BLUE ODYSSEY

BLUE ODYSSEY

第2話 レッドノア act.1~10


スポルティー・ファイブ 第2話 レッドノア [act.1]


西暦2100年。

地球は謎の侵略者から攻撃を受け始めた。
侵略者[レイド]によって…。





















 朝、委員長は登校する為にいつものなじみの道を歩いて行く。
今日はクリスの横を少々いつもと違う歩調で歩いていた。
背の高いクリスに合わせて歩くのは少し苦労がいったが、でもそれは委員長に取っては心地良い変化でもあった。
桜はもう先々月とっくに散ってしまっていたが、別の花が咲き乱れていて道脇の並木はとても綺麗だった。花びらが時おりやわらかい風に舞い、まるで入学時のような雰囲気が再現されていた。

委員長は恥ずかしがってやや下の方を向き、地面が流れる様子ばかり見ていた。だからクリスの顔を少しも見られなかった。
でも委員長はクリスといると温かい安心感を得られていた。

委員長「楽しい…………。」

クリスに聞こえないような小さな声で思わずそうもらしてしまった。
委員長は幸福で胸がいっぱいになった。



目を閉じた……。

すぐ側に制服姿のクリスがいて、目を閉じていてもその姿と存在は感じ取れた…。














しかしそれは…………、














……………夢だった。














委員長が目を開けるといつもと同じ天上が見えた。

委員長「ああ、がっかり……。」

しばらく気落ちは続き…、やっとベッドから抜け出たのはその後15分も経ってからだった。







今日もまた同じ一日が始まる。
でもクリスがこの学校に来る前と今とでは明らかに彼女の心境は違っていた。
なぜか毎日期待に胸を膨らませるようになっていた。
それに委員長は最近楽しい夢ばかり見ていた。悲しい夢は見なくなっていた。














 突然人類を襲った[レイド]から地球を防衛する為に生まれた組織[ノアボックス]。
その基地の責任者郷田指令の自室では矢樹博士を招いていつものような話が展開されていた。
その話は外部に漏れる事が無いように注意すべき内容の物だった。

郷田指令「君が調査してくれるのではなかったのか?この世界の正体を。
我々は待っているのだ、結論をな。」

矢樹 「常に調査してるさ。
最近はスポルティー・ファイブをもってしてそれをしている。」

郷田指令「”スポルティー・ファイブをもってして”??調査をか?」

矢樹 「そうだ。あのマシンで[レイド]と戦う事こそがもっと有効な”調査”なのだ。
[空間プログラム弾]を撃ち込めるのはあのマシンしかないからな。
この間の戦闘が”人類初の空間プログラム弾を使用した戦闘”だった。」

郷田指令「あれが効いたという事はやはりこの世界は……、そして[レイド]の正体は……。」

矢樹 「まだわからん。」

郷田指令「なに?!なんだって?」

郷田指令は内心「(そこまで話を引っ張っていながら……。)」と憤慨した。

矢樹 「空間破壊のプログラムは通常の弾丸に仕込まれている。
通常弾の弾薬の炸裂で敵が消滅しただけの事かも知れない。」

郷田指令「それは確かなのか?それでは話がフリダシに戻ってしまう!」

矢樹 「君は気付かなかったのか?あの[神津 アンナ]が行ったあの時の照準計算を。
瞬時に目標の弱点を見抜き、正確に座標を入れ込んだ。
あのような神業的な操作は基地の熟練したミサイル発射担当官でも出来ない。」

郷田指令「本当か……?」

矢樹 「だから前回の戦闘では敵を倒せたのかも知れない。”通常攻撃”によってな……。」

郷田指令「………………。」








[レッドノア]の基地内。
いつものようにそこに設けられた[ 教室]ではスポルティー・ファイブのメンバー5人が集っていた。ここには30個ぐらいの机が並べられ、普通の学校の教室とそっくりに作られてあった。また
その机はどこの学校でも見かけるようなポピュラーでややノスタルジックなデザインで、パイプに木目が描かれた化粧版が取り付けられた物 だった。

[ 教室] の左側には全面に開閉式の窓があり、開ける事も出来た。
大きく上下に開き、この教室自体が少し建物からせり出しているせいもあって下側の方の景色もよく見えた。
開閉式の窓を囲むシャッターは大きな装甲板の様にも見え、さすが軍事関係の建物という感じがした。それが閉じている時にはそこにCGで擬似の空を映し出すシステムが備わっていた。
それは太陽光を真似て発生させる特殊な液晶パネルによるもので、そこからの投射は教室内に温かい光を降り注がせていた。
擬似とは言え実に良く出来た物で、この教室内にいると少しも窮屈な感じはしなかった。
そこで皆は普段から自然とここに集って来るのである。






神田 「ちわーーーーーーーーーーす!今日も皆いるか?」

神田はいつもの調子である。まったくもって本物の学校に登校するのと変わらない。
そして服装は少々ラフだ。教科書もあまり持って来ない。持って来るのは傷だらけのノートパソコン1つだけ。

教室に入るなり、神田はまずは委員長を見る。

神田 「委員長!今日はまた一段とお美しい!素敵なメイクですな。」

委員長はプイッと首を横に振る。メイクなどしていない。

次に神田は少し離れた席に据わっているアンナに言い寄った。
両手をすりすりさせてニヤけながら。

神田 「流石に究極の美少女。いつも落ち着いておられる。君の顔立ちはまるで美術品の彫刻に似て…………。」

アンナ「……………………。」

彼女からはまったく反応が無かった。
そしてこちらも顔を背けた。





スポルティー・ファイブ 第2話 レッドノア [act.2]


そこへ、教官のナターシャが入って来た。
まだ訓練や授業が始まる時間では無いが、今日は何かメンバーに伝える事があるようだ。
彼女は数冊の教科書とノートパソコンをたずさえ、姿勢良く背筋をピンと伸ばしながら教壇へと向かった。その姿はファッションモデルのようなかっこよさだった。
神田は思わず席を立ち、

「ナターシャちゃん!今日は髪型が決まってますね!」

とオーバーアクションを交えて話した。

委員長「……………………。 (>_<) 」

委員長は言葉を失う。
これはいつもの事なのだ。







ナターシャが立った教壇の後ろにある黒板。
一見ノスタルジックな緑色がかった黒板に見えるが…、実は大きな液晶モニターに黒板の映像が映された物だった。今日はそこに別の映像が映し出された。ナターシャがその映像の説明を始めた。




映像では大きな[建設作業船]が湾岸近くの洋上に浮かんでいた。
旧世代の戦艦のようなシルエットを持ち、そこに大型クレーンが何本もそそり立った姿をしていた。大きさは”巨大”と言う他は無く、映像からでは実際にはどのくらいの大きさがあるのか見当もつかなかった。

この船は湾岸沿いの沖合いで、半径20キロの弧を描くような巨大なダムを建設する為の作業に当たっていた。海の中に建設される巨大な人工のダムは潮の満ち引きだけで電力を発生させられる潮汐(ちょうせき)発電所だった。

完成すれば、付近の都市や施設等に大電力を供給できる。
リニアモーターカー・フルオートメーション工場・そして防衛基地等、全てに電力供給が出来る大型発電所だ。
しかも、原子力発電のような弊害は無い。
また太陽電池による発電よりは気象の影響を受けないで済む。
最近は蓄電能力も高まっているので、万が一海がまったく満ち引きをしなくても、5日間は一定の電力の供給が出来るようになっていた。
さらに嵐にも負けない強固な設計のダムなので、完成させれば半永久的に電力を供給出来る筈である。

このダム建造物はそのほとんどが海面下に沈んでおり、海面上に露出している部分はごくわずかだった。海面下にある部分は巨大な”壁”そのものと言った感じだ。

作業は別の所で造られた巨大な壁のパーツをここまで運搬して来て、海底に設置するというやり方だった。それを何度も繰り返していた。
地盤を固めながらの作業なので完成にはまだだいぶ日数がかかりそうだった。
海底を固める作業はもっとも神経を使う部分だ。それが甘いと地盤地下を起こす。

このダムを洋上で建設する為の大型作業船には常時150名の作業員と700体以上の人間型ロボットが作業を行っていた。
実に巨大で力強い作業船だった。人類の英知・技術の結晶であった。

この人工のダムは[オーシャン]と名付けられた。






説明が終わった後、モニターには郷田指令が映った。

郷田指令「最近[レイド]はこの[オーシャン]というダムに興味を示していると思われる。
[ザーク]らしき影がたびたびこの付近の海域に出現しているのだ。
警備艇のレーダーに正体不明の物体が映る事も多い。
訓練も兼ねてスポルティー・ファイブのメンバー諸君でこれを調査してくれたまえ。」

クリス・委員長・豪・アンナ「はい!」

神田 「やれやれ、退屈な仕事みたいやんけ。」

委員長「………………。」





スポルティー・ファイブ 第2話 レッドノア [act.3]


スポルティー・ファイブが[オーシャン]へのパトロールへ向かう事になった。
その矢先、突然、[オーシャン]が何者かに攻撃を受けた。[レイド]の[ザーク]が海中からその姿を現したのだ。
ブラックガバメントから[ノアボックス]に緊急出動命令が下る。

郷田指令「スポルティー・ファイブ発進せよ!」

直ちにメンバー各機が発進準備をした。
最初の[レイド]との戦闘からすでに一週間が過ぎていた。
パイロットのメンバーは発進と帰艦の訓練を繰り返し行っていたため、あの時よりもいくぶんマシになっていた。



クリス「クリス機、発進します!」

ナターシャ「発進、どうぞ!」

クリスは綺麗に発進した。




続いて委員長が……、

委員長「発進します!」

まだ少し不慣れな印象だが…、なんとか大空に舞い上がった。




続いて神田機。

神田 「しゃあねえ、出るかな?」

ゴーーーーーーーー!

神田 「あわわわわわわわわわーーーー!」

いつもこうだ…………。




続いて羽山機。

豪 「発進します。」

羽山機は難なく離陸。




続いて神津機。

アンナ「発進します。」

アンナは整った発進ができるようになってはいたが、今日は少し機体が流れた。
しかし、アンナも発進に成功。

各機は上昇した。






そこには青い空が広がっていた。






各機は数分で[オーシャン]上空に差し掛かった。

神田 「すげえや!ホント、でっかいのうーーーーーーーーー!!」

その作りかけの建造物と作業船の巨大さに思わず神田も驚く。
巨大なクレーンが空を突き刺すように何本も立ち並んでいる。
周りにいる船のどれもが小型船にしか見えない。タンカーでさえ小さく見えた。

委員長「ホント、巨大ねーーー!」

神田 「まあ俺の委員長に対する愛の巨大さにはおよばないがね。」

委員長「……………………。」






郷田指令「スポルティー・ファイブの諸君に次ぐ。[レイド]の手から[オーシャン]を守れ。
これは正式任務だ。以上。」






神田 「来たでーーーーー!!初の正式任務や!俺は燃えるぜ!」

郷田指令から初めて”正式任務”と言われて、メンバー全員は内心は気が引き締まった。

神田 「今度は覚悟せいや、レイドのザークめ!
今の俺達はもうこの前の俺達じゃないぜ!
あれから訓練を重ねたんや!新生スポルティー・ファイブの力を見せてやろうやないか?!」

委員長「貴方が言うと安っぽく聞こえるわ!」

神田 「やかましいわ!!!委員長!
人がええ気分に浸ってる時に横槍入れんといてや!
さあ行くで!スポルティー・ファイブドッキングや!
俺らの鍛え上げたシンクロを見せてやろうぜ!」

クリス「スポルティー・ファイブ、各機ドッキングシークエンススタート!」

神田 「あっ!そのセリフ、一度でいいから俺に言わせろ!!」

クリス「全機シンクロ開始!」

委員長「シールドオン!各機、ドッキングフォーメーションへ!」

スポルティー・ファイブ各機は急上昇する。そのまま上空で接近した。
そして見事ドッキングに成功。

神田 「くーーーーー!決まったーーーーーーー!」

思わず喜ぶ神田であった。





スポルティー・ファイブ 第2話 レッドノア [act.4]


クリス「委員長、レーダーはどうなってる?ザークの姿は?」

委員長「反応はまったく無いわ。」

そこへ、アンナから通信が入る。

アンナ「海面上に”影”が見えるわ。」

神田 「へっ?どこ?」

アンナが示した座標を全員で見てみる。各機のコクピットのスクリーン上には海面を望遠でとらえた映像が映るが、それらしい物は見えない。

委員長「なにも映ってないわ。」

豪 「変化なんてわからないけど?」

アンナ「……………。」

しばらくモニターを見つめていたクリスは、突然何かを感じ取った。
それは彼の眠っていた超能力が目覚めたからかも知れない。
クリスはある場所の波の形がおかしい事に気付いた。

スポルティー・ファイブを旋回させ、その海面を真上から見ると………、浅い深度で海面下をザークが進んで来ているのがおぼろげに見えた。

クリス「発見した!アンナの言った通りだ。」

他のメンバーにもそれがやっと見えた。

神田 「なんや簡単に見つけてしもうたやんけ!拍子抜けやな!
やっこさん、白い機体やから海の中でよう映えるがな!」

クリス 「この間のとは違う機体だ。新型かな?」

委員長「皆、気を付けて!油断しないでね!」

委員長がそう言った直後、ザークは水中から数発のミサイルを放って来た。
海面から斜めに水柱が何本も延びる。

豪 「来たーーーーー!挨拶代わりだ!」

豪は迎撃ミサイルを放ってそれに応戦する。クリスもライフルの射撃でこれに応じる。
ミサイルの段数は限られているが、ライフルならもっと多くの弾数を保有している。急な場合以外は出来るだけライフルで応戦するようにしたい。

しかし射撃は思うように命中しなかった。
スポルティー・ファイブはまた力が出ない状態に陥った。

豪 「まただ!この前の時と同じだよ。シンクロ率が低下している!」

クリス 「何が原因なんだ?!」

委員長「わからないわ!皆、集中してる?!」

クリスは各機のコクピットが映ったモニターを見た。
皆、異常は無いようだが、アンナだけは普段からポーカーフェイスなので状態が分かりづらい。

神田 「シンクロメーター見ただけでは原因はようわからん!
皆、ホントに大丈夫なんやな?!ちゃんと集中しとるか?
特に委員長!しっかりしいや!アンタはこないだの原因作った人なんやで!」

委員長「貴方に言われたくはないわ!!!」

クリス 「アンナ、君はどうだ?」

アンナ「……。」

その時、コクピット内に警報が鳴り響いた。

ピーーーーーーーーーーーーーーーーー!

郷田指令「スポルティー・ファイブ!何をしてる?よけろ!」

郷田指令が珍しく大声で通信して来た。
その直後にスポルティー・ファイブの機体のすぐ側で爆発が起こった。

ドーーーーーン!ドーーーーーン!

豪 「クリス君、よけろ!」

爆発音とともに機体がビリビリと震える。

委員長「きゃーーーーーーーーーーーー!!」

しかし間一髪で爆発から機体をそらすクリス。
スポルティー・ファイブは爆発が起こったエリアから移動した。



神田 「ふーーーーーーーー!
あの感じは嫌やな。生きた心地がせえへんで。
でもさすがクリスや、上手くかわしたな。俺より少し腕は劣るが……、まあ合格ラインや!」

委員長「貴方はいつも一言付け加えないと気が済まないの?!」

クリス 「スポルティー・ファイブのコントロールが効きにくい。次も避けられるかどうかわからない。」

豪 「わかった!ミサイルをいつでも発射できるようにしておくよ!任せて!」

クリス「ミサイルが尽きるまでは……、それで頼む。」

神田 「心配やな。ミサイルはそうもたへんで。」

クリスはモニター上のアンナに呼びかけた。

クリス 「アンナ!どうすればいい?」

アンナ「……………………。」

クリス「どうした?アンナ、体調が悪いのか?」

アンナ「……………………。」





スポルティー・ファイブ 第2話 レッドノア [act.5]




郷田指令「アンナはなぜ返答しないんだ?具合が良くないのか?」

ナターシャ「そのようです。

アンナさん!どうしたの?脈拍・呼吸・心拍数共に乱れているわよ!精神レベルが低下しているわ!」

アンナ「…………………。」

さすがに矢樹も眉間にシワを寄せる。

矢樹 「危険だな。引き換えさせろ。もうすでに”役立たず”だ。」

ナターシャ「そっ…、そんな言い方って!」

郷田指令「いや、確かに危険な状態かも知れない。
引き返させる方がいい。こんなところで無理をさせるな。

スポルティー・ファイブ聞こえるか?!作戦中止だ!撤退しろ!」







神田 「なんやて?撤退?
おいおい、今出撃したばかりなんやで。
それに目の前に敵がおるちゅうのに、どうやって撤退せい言うんや!むちゃくちゃ言いよるな、あのオジン達は!」

豪 「ミサイルを一斉発射するから、その間に上昇離脱しよう!」

神田 「それで、敵の動きを止められたらいいがな。そうでないと大変やで。」

クリス「危険だが…、とにかくやってみよう!ミサイル発射後、高度5000メートルまで一気に上昇する!」








クリスはライフルを構えてザークに向かって撃った。それで少しでも敵の動きを抑えようとした。
しかし、アンナが照準を担当してくれないので、弾は正確には当らない。

神田 「アンナちゃん、どうしたんや?出し惜しみはせんでええで!あいつらにいっちょ俺達の力を見せたってえーーーや!」

委員長「もーーーーーーー!言葉使いが荒いわね!アンナは今調子悪いのよ!」

神田 「俺の言葉は地元の言葉や!」

委員長「どこの地元なのよ?!」

豪 「クリス君!こちらではミサイル発射のタイミングがつかめない。そっちで発射の指示を頼む。」

クリス 「わかった。アンナ、照準は無理なのか?今、君の力が必要だ。」

アンナ 「……………………。」

クリス 「アンナ?」

豪 「どうしたんだ?アンナさん?」

クリス「……。」







矢樹 「撤退しろ、スポルティー・ファイブ!これ以上戦場に留まると、さらに危険度は増す!」

クリス 「今から上空へ離脱します。」

矢樹 「すでに基地から応援のミサイルを発射した。もうそちらに向かっている。
その隙に逃げろ!」

レーダーに大量のミサイルが映し出された。ある空域に動く無数の点が見える。

クリス 「こんなに大量のミサイルが……。近くで爆発したらスポルティー・ファイブの機体は耐えられるんですか?」

矢樹 「君達を避けるようにセットしてはいるが…、まあ当らぬように注意する事だな。」

神田 「くーーーーーーーーーーーー!!」





やがてミサイルはスポルティー・ファイブのすぐ真横をすり抜け、ザークに向かって振りそそいだ。だがサークはダミーのミサイルを発射してそれを交わした。

辺りに水柱、閃光、水蒸気が立ち込めた。
ゴオン、ゴオンという不気味な爆発の衝撃音と共に爆風がシールドに包まれたスポルティー・ファイブの機体を揺らせた。






その後、白いザークは後退した。水中を潜行したまま逃げたのだ。
だが、その前に手持ちのミサイルを全て吐き出して行った。
ミサイルはスポルティー・ファイブ目掛けて飛行して来た。

スポルティー・ファイブは高度5000メートルまで一気に上昇。
そこでドッキングリリースをした。
戦闘機形態に変形して速度をMAXまで上げた。
全機追っ手のミサイルを振り切る事に成功し、無事戦場から離脱した。






スポルティー・ファイブ 第2話 レッドノア [act.6]


 スポルティー・ファイブ各機は[ノアボックス]基地内に係留してある[レッドノア]の飛行甲板から帰還した。
[レッドノア]は飛行甲板を全て分厚い防御装甲で被い囲んでおり、そのため全体では平べったい葉巻型に見えた。
下半分は専用の防御装甲付きの巨大な台座によってカバーされていた。
その為、[レッドノア]は外から見ると”長細いドームの屋根を持つ建物”にしか見えなかった。
それにまだ一度もここから切り離された事は無い。だからここに空母がある事を知らない者が多いのだ。



スポルティー・ファイブのメンバーはシャワーを浴びた後、食事を取る為に[学食]と呼ばれる食堂に向かった。
ここには各種自動販売機が並んでおり、メンバーなら支給されたキーカードを読み込ませる事で何でも無料で食べられた。
自動販売機とは言え、ラーメン・オムライス・ハンバーグ定食はもちろん、ステーキ・焼肉・から揚げ・すき焼きなどなかなかのメニューが並んでいた。それに飲み物はコーヒー、サイダー、野菜ジュースやゼリー状の飲み物の他に、アイスクリームが出て来る機械もあった。
さらにここは[スポルティー・ファイブのメンバー専用]の場所となっており、他の兵士達は普段は入れなかった。メンバーの心が休まるように配慮されているのだ。また内装の作りも”学校の学食”にそっくりに作られていた。

皆はゼリー状の飲み物を取り出して飲み始めた。

テーブル席に腰掛けるなり神田が、

神田 「なんや言うんや、あのやり方は?もう少しで味方のミサイルにやられるとこやったわ!」

神田は今日の作戦中のミサイル発射の件を怒っていた。

委員長「またグチ?毎度の事ね。」

豪 「ミサイルは僕らを避けるようにセットされていたとは言え…、着弾は至近距離だったね。確かに少し危険だったと思う。」

神田 「あのやり方は”マッドサイエンティスト矢樹”ならではだ!!!」

クリス「実戦だからある程度は仕方ないとは言え……、気を許せば僕らも危ない。
これからは気を付けなければ。」





ここにはアンナの姿は無い。実はいるのは4人だけだった。彼女は[自室]の方に行ってしまったのである。

神田 「ところで、アンナちゃんはどうしたんや?付き合い悪いのう!飲み会には美人のオナゴが必要や!顔見せてくれるだけで俺は満足するちゅうのに。」

神田はもう一本ゼリーを取って来て飲み干した。

ゴウゴグゴク……………。

委員長「……………………。」

委員長はあきれている。


クリス 「アンナは体調悪いのだろうか?委員長、すまないけど、後でアンナに聞いて来てくれないか?」

委員長「わかったわ。」

神田 「おっと!そういう事は俺の仕事や!俺に任せとけ!俺がアンナちゃんの相談役になってやる!」

委員長「…………………貴方はいいわ。」

神田 「なんや委員長?!その言い方は?!」

豪 「こういう事は女性に任すべきなんです。男性の出る幕じゃありません。貴方が行くとかえってアンナさんのご迷惑になるんです。
そんな事もわからないんですか?!」

最後のセリフは神田のプライドを酷く傷付けた。

神田 「なんだとこのーーーーー!!!」

豪 「あっ、やるんですか?!いいですよ!相手になります!」

豪はその場で跳躍しながらファイティングポーズを取って見せた。

神田 「このお~~~~~~!くーーーーーーーーーーーー!!!」

委員長「いつもの事ね……。ふう……。」






スポルティー・ファイブ 第2話 レッドノア [act.7]


郷田指令「レイドの目的はダムだろうか?そこを破壊して大電力供給をさせないようしたいのだろうか?」

矢樹 「まあ戦術的に考えればそうなるだろう。初歩の戦術だよ。
あの発電所が完成すれば、我々もその恩恵は受ける。
[スポルティー・ファイブ]や[レッドノア]、そしてこの基地内の兵器への充電もかなり楽になるからな。
それを考えると、敵は思ったより頭が良い。」

郷田指令「これからは洋上ダムを重点的にパトロールしよう。
スポルティー・ファイブの訓練用としてはうって付けの任務だが……、今日の彼らの動きを見ると任せておくわけには行かない。不安が残る。」

矢樹 「その点については同感だね。例えるなら彼らはまだ”新入のアルバイト”に過ぎない。まだ完全には仕事を任せ切れない。」

郷田指令「ああ。だが一応彼らにやってもらおう。
危険になったら[レッドノア]を使う。出撃して護衛に回らせる。」

矢樹 「ついに[レッドノア]を使う事を決心したか!それがいい。
このような図体のデカイ物を秘密兵器扱いする事がそもそも愚計というものだ。
こんな物温存していても何の役にも立たん。早く使ってしまうことだ。」

郷田指令「何の役にも立たないだって?!」

矢樹 「温存していればね。
技術は日進月歩だ。私が4ヶ月前に買ったコンピューターがこの間もう半値で売られているのを見た。
機械は賞味期限が切れる前に使い倒すべきだよ。」









 その頃、委員長は1人アンナの部屋を訪ねていた。

ベルを押すと辺りには柔らかい音色が流れた。
しばらくして部屋の中からアンナが現れた。しかし入り口のドアは半開きのまま。そこからアンナが顔を半分だけ出していた。
中には入れたくはないという事だろうか?
アンナの顔色は良くない。

委員長「アンナ……。
最近どうしたの?ちょっとその事でお話したくて来たの。
入っていい?」

アンナは無表情のままコクリと頷いた。






中に入ると、そこは質素な部屋で、最低限の私物しか持ち込まれていなかった。
しかしそれは机の引き出しの中や埋め込み式のクローゼットの中に入れられ、部屋の中は文字どうりガランとしていた。備え付けのパソコンのモニターとキーボードだけが机の上にドンと鎮座していた。





出しっぱなしの収納式ベッドの上に2人は腰掛けた。

委員長「最近どうしたの?」

アンナ「頭が痛いの。」

委員長「頭が?お医者さんに診せたの?ここの。」

アンナ「医者は嫌いだわ。」

委員長「……でも、頭痛の原因がわからないと不安にならない?
痛みはずっとなの?」

アンナ「ずっとじゃない。ときどき。」

委員長「お医者さんに診せた方が……。」

アンナ「嫌だわ。」







オペレーター「[レッドノア]にエネルギー充填、および必要物資の搬入中です。それはもう終わりますが、電力充電の方はまだしばらくかかります。」

郷田指令「洋上ダムが完成すれば瞬時に充電出来るだろうな。
いくらここにも電力供給ラインや発電能力があるとは言え、洋上ダムからの電力供給にはかなわないからな。」

オペレーター「早く無事に完成して欲しいものです。」

郷田指令「………うむ。
では充電終了後、本日、13:00時に[レッドノア]は公使運転の航海に出ると皆伝えろ。」

オペレーター「わかりました。」






スポルティー・ファイブ 第2話 レッドノア [act.8]




委員長「でも……、皆の心が1つにならないと、スポルティー・ファイブは動かせないのよ。」

アンナ「私は……、もともとそういうのは苦手だわ。」

委員長「そんな……。」

アンナ「私は他人とかかわるのが面倒なの。」

委員長「でも……、貴方の力が必要なのよ。」

そこへアナウンスが流れた。
[レッドノア]が公使運転に出る通達である。







[ 教室] にクリス・神田・豪が集っていた。

神田 「今の放送聞いた?[レッドノア]って何?」

豪 「あのスポルティー・ファイブが離着陸している飛行甲板は[レッドノア]の物なんです。」

神田 「あれ?そうだっけ?あれは[ノアボックス]の建物の一部じゃなかったのか?」

豪 「いえ、あれが[レッドノア]です。この事はこれまで一応極秘扱いにされて来たんですけどね。」

神田 「じゃあ、なんでお前だけが知ってんの?俺は教えてもらってないぜ!」

豪 「部屋に備え付けの端末から苦労して入手した情報です。」

神田 「ふーーーーーーん。やるジャン!お前も。
ところで………、
じゃあ、なにか、”あれ(空母)”が水の上に浮かぶとでも言うのか?」

豪 「まあ、それもやろうと思えば出来るようですが………、[レッドノア]はもともと空中を飛行する空母です。」

神田 「空中を?????あのデッカイ滑走路とカタパルトがか?」

豪 「そうです。」

神田 「信じられん!デカ過ぎるぞ。○阪ドームが空に浮かぶようなもんやんけ!」

豪 「大○ドーム???
とにかく切り離せるんですよ。僕もまだ見た事はありませんが。
何せ出港するのはこれが初めてですから。」

神田 「なに?!初めて?
ほ~~~~~~~!じゃあ俺達も乗ろうか!記念すべきイベントには立ち会わんとな。
何せ俺達はプロ野球に例えるなら”選手”に当る。つまり主役だ!
俺達無くして舞台はありえない。」

豪 「………………。」

神田 「とにかく行こう![レッドノア]に乗ろうぜ!」

神田ははしゃぎまくっている様子だった。







郷田指令「これより、出港する。全員シートに着席するように。」

オペレーター「[レッドノア]乗組員に全員に告げます。本艦は間もなく出港します。
安全の為、出来る限りシートに着席してシートベルトを装着するようにしてください。」

矢樹 「記念すべき日になるな。関係した技術者にとっては。」








神田 「おいおい、すぐに出港かよ。はよ行こうぜ!乗り遅れちまう!」









オペレーター「出港準備よし。」

郷田指令「係留フック外せ。アンカー解除。」

オペレーター「アンカー解除」

郷田指令「最終確認!」

オペレーター「オールグリーンです、司令。全システム異常ありません。」

矢樹博士が空笑いしながら、

矢樹 「いよいよ出港だな。これから私達も地獄を味わう事になるだろう。」

郷田指令「なに?!」

矢樹 「今までそれはスポルティー・ファイブの連中や軍パイロットだけが体験してきた事だが……。
これからは我々も身を持って実戦を体験する事になる。もうデスクワークだけでは済まない。覚悟しておく事だな。」

郷田指令「くっ……。」





スポルティー・ファイブ 第2話 レッドノア [act.9]




その時、スポルティー・ファイブのメンバーのいる[ 教室]が揺れた。

神田 「なっ、なんや?!地震か?!皆、落ち着くんや!」

豪 「地震ではありません。[レッドノア]が動き始めたんです。」

神田 「なっ、なんやて?」






郷田指令「[レッドノア]、リフトアップ!」

操縦士「リフトアップ!」

巨大な船体が実にスローなスピードで空に浮かび始めた。
オペレーターは計器パネルの数値に目を走らせる。

[レッドノア]は一般の人々には知らされていない。
浮かぶ船体を見る街の人達は何事かと驚くだろう。







オペレーター「浮上確認!船体は地上を離れました。」

矢樹 「はっ!こんな物が浮かぶとは大したものだ!設計チームの連中を見直したよ。」

郷田指令「君がその設計のチームのリーダじゃないのか?!」

矢樹 「私が彼らに出したのは”要求のみ”だよ。実現させたのは彼らだ。これで彼らが優秀な人材だと証明された。」









[ 教室]の開閉できる窓をクリスが操作して開くと、[ 教室]の片側半分が大きく開きそこから真っ青な空が現れた。それは澄み切っており、何本かの白い飛行機雲が見えた。
下方には都市が一面に広がっていた。

神田 「うわーーーーーー!すげえーーーーーーー!こんなアトラクションがあったのかあーーー!!!」

豪 「アッ、アトラクション?……………………。」

大きく開いた窓からは眩しい光が差し込んで来た。

神田 「ええ眺めや。サイコーやな!」







ナターシャ「[レッドノア]、航行には異常ありません。全て正常です。」

矢樹はいつに無く興奮を隠し切れない様子だ。

郷田指令「洋上ダムへ進路を取れ。」

オペレーター「はい。」

矢樹 「都市上空は迂回して出来る限り海の上を飛べよ。落ちたら迷惑がかかる。」

郷田指令「わかっている…………。」








委員長「出港したようね。[レッドノア]が。ああ、こんな感じので飛ぶのね。」

アンナ「これから大変な事になるわ。」

委員長「え?」

急にアンナが自分の頭を両手で覆った。

アンナ「頭が痛い……。」






スポルティー・ファイブ 第2話 レッドノア [act.10]


オペレーター「まもなく洋上ダムです。すでに眼下にその姿が見えます。」

大きな洋上ダム全体が正面スクリーンに映し出された。

ナターシャ「はあ………。」

郷田指令「大きい!

ダムを中心に[レッドノア]を旋回させろ。」

操縦士「はい。」

郷田指令「実際に見るとこれほどとはな。これと比べると洋上空港も小さく見える。」

矢樹 「くくく、よく作ったねえ、こんな物を。
つくづく開発者や技術者連中の情熱には頭が下がるよ。
エネルギー資源だと?くくくく………。どこまで”本物”の資源かわからんと言うのに。」

郷田指令「矢樹博士!」










委員長「アンナ、やっぱり一応メディカルセンターに行ってみない?」

アンナ「いえ、いいわ。止めておく。」

そう言ってアンナは折りたたみ式のベットの上に身を横たえた。
具合が悪い事は見て取れた。それに気分も悪そうだ。

委員長「でも……。」

アンナ「これはいつもの事だから……。悪い予感がする時は。」

委員長「貴方も予知能力があるの?」

アンナ「ええ。」

委員長「そうなんだ!」

委員長は複雑な思いがした。
その特殊能力は持っていても、いつも自分自身には邪魔なだけに思えたからだ。
自分の為になるような予知夢が見れた試しがこれまで無かったからだ。

委員長「でも……、私の方は最近悪い夢は見てないわ。」

アンナ「私は見たわ。”大きな船が沈没する夢を。
人々がその時叫んでいたわ。”助けてー”って声がいっぱい聞こえた。」

委員長「”大きな船”が?」








[ 教室]の窓からクリスはジッと洋上を見つめていた。それは美しく青く澄んだ海だった。

クリス「綺麗だな。こんな美しい場所で戦闘をするかも知れないなんて信じられない。」









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