組が始まるので、まだお祖父さんの家に居座っていた。今日はここでテレビを見るつもりだ。

窓ガラスに映る外の景色が真っ暗になり、網戸の向こうに蚊の姿がチラホラし始めた頃、健二は『夏の怪奇特集』という番組を観ようとテレビを点けた。

「お祖父さん、もうすぐ始まるよ。」

「健二はこういうの好きだねぇーーーーー。怖くないの?」

「怖いけど、好きなんだよ。」

「ははははは…!」

そして、番組が始まった。








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『夏の怪奇特集・実際にあった怖い話』



 やさしいお祖母さんと2人で暮らしている少女”真紀”がいた。
お祖母さんといると毎日が楽しかった。

しかし、ある日突然お祖母さんが心臓発作で亡くなった。
少女は途方に暮れた。
これまで温かく感じられていた家の中は、シンとして寒気さえ感じられるようになった。

遺族の親戚がもめたので、少女は今だに引き取り手も見つからず、家の中で毎日1人切りで泣いていた。

すると……、

真紀の携帯電話が鳴った。
着信記録を見ると『遠山しず子』と表示されていた。
これはお祖母さんの名前だ。これはその携帯電話からかかって来ていた。

お祖母さんは日本では珍しく土葬されていた。それはお祖母さんの遺言によるものだった。アメリカみたいに、遺体は焼かずにそのまま土の中に埋葬された。
真紀は、お棺にお祖母さんが寂しがると思って携帯電話も入れておいた。
もちろんそれは生前お祖母さんが使っていた電話機だった。

そのお祖母さんから真紀の携帯にかかって着たのだ。
でも、お祖母さんは確かに亡くなった筈…………。

真紀は恐ろしくなった。
そして電話を取らなかった。

「もしかすると、誰かがイタズラしてかけて来たのかな?
でもそんなタチの悪いイタズラなんて一体誰がするのだろう?」

真紀には心当たりが全然無い。

次の日になっても真紀の携帯には電話がかかって来た。またお祖母さんの番号で。

次の日も、その次の日もかかって来た。








真紀は怖くなって、警察署に行って相談した。
そこのカウンターの向こう側にいた警察官は

「それはイタズラ電話でしょう。心配入りません」と言って返して来た。

そこで真紀が「それでもなんとかして欲しい」と詰め寄ると、
ちょうどそこへ、

プルルルル……。プルルルル……。

と、また『遠山しず子』なる人物から電話がかかって来た。
そこで、警察官は真紀から携帯電話を借り受け、電話に出てみた。

「ツーーーーー、ツーーーーーー。」

警察官が一言も喋らない内に電話は切れた。

「やはりイタズラ電話ですよ。心配いりません」

そう言って、携帯を真紀に返し、警察官は忙しそうに元の仕事に戻った。
仕方なく真紀は諦めて家に帰った。








 深夜、家の中で1人でいると、また携帯に電話がかかって来た。

プルルルル……。プルルルル……。

真紀は怖くなって、電話に出ない。

プルルルル……。プルルルル……。

それでも、電話は鳴り続ける。

プルルルル……。プルルルル……。プルルルル……。プルルルル……。

真紀はいよいよ恐ろしくなってきた。
しかし、確か昼間、警官が出た時は電話はすぐに切れた筈……。

プルルルル……。プルルルル……。プルルルル……。プルルルル……。プルルルル……。プルルルル……。

そこで、真紀は勇気を振り絞って電話に出てみる事にした。

よく考えて見ると、たかが電話。それに出たからと言って何も取って食われる事はない。

プチッ!

意を決して、通話ボタンを押した。

「はぁーーー、はぁーーー。」

電話の向こうで、誰かがかすかに息をしている音がする。それは聞き覚えのある呼吸音だった。

「はぁーーー、はぁーーー。」

そう!いつも真紀のお祖母さんは電話に出る時、なぜかよく呼吸音を響かせていた。

そこで真紀は思わず「お祖母さん?お祖母さんなの?」と電話に向かって叫んだ。

すると……………、

電話の向こうから甲高い怒鳴り声がした。

それは激しい怒りの声だった。





















「お前、なぜ電話に出なかったんだい?!」





















「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」












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棺おけの携帯電話 [後編]


「ふーーーーーーーーーーーー!」

健二は番組の最後の部分を観て、怖くなって思わず両手を握り締めた。
手の平にはたくさんの汗が滲んでいた。

「はははは!健二は本当に怖がりなんだね!」

そう言ってお祖父さんは笑った。

「今日のはかなり怖かったよーーー」

「これは作り話だよ。人を怖がらせるように、面白おかしく作ってあるんだ。」

「でも、番組タイトルは『本当にあった怖い話』ってなってるよ。これは本当にあった話なんだよ!」

「あははは!無い無い!お祖父さんはこの歳まで生きて来たが、お化けなんていっぺんも会わなかったぞ。」

それを聞いて、健二は少し安心した。

「そうかあ、これは作り話かあ~~~~。」

「さあさあ、今日はもう遅いからお帰り。家まで送って行くから。
今度来る時は、また凄いプラモデルを買っておくよ。」

「本当?なに?何のプラモなの?」

「それは”な・い・しょ”。注文してあるので、3日後には模型店の方に届くんだ。
それから取りに行って来る。
楽しみにしておいで。またいっしょに作ろう!」

「ホント?!約束だよ!」







 3日後の事だった。
健二が大好きだったお祖父さんは、心臓麻痺で突然この世を去った。
本当に一寸先は闇と言うか……。



「お祖父さーーーーーーーーーーん」



健二は泣いた。





お祖父さんの部屋から遺書が見つかり、
「自分の畑に土葬して埋めてくれ。土に還りたい。」とあった。
そこでその遺言通り、遺族達の手によってお祖父さんは自分の畑に埋められる事になった。
健二はお祖父さんが寂しがるといけないので、お祖父さんの携帯電話をそのお棺の中に入れておいた。

そして両手を合わせた。





 お葬式が全て済んで、元の生活に戻った健二。

健二は両親と自分の家のリビングにいた。
夕方頃……、いつもなら、ちょうどお祖父さんから健二へお誘いの電話がかかって来ていた時刻。
しかし、今日は電話は鳴らない。

「やっぱり、テレビの”怪奇現象”の番組のようにはならないな……………。」

健二は寂しいので、電話がかかって着て欲しいと切に願った。
その時、

プルルルル……。プルルルル……。

健二の携帯が鳴った。

ハッとして着信記録を見ると………、名前は『須山辰三』、健二のお祖父さんからとなっていた。

「(おっ、お祖父さんからだ!!!)」

プルルルル……。プルルルル……。

その着信音を聞いた健二の父が

「健二、電話が鳴ってるぞ!出ないのか?」と言った。

「うん。いいいんだ……。」

健二は恐ろしくなって、携帯を持ったまま自分の部屋に戻った。

プルルルル……。プルルルル……。

携帯はしばらく鳴り続けたが……、その後電話は切れた。

「ふーーーーーーーー。」






 しかし、次の日になって、またもや電話は鳴り出した。今度も”お祖父さん”からである。

プルルルル……。プルルルル……。プルルルル……。プルルルル……。プルルルル……。プルルルル……。

長い間、呼び出し音が鳴り続いて………やっと切れた。






次の日、健二の父が健二に言った。

「おい、健二。電話の呼び出し音がプープー鳴ってうるさいんだよ。
誰からかかって来てるんだ?それになんで電話に出ないんだよ?」

「……………………。」

健二には答えられなかった。
まさか「お祖父さんから」とは言えなかった。言っても信じてもらえないし……。
それにどうせ「それはテレビの観すぎだ!」とか言って馬鹿にされて、今後テレビを観せてもらえる時間が少なくなってしまうと思えた…。

それで健二は言い訳もせずに、走って自分の部屋に戻った。

プルルルル……。プルルルル……。

その時、また電話が鳴り出した。

「どうしよう?出ようか?でも、あのテレビ番組のストーリーじゃ…………。」

プルルルル……。プルルルル……。プルルルル……。プルルルル……。

リビングのお父さんが大声で怒鳴った。

「おおい!健二!また鳴ってるぞ!いい加減にしないと電話の契約止めちゃうぞ!」

契約を止められると、電話で友達と楽しい話が出来なくなる。
健二は意を決して電話に出ることにした。

ゴクッ……。

「本当にお祖父さんが出るのだろうか?」


プチッ!


通話ボタンを押した。

















すると……、

















それはやはり、健二のお祖父さんからだった。

















「あーーーーーー、健二かい。ひさしぶり!お祖父さんだよ!
悪いんだけど、注文しておいたプラモデルを模型店まで取りに行ってくれないかな?
それは健二にあげるよ。
それじゃ、またね」

















電話の向こうの声は、いつもとまったく同じでとても陽気な感じだった。













THE END









死んで幽霊になっても、その人の人格は変わらないと思いますw


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