ぼくはHAL!

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世界の絵本展




『誘拐された息子の話 -サウジアラビアの童話-』

あるところに 息子を誘拐されてしまった父親がいた
父親は息子を取り戻すため 誘拐犯に対し
「100,000ドル払うから息子を返して欲しい」と頼んだ

誘拐犯は「もう少し監禁しておけば 金額をつりあげられるかも」
というもくろみで その要求を断った

ところが次の日 その次の日と 父親が提示する金額は
なぜかどんどん安くなっていった

1,000ドルになったところで 誘拐犯は慌てて父親に息子を返した
そして「ところで なぜ安くなっていったのだ?」と父親に聞く...

すると父親は
「1日目 息子はお前の出した飯を食わなかっただろう?
 2日目 息子は腹が減り お前の出した飯を食べただろう?
 3日目 息子は自分からお前に飯を要求しただろう?

 1日目では犯罪人に屈しないという
 アラブ人としての誇りを持っていた息子だったから
 100,000ドル払ってでも取り返す価値があったが
 3日目には飯を要求するほど誇りをなくしてしまった
 そんな息子は1,000ドルの価値しかないからだ」
といった



『ゾウとハエの夫婦の話 -タンザニアの童話-』

あるところに ゾウの夫婦とハエの夫婦がいた
ハエの夫婦がゾウの夫婦のおうちにお邪魔した
ゾウの夫婦はじゅうたんを敷いてお客様を迎えようとしたのだが
ハエの夫婦は「じゅうたんではなく 槍を2本立ててください」と頼んだ
槍を立ててもらい ゆっくりくつろぐことができた
おもてなしのお食事に お肉がないことに気付いたゾウの妻
ゾウの夫が自分の足を火であぶり 少し切って食卓に出した
ハエの夫婦は大変満足して帰っていった

その後 今度はゾウの夫婦がハエの夫婦のおうちにお邪魔した
じゅうたんを用意してくれようとするハエの夫婦に
「僕たちも槍を2本立ててください」というゾウの夫婦は言った
槍の上に立とうとしたゾウの夫婦は 槍が刺さって死んでしまった

その頃 おもてなしのお食事の準備をしていたハエ夫婦
お肉がないので自分の足を火であぶろうとしたハエの夫
あっという間に燃えて死んでしまった

ということで ハエの妻は その後1人で暮らしていった...



『娘と魚の夫の話 -ナミビアの童話-』

あるところに未婚の娘がいた
夫とするのにふさわしいキレイな男を探していたところ
理想の男に町でめぐり合った
「私と結婚してほしい」と男に頼んだ娘
男は「僕は魔法の力でこんな姿だが 本当は魚なんだ だから結婚できない」という
娘は「それでもいい 私と会うときにこの姿ならば...」

そうして2人は結婚した
川辺で娘が魔法の歌を口ずさむと 人間に変身した夫が川から上がってきた
娘は毎日川に通い 一生懸命食事を作り 幸せな日々を過ごした

さて 娘の行動を不振に思った父親が 娘の弟に様子を見てくるように言った
娘の弟は川辺での姉の生活の一部始終を目撃し 父親に報告した
魚の夫に対して怒り狂った父親は 娘に数日留守にするような用事を言いつけた
その間に弟には魔法の歌を覚えさせ 魚の夫を川からおびきだした
何も知らずに川から出てきた魚の夫を 父親は後ろからナタで殴り殺した

その日の夜 娘の家の食卓には魚料理がのぼった
何も知らずに「魚は食べたくないの」と拒む娘に対し
父親は「食べろ食べろ」と押し付けた
「もしかして...!」と事態に気付いた娘は川へ行き 魔法の歌を歌った
しかし 魚の夫は上がっては来なかった

そう 食卓の魚が夫だったのだ...

悲しみに打ちひしがれた娘はその川に身を投げ やがて人魚になった

ときおりその川の底からは 人魚の悲しい歌声が聞こえてくるのだった


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