BLUE ODYSSEY

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第6話 過去の恋 act.51~52




アンナとレイチェルもスポルティーファイブの機体に乗ってここに来ていた。
アンナはクリスのそばに寄り添う。

アンナ「ありがとう、助けに来てくれて……。」

クリス 「…………。」

クリスはアンナとレイチェルに元の世界に戻れないだろうという事を説明した。
アンナの方はボロボロのスポルティーファイブの機体を見てそう悟っていたようだった。





ローレンスの事はレイドの人々に任せて、クリス達は彼のもとを去る事を決めた。
クリスはその後、”アンナの家”に行く事にした。スポルティーファイブの機体に乗り、皆でそこに戻った。





まだ意識の無い委員長だけをコクピットを残して、クリス、神田、豪、アンナ、レイチェルは再びあの家の中に入った。
レイチェルが持ち出していたアンナ・エリスのパソコンはそこのリビングのテーブルの上に戻された。

レイチェル「ああ、アンナ・エリスさんとアンさんがここで暮らしていたのをすごく感じるわ。」

クリス「……。」

アンナ「……。」

レイチェルは何気なくキッチンの方へ歩いて行った。

レイチェル「なつかしい……。私、このキッチンを使ってたんだわ。
ああ、この世界で暮らすなら、ここしかないわね。
この世界は大変そうだけど、ここでなら生活できそうだわ。」

アンナ「……。」

神田 「近くにコンビニは見当たりまへんな。 あぐ!」

その場の雰囲気を壊す事を言ったので、神田は豪に口をふさがれた。

豪 「……。 (>_<) 」





クリスは窓から外の空を見上げた。上空にはどんよりとした雲がかかっており、天気は相変わらずである。ここはやはり一日の内、半分は小雨が降っているようだ。

クリス「……。」



でもアンナとレイチェルは心なしかにこやかだった。

アンナ「ホント。この家なら暮していけそう。唯一ここだけが落ち着ける場所だわ。」

レイチェル「ここのキッチンはまだ使えるわ。お湯も出るわ。」

レイチェルはキッチンでお湯を沸かし始めた。

レイチェル「お茶があるわ。皆に入れるわね。」

そのお茶は見た事もないパッケージで本当に”お茶”なのかどうかクリスにはわからなかった。
でもレイチェルはそれがお茶である事を知っているかのようだった。
レイドの人々の”湯飲み”は地球の物とデザインが違うが、レイチェルは使い慣れているかのごとく、手馴れた手付きでお湯を沸かし始めた。



レイチェルは気丈な女性だった。

アンナ「レイチェル……さん。ここから戻らないとアイクさんが……。」

レイチェル「いいのよ。まだ”戻れない”と決まったわけじゃないでしょ?それにここには貴方がいるわ。」

アンナ「……。」

アンナはレイチェルに特別な感情を抱いていたが……、その事をまだはっきりと口には出せなかった。
今はこの現実から離れたこの地にいて心細かったが、レイチェルとこの家がある限り、ここで暮らしていけそうな気がした。





スポルティーファイブ 第6話 過去の恋 [act.52]


クリス「ここで、暮らそう。しかたない。」

クリスは皆にそう言った。

豪 「………………。」

レイチェル「………………。」

神田 「えーーーーーー?!!
ここにアンナちゃんがおるから、その点だけはええんやけど……、後の点はなあ……。」

アンナ「………………。」

豪 「………………スポルティーファイブの機体をここの技術者に見てもらえば……、あるいは修理してくれるかも知れません。」

クリス「そうだね。あの人達は親切そうだった……。もしかすると頼めるかもしれない。」






その時、窓の外が少し暗くなったように感じた。
クリスが窓辺まで行って外をのぞくと、上空に大きな雲が出来ていた。

クリス「なんだ?」

豪 「妙な形の雲ですね。」

豪も窓の外を見て、そう言った。

その巨大な雲はビルを1つ横倒しにしたような大きさがあるように見えた。そしてその周囲に渦を巻くように厚みのある雨雲が現れ、さらに多量の雨をもたらした。轟音と共に雷鳴が何度も鳴った。やがて雲の切れ目から真っ赤な物体が現れた。

神田 「なんやあれは?」

その物体も巨大だった。それが空中に浮かんで、ゆっくりとクリス達の方へ移動して来た。

神田 「なんだ、いったい?」

その時、豪は急に笑顔になった。

豪 「レッドノアですよ。レッドノアの船底です。忘れたんですか?」




確かにレッドノアだった。レッドノアはゆっくりと移動していた。
レッドノアは巨大で、それは見る方向によっては異形の物体に見える事が多かった。
クリスはスポルティーファイブのコクピットに向かった。この世界ではまったく使えなかった現実世界との無線が使えるようになっていた。

矢樹「無事か?」

矢樹の声が飛び込んで来た。耳にするのは妙になつかしい。

クリス「はい。委員長、いえ小川さんが疲れて眠っています。休養が必要です。
アンナとレイチェルさんは救出しました。」

矢樹 「それは良かった。ただちに君達を収容する。」

豪 「レッドノアは”この世界”への渡航が出来たんですか?」

矢樹「レイドのデータを分析していたら、月の都市を向こうの世界へ移動させた時のデータがみつかった。そのテクノロジーを流用させてもらった。
だが、まだ未完成の技術だ。ここにとどまれるのは後1時間もない。直ちにレッドノアに帰艦するんだ。」

クリス・豪・神田 「はい!」






だがアンナはこの家から動きたくないようだった。

アンナ「せっかく見つけた私の家……。私はここから去りたくないわ……。」

クリス「戻ろう、アンナ。現実世界にもレイドの人々が残した”君の家”の跡があったじゃないか?あそこに同じ物を建てればいいさ。」

クリスはまっすぐな気持ちでそう言った。アンナはホンの少し微笑んだ。

アンナ「そうね。」





矢樹「スポルティーファイブのメンバーに早く帰艦するように伝えろ。電力が残り少なくなって来た。」

ナターシャ「はい。」






あわただしくスポルティーファイブの機体はクレーンでレッドノアに積み込まれた。
クリス・豪・神田・アンナとレイチェルもレッドノアに乗り込んだ。そして委員長も収容された。

レッドノアに帰艦してレイチェルはすぐにアイクの病室に向かった。






クリス達は展望室から遠ざかる下の景色をながめていた。
レッドノアはゆっくりと上昇して行く。この後、現実世界への渡航が始まる。それはもう間もなくである。

アンナも自分の家がある方向を見つめていた。
だが家の屋根はもうとっくに小さくなっており、判別できなくなっていた。

クリス 「…………。」

豪 「やっとこの世界から脱出できますね。」

クリス 「ああ…………。」

神田 「アンナちゃんには悪いけど………、正直言うとこんな所2度と来たくないな。
俺、雨がにがてやねん。ロマンチストやから。」

豪 「”ロマンチストは雨が苦手”???」

クリス「レイドの人々は良い人達だった。また来たくなる事もあるさ。」

神田 「そうかな?」

クリス 「そうだよ。」

アンナ「………………。」






ローレンスの安否はこの時はわからなかった。

とにかくレッドノアは無事現実世界へと帰還した。


















THE END





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