BLUE ODYSSEY

BLUE ODYSSEY

攻撃する理由 


攻撃する理由 [act.1]


================================


マッド国のジ・エンド少佐

ブルー国のニャア少佐


================================





 ある日マッド国は、突如ブルー国に攻撃をしかけた。理由は不明。
突然の攻撃にブルー国は急遽”ニャア”少佐を指揮官として任命、これに応戦した。
ブルー国はその強大な軍事力でマッド国の攻撃を跳ね返した。

ブルー国は決して他国に戦争をしかけたりしないが……、防御のための軍事力は常に持っていた。自国の安全のためである。
世はサバイバル時代。汚い行為も受けた事があったからだ。
自国の守りにはどうしても軍隊が必要という有様だった。
なぜなら、マッド国のように唐突に攻撃を仕掛けてくる国も存在していたからだ。



マッド国はブルー国の鉄壁の守りに遭い、反撃を受けて後退した。
今やマッド国はその攻撃力を失いつつあった……。






 この結果をにがにがしく思っていたマッド国のジ・エンド少佐。
彼が今回この事件を起こした張本人だった。
しかし、いったい何の為に戦争を仕掛けたのか不明だった。一般大衆にとってもそれは大きな謎だった。その理由はまだ彼自身しか知らない。

ジ・エンド少佐の人格に少々おかしな点がある事は、実は以前から一般大衆は気付いていた。
それというのも彼は実生活では女性好きだったが、なぜか女性には縁が無かった。
彼が女性にアプローチしても、全てかわされて終わっていた。
それが彼の人間形成に大きく作用し、性格を著しく歪めていた……。

彼がテレビの女性・アイドルや映画女優等に異常なまでの恋心を抱く事は知られていた。
本物の女性でははく、バーチャルな女性の方に深く思い入れた。
一般大衆は時おり彼を哀れに思う事があった。
なぜならジ・エンド少佐はそれが少しもおかしな事だとは気付いていなかったからだ。






 今回のマッド国とブルー国の戦闘は、マッド国の敗退という形で幕を閉じた。
ようするに
「マッド国は勝手にブルー国の所にやって来て戦争をしかけ、都合が悪くなると勝手に逃げて行った」
という形であった。

そこでブルー国は国連に戦争裁判を行う事を求めた。
裁判によって事の是非を問うというのである。
この頃の国連は、以前と違って絶対的な司法の権利を有していた。
その為、ここで裁き、犯罪を犯した者や国家には刑を科す事が出来るようになっていた。



国連から直々にマッド国のジ・エンド少佐に呼び出しが入った。
少佐はこれに従わないわけにはいかなかった。

ニャア少佐も出廷し、さらに傍聴席には多数の一般大衆や記者が詰め掛けた。




そして裁判が始まった。










□□ 裁判 □□



 マッド国のジ・エンド少佐はこの戦闘を始め、指揮もした張本人だった。
だが彼は「ブルー国のニャア少佐も同罪だ!」と言って譲らなかった。




ジ・エンド少佐「ブルー国の我々マッド国に対する攻撃は残虐非道でありました!
彼らは明らかに戦闘行為を好んでおります。
ブルー国はマッド国の軍港を攻撃しました。その時の攻撃による破壊で、我が国の死傷者は1000名を越えました!!!」

ニャア少佐「マッド国のジ・エンド少佐率いる軍は、先にブルー国軍港を攻撃した!
これはその報復だった!」



ジ・エンド少佐「いえいえ、我々の方こそブルー国からの攻撃に”報復”したまでです!
ブルー国はマッド国の都市を先に攻撃していました。そのお返しだったのです!
その時の我々の死傷者は10000名を越えました!!!」

ニャア少佐「それもマッド国からの攻撃の報復だ!
マッド軍はブルー国の都市を先に攻撃した!」






 どうもジ・エンド少佐に喋らせているとラチが開かない。
そこでニャア少佐は国連に対してあらためてこう述べた。

「もともとはマッド国がブルー国を攻撃してきたのです。」

するとジ・エンド少佐も同じように「もともとはブルー国がマッド国を攻撃してきたのです。」と返した。

また同じ事の繰り返し。
そこでニャア少佐は、国連代表の一人で今回の裁判長を勤めるシュピルマン議長にこう進言した。

「マッド国のジ・エンド少佐の発言には虚偽が多いと思われます。
攻撃日時はきちんと年表にして書き示すべきです。」

するとマッド国のジ・エンド少佐もこう述べた。

「賛成ですな!
それにより、一般大衆にはどちらの言っている事が正しいかはっきりわかります!!
我々はこの場でもきっちり戦いますよ。ブルー国とはね」







攻撃する理由 [act.2]


□□ そもそも…… □□




シュピルマン議長「では皆さん、この講堂の前方の大型スクリーンを見てください。
ここに年号と共に、両国が行った攻撃、つまり戦闘行為が順次表示されていきます。
双方とも嘘は言わないように。
特にマッド国のジ・エンド少佐!いいですね」

それを聞いて傍聴席の大衆はくすくすと笑った。
ジ・エンド少佐は憤慨した。

ジ・エンド少佐「しっ、失礼な!心外だ!」  



シュピルマン議長「なお、この裁判は一般公開されています。全世界にテレビ中継されているのです。
そのおつもりで……」

ジ・エンド少佐「もちろんだ!
それによって、ブルー国の非道さが全世界に伝わるというものだ!!」

シュピルマン議長「……では再び討議を開始します。」









ジ・エンド少佐「ではまず、私から述べさせてください。
ブルー国はマッド国の軍港を攻撃。
死傷者は1000名を越えた!!!
それは”2110年9月”だった!」

つづいてニャア少佐が発言。

ニャア少佐「マッド国のジ・エンド少佐率いる軍は、ブルー国軍港に対して攻撃した!
それは”2110年8月”!」

シュピルマン議長「では先にマッド国がしかけたのですね…。」

シュピルマン議長はジ・エンド少佐をにらみ念を押した。




ジ・エンド少佐「む~~~~~~~。
いや!実はその攻撃も、それ以前にブルー国から受けた攻撃の”報復”に過ぎない!
それよりも前にブルー国はマッド国の都市を攻撃していた。その時の死傷者は10000名を越えた!!!
それは”2110年7月”だった!!!」

ニャア少佐「マッド国のジ・エンド少佐率いる軍はブルー国の都市に対して攻撃した!!!!
それは”2110年6月”!」

シュピルマン議長「やはり……、先にマッド国が攻撃をしていたのですね……。」




ジ・エンド少佐「む~~~~~~~。」

ジ・エンド少佐は苦しそうだった。

ジ・エンド少佐「いいや!
その攻撃も、もっと以前にブルー国から受けた攻撃の”報復”に過ぎない!
ええと、その前の攻撃は、ええと~~~~。

あーーーーーーーーー、そうだ!!

ブルー国はマッド国の工業地帯を攻撃した。その時の死傷者は10000名を越えた!!!
それが”先”の攻撃だ」

シュピルマン議長「いいえ、ジ・エンド少佐。それは”2110年10月”に行った攻撃です。
ですからだいぶ”後”ですね」



ジ・エンド少佐「む~~~~~~~。そうだったか?!
ええと、では~~~、

そうだ!

その前にブルー国はマッド国の軍用飛行場を攻撃していた。その時の死傷者は10000名を越えた!!!」

シュピルマン議長「ジ・エンド少佐。
それは”2110年12月”に行った攻撃です。つまりもっと”後”です。
さらに公式の記録によれば……、死傷者はもっと少ない筈です。
”12”名となっていますが?」



ジ・エンド少佐「む~~~~~~~。
しかし、最初に手を出したのはいつもブルー国の方なのだ!!!
それで戦闘が始まった!!」

ニャア少佐「我々は常に”反撃”をしてきただけです!
マッド国のような”侵略行為”はしていない」

ジ・エンド少佐「黙れ!我々の方こそ”聖戦”を行ってきた国なのだ!」


バンバン!


議長は机の上の木槌を打ち鳴らした。





攻撃する理由 [act.3]


シュピルマン議長「ジ・エンド少佐!ではマッド国の攻撃よりも先に行ったというブルー国の攻撃を上げてください。」

ジ・エンド少佐「ええと、それはだな~~~~」

ニャア少佐「”2110年6月”、貴方はブルー国の都市に対して攻撃した!
それ以前に我々がマッド国に対して行った攻撃はあるか?」

ジ・エンド少佐「う~~~~~~~~~~、ある!!!」

ニャア少佐「無い筈だ!」

ジ・エンド少佐「いいや、ある!!」

ニャア少佐「では、それを述べてもらおうか!」

ジ・エンド少佐「う~~~~~~~~~~~~~~!!
う~~~~~~~~~~~~!!

”2110年5月”、
マッド国民間最大の飛行場であるサンペテルギウスをブルー国は攻撃した!
空港はその攻撃によって、長きに渡り使用不能に……。」

バンバン!!

また裁判長の金槌がなった!

シュピルマン議長「私は貴方の国の貧しい国民の現状を調べる為、
”2110年4月から6月”にかけて、その空港を利用していた。
攻撃など何もなかった!ジ・エンド少佐!偽証してはいかん!!」

ジ・エンド少佐「う~~~~~~~~~~~~~~!!」

シュピルマン議長「では、ジ・エンド少佐。
貴方がたは理由も無くブルー国を攻撃した事を認めるのですね。
マッド国には”侵略行為”があった。ブルー国が行ったのはそれから身を守る為の戦闘であったと。
これにより100パーセントマッド国に非があると……………………。」




ジ・エンド少佐「待ったーーーーーーーーーーーーーーーーーー!違う!違うんだ!」




シュピルマン議長「………では、述べてください。
その前にあったブルー国からの戦闘行為を。」

ジ・エンド少佐「あったさ……………。」

そしてジ・エンド少佐は沈黙した。



ジ・エンド少佐「…………………。」



シュピルマン議長「……………どうしました?答えてください。」

ジ・エンド少佐「ブッ、ブルー国のニャア少佐は……、

俺の…、

俺の……、

心のアイドル”ココアちゃん”を盗りやがったんだああ~~~~~~~~!!!!!!」









シーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!








傍聴席を含め、この番組を見ていた全ての関係者と一般大衆は、水を打ったように静まり返った。







攻撃する理由 [act.4]


□□ 戦争理由 □□



シュピルマン議長「……なっ、何ですか?その”ココアちゃん”というのは?」

ジ・エンド少佐「はぁはぁ……………。」

ニャア少佐「議長!私から説明していいですか?」

シュピルマン議長「どっ、どうぞ、ニャア少佐」

シュピルマン議長「私はブルー国国内では最近テレビインタビューをよく受けます。
そのため支持を表明してくれる方々も出来ました。”ファン”と呼んでもいいと思います。
”ココア”さんもその中のお1人です」

ジ・エンド少佐「……………………。」

シュピルマン議長「それが、いったい、この戦争の話となんの関係があるのです?」

ニャア少佐「さあ?
ココアさんという少女はタレントです。
最近テレビの歌番組やトークショー、あるいはニュース番組にまで幅広く出演されています。
マッド国のジ・エンド少佐がそのココアさんの熱烈なファンだというのは有名な話です。
彼はこれまで何百通というファンレターを書いて彼女に送っていたらしい」









ジ・エンド少佐「
だっ、黙れーーーーーーーーーーーー!!!









貴様!俺を侮辱する気か?裁判長!この者は私を愚弄しました!!!
私の”ぷらいべ~~~~と”に関する事まで、このような場で喋ってもいいのでしょうか?!!」

シュピルマン議長「あっ、許します。
それはどうもこの裁判に関係ある事のようですので。」




ジ・エンド少佐「
裁判長ーーーー!!!




シュピルマン議長「でっ、ココアさんの話しを続けますが………。
今度はジ・エンド少佐にお聞きします。
先ほどの証言で”ココアちゃんを盗った”というのはどういう意味ですか?」

ニャア少佐「裁判長!”盗った”事実などありません!」

ジ・エンド少佐「黙れ!!!!ココアちゃんが貴様にファンレターを送ったのを知ってるぞ!!
そして………、お前はそれに返事をした!」

ニャア少佐「……………………それが?」









ジ・エンド少佐「
それが”ココアちゃんを盗った”という事だああああーーーーーーーーーーーー!!!!









シーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!









ここにいた2人の少佐以外の全員が氷のように固まった。
裁判長もしばし言葉を失い我を忘れた。
ニャア少佐はおもむろにジ・エンド少佐に訪ねた。

ニャア少佐「では聞くが、ファンレターに返事をしたら……、なぜそれが”盗った”事になるのだ?」

ジ・エンド少佐「はあ、はあ……。」

議長は我に返った。

シュピルマン議長「あ?ああ………………。
ジ・エンド少佐!なぜ”盗った”事になるんですか?答えてください」

ジ・エンド少佐「そっ、それは……………、
それは俺がファンレターを毎日セッセと書いて送っていたのに……、
あんまり返事はもらえなかった。
しかし、このニャアのヤロウはファンレターを一通も送りもしないで、
ココアちゃんからファンレターをもらいやがったんだあーーーーーーーーーーーーー!!!」









シーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!









ジ・エンド少佐「
それが”ココアちゃんを盗った”という事じゃああああーーーーーーーーーーーー!!!!










シーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!









シュピルマン議長「で…………、それがこの戦争を始めた理由ですか?ジ・エンド少佐」










ジ・エンド少佐「そっ、そうだあーーーーーーーーーーーーーーー!!
こいつは俺の心のアイドルを奪いやがったんだーーーーー!!!!!











弁護士ならびに、裁判を傍聴している人達から冷たい視線がジ・エンド少佐に浴びせられた。

傍聴席「ざわざわざわ……」



シュピルマン議長「ジ・エンド少佐、
それは貴方の思い込みでしょう。
どうもブルー国のニャア少佐には何の非も無いように見受けられますが…。」

ジ・エンド少佐「そっ、そんなはずは無い!」

シュピルマン議長「で、それがこの戦争を始めた理由だと言うのは本当なのですね?認めますね?」

ジ・エンド少佐「ああ、ニャアの行った行為は、りっぱな戦争理由になるでしょう!!!!」

ジ・エンド少佐は1人で興奮していた。
ニャア少佐はあきれていた。

シュピルマン議長「オホン!そっ、それでは、判決です。

ジ・エンド少佐、貴方は自分の思い込みから戦争を始めた。
この戦争は貴方の一方的な侵略戦争です。
貴方の行為を”戦争犯罪”と認め、”有罪”とします。」





ジ・エンド少佐「おい!なんだって?!
そんなバカな話があるか?!
ニャアは俺の女を奪いやがったんだぞ!!おい!
これは私を侮辱する行為だ!戦闘に値する。
おい、皆、なんだそのつまらなさそうな顔は?!
ココアちゃんだそ、あのココアちゃんをヤツが奪ったんだぞーーーーーー!!!」












THE END








 人間の思い込みを描きました。
一方的に他人をライバル視する人は多いです。
された方は迷惑です。
それをしている本人(つまり戦争を仕掛けているつもりの人)は楽しくてしかたないのでしょうが。
それにその人には「戦う」理由があるのでしょう。
された方には無かったりします。





 あっ、それと、なんで国と国との戦いに少佐クラスが指揮していたかというと、小さな国同士の戦いだったからです。
でも、本当の理由は、別の小説で使ったキャラをそのまま再登場させたかったので。



© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: