ココロの森

ココロの森

2009.05.22
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第98回(’88)芥川賞受賞の表題作ほか、
「トンボ眼鏡」「黒い海水着」の2篇を収録。

私が大好きな作家である
池澤夏樹氏の 「スティルライフ」
この時同時に芥川賞を受賞している。




10歳の息子が突然「お坊さんになりたい」と言い出した。
息子はやんちゃでどうしようもなく、母親が
日曜ごとに禅寺に座禅に通う父親に半ば押し付ける形で面倒をみさせていたのだが
寺について歩くうち自然に禅に親しみむようになったのだ。
やんちゃな小坊主の言うことだから、単なる気まぐれ、
そのうち考えも変わるだろう、と思い、放っておく父。

ほどなく中学生になり、素行が乱れ、成績もがた落ちになるも、
何故か日曜の参禅だけは続ける息子。
僧になりたいが自信がない、という息子に
型破りな師匠の尼僧は「まかせておけ」と言う。
息子の意思を尊重する家族だが
『出家』という事実は思っても見なかった家族の側面を映し出す…




着眼点が面白いなあと思ったら
どうやら実体験を元にした小説であるらしい。
この小説を書いたことが元で、


(著者年譜)


禅とオカルトを同時に研究したりして
なかなかユニークなかただ。




人はどんな場合にも喜びを見出す。
 そういう小さい喜びの重なりで、人間は生きてゆくのだ。
 それは喜びというより、ほとんど感謝とでも言い得るものだろう。
 それに比べれば、異性を愛したり、宝くじに当たったりする喜びの方が、
 はるかに不安定である。
 喜びが大きければ大きいほど短命なのだ。
 しかしいずれにせよ、喜びというのはみな短命で、
 まともに相手するわけにはいかないのだ。
 いずれ息子にもそれがわかるときがくるだろう。
 「昨日うまく作れなかったものが、今日うまく作れた喜び」が
 わかるようになったとき、息子は一人前の僧になるだろう。



                  ( 本書より )





父親の目線から描かれた物語だが
私感を殆ど挟まずに
家族の戸惑いを自然に、ありのままに描き出しているのが良い。


父親、母親、妹、
それぞれのスタンス。 それぞれの道。


道に答えがないように、この物語にも、答えはない。












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最終更新日  2009.05.23 16:56:02
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Re:『長男の出家』三浦清宏(05/22)  
かおり さん
ああ、嬉しい。どんどん読みたい本を紹介してくれてありがとう。それからリンクもありがとう。私ももらっていきますね。

佐々木丸美さんの本は20年以上前に数冊読みました。
とても印象に残っています。まだお若いのに亡くなったんですね。 (2009.05.23 17:29:27)

かおりさん  
*藤紫*  さん
リンクありがとうございます^^
かおりさんも佐々木さんの本、読まれていたんですね。
そうなんですよー。おなくなりになってしまったんです…
残念です。

私は図書館で本を借りて読んでいるので、新書じゃないものも結構多いんですが
これは過去の芥川賞作品を検索していて面白そうだなと思って読んでみました。
夫婦の気持ちのすれ違いも描かれていて、
ああ、ありがちだなあと思ったりもしました(笑)

(2009.05.24 03:56:10)

Re:『長男の出家』三浦清宏(05/22)  
興味深い本ですね。

先日、良く知った檀家さん親子の宿泊を受けたのですが、お父さんは、息子(次男)を僧侶のしたいとのこと。
小学校3年生ですが、うちのお寺にやって来るのが大好き。
これから、どんどん成長して、反抗期を過ぎたところでどのようになっているのかなと、期待しつつ、期待しすぎないようにとも思っています。 (2009.05.28 22:57:38)

なんぜんたろうさん  
*藤紫*  さん
「修行・再び」「モーニング・ツー」をすっとばして
遡ってのコメント、ありがとうございます(笑)
著者の年譜を見て、「え!実体験だったの!」と驚きました。
あ、本書の中では、妹さんはおひとりですよ、念のため(爆)


親が僧侶にしたいのと、自身が僧侶になりたいと言い出すのとは
ちょっと違うような気も致しますが
本書の中では、語り手である夫が、妻から
「本当にあの子が修行したいって言い出したの?
 本当はあなたが修行したくて、それを息子に押し付けたんじゃないの」
という印象的なシーンがありました。
今のなんぜんさんのお気持ちは、本書のなかの父親の気持ちに近いかもしれませんね。 (2009.05.29 00:09:23)

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