ボヤキ・ツブヤキ・ヒトリゴト

ボヤキ・ツブヤキ・ヒトリゴト

August 5, 2004
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
私が高校3年生の時の、世界史のS先生はちょっと変わった先生でした。
まず、教科書に沿った授業をしない。
試験は論文形式。と言っても高校だから、このへんが出るぞー、という具合に、範囲は指定されるわけだけれども。
でも、世界史が好きだった私には世界史の授業は、結構楽しい時間でした。

そんなS先生から出された、最後の試験。
先生は黒板に、世界史に登場する女性の名前をずらずらと書き並べていきました。
全部で50人。クラスの人数と同じ数。
そのほとんどは、マリー・アントワネットやルクレチア・ボルジア、楊貴妃といった、メジャーかつポピュラーなものでしたが、中に数人、見たことも聞いたこともない(当然、授業では一切触れられたことのない)人物の名前も混じっていました。
先生は彼らの名前に通し番号を打ち、全部書き終えると、私たち生徒にあみだくじをするように言いました。


「やった、私マリー・アントワネットだ!」「げー、楊貴妃だ・・・。中国は苦手なんだよねー」
などといった会話が飛び交う中、いよいよ私がくじを引く番に。
そして、私が引いた番号は、今も忘れぬ“37番”。
「さささ37番ってなんだ!!」と黒板を見上げた私の目に飛び込んできたのは、“ラクシュミー・バーイー”という単語でした。

ラクシュミー・バーイー??
それなに? 人なの? どこの国の人? えっ、いつの時代の人??
そう、私は見事にハズレクジを引いてしまったのでした。

クラスメイトの同情と「あー私楊貴妃でよかったわー」的な視線を一身に浴びつつ、「せめてヒントを!!」とS先生に泣きついても、敢え無く却下。
現在のようなネット社会ではなかったので、自転車をこいでひたすら図書館巡りをした一週間でした。

そして知った、「ラクシュミー・バーイー」の一生。

彼女は、19世紀インドにあった、小国の王妃であり女王。

王が亡くなる前、ふたりは養子をもらいましたが、イギリスは養子を世継ぎとして認めず、そして、世継ぎがいないことを理由に、イギリスへの併合を要求します。

若干20歳前後のラクシュミーは、王家を、国を守るため、『言論』で戦おうとします。しかし、権力者の前に法は曲げられ、ラクシュミーの書いた手紙は握り潰され、ついに国はイギリスに併合されてしまいます。
ラクシュミーは、それでも諦めませんでした。
彼女は、自ら幼い養子を背負って白馬にまたがり、剣をふるい、兵士や民衆の先頭となってイギリス軍と戦いました。

結果、ラクシュミーはイギリス軍に殺され、王家は滅びましたが、彼女は“インドのジャンヌ・ダルク”“正義の人”と呼ばれ、現在にいたるまで、インドの国民的ヒーロー(ヒロイン)なのだそうです。


今日発売の、『Number』を読んで、急に、この、強くて誇り高い女性のことを思い出しました。

ラクシュミーは、決して猛々しい女性ではなかったそうです。そんな彼女が、誇りのために立ち上がった。
全日本女子のふたりの「ラクシュミー」。
インドのラクシュミーは、国と誇りを背負って戦ったけれど、ふたりが背負っているものは、なんだろう。なんのために戦うんだろう。
その背負っているものはあまりに重く、その理由は、純粋であればあるほど、あまりに悲愴だ・・・と思います。

弱っている自分を見せることを極端に嫌う吉原選手。
あなたが疲れているのはみんな知っている。身体中故障だらけだという事も、みんな知っていること。そして、それをみんなが知っているという事を、あなたも知っている。
それなのに、あなたは「弱っている自分を見せるのは絶対に嫌だ」と言う。たった一本、ミスしてしまった自分が、吐くほど許せない。
その、激しいまでの強さは、尊敬しても尊敬しても尊敬したりないほどの驚嘆に値するけれど、でも、その強さを思うと、胸が痛くなるのはどうしてなんだろう。
そこまでの痛みを背負って、戦う事の意味。背負っているものの重さ。

戦いたい、と思うのも本能なら、母性も本能。
もうひとつの、そして何より大きい本能に蓋をして戦いつづける辻選手。
彼女を支えている原動力はなんなんだろう。
長い合宿。子供には会えない。会えないうちに、子どもはどんどん大きくなっていく。夏には、子どもは色々な病気にかかる。
あの子は熱を出していないだろうか、怪我して泣いていないだろうか・・・。
そんな思いに蓋をしてまで、戦う理由。背負っているもの。

誇りのために戦った、ラクシュミー・バーイーの最期は、あまりにも痛ましいものでしたが、全日本女子のふたりのラクシュミーには、栄光に満ちた未来が開けている事を、心から祈ります。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  August 5, 2004 07:37:14 PM
コメント(1) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:痛みの意味。(08/05)  
たまキャット さん

「Number」読まれたんですね。私の住んでいる地域は明日発売らしいので、チルエさんの文章を拝見して、ますます明日が待ち遠しくなりました。

吉原選手の「強さ」は何に支えられているんでしょうね。
「トップアスリートとしての誇り」や「負けたくない!!」という思い、戦ったことのない凡人の私にはそれぐらいしか思いつかないです。

ワールドグランプリの最中のインタビューで、「がんばることは当たり前。がんばるだけじゃだめなんで。」と疲れ切った顔をしながらも言い切っていたのをテレビで見て、何て人なんだと胸が詰まりました。
どうかアテネでは吉原さんが思う通りのプレーができるよう、自分の手で夢を掴めるよう、私も心から祈りたいと思います。
(でも、燃え尽きてほしくはないんですけどね、ファンとしては…。) (August 5, 2004 08:58:30 PM)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

チルエ

チルエ

Favorite Blog

おきらく キッド1180さん
なかちゃん@那覇の… なかちゃん@那覇さん

Comments

なかちゃん@那覇 @ 走る人  おいらが愛して止まないCocco姫も…
+ベル+ @ Re:魔太郎カモン。(05/18) お久しぶり~新学期も始まって、また、新…
たまキャット@ Re:プライド。(05/17) お久しぶりです。 何はともあれ、またチ…
チルエ @ Re:走り続けて・・・(03/28) motoさん こんばんは。 オリンピッ…
moto@ 走り続けて・・・ ひゃー頬っぺたまで筋肉ですか~~ あの…

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: