ヒダマリ

３、能力

勢いよくドアを閉めた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。あれがチカラ？」
息も絶え絶えに紘兎が言った。
「それに、水崎が何であんな事してんだよ・・・。」
俺は閉じたドアに寄り掛かった。その時、
カタン
何かが床に落ちた。
「ん？」
そっちに目をやると鉄の塊のような物ガ見えた。ドアノブだった。
「あ・・・。」
三人同時に声を漏らした。
ドアを見るとノブのところがぽっかりと開いていた。ついさっき起こった事を気にしてられなくなった。
「どうしよ・・・これじゃ外に出れないよ・・・。」
仁が嘆いた。
「チカラでどうにか出来ないかな。」
思い付きを口にしてみた。
「じゃ、俺の出番だね。」
紘兎がドアの傍に寄った。
「紘兎、自分のチカラ知ってんの？」
「え？将太、自分のチカラ知らなかったの？」
質問したら、驚かれてしまった。
「じゃあ、紘兎は、何で自分のチカラを知ってんの？」
逆に聞いてみた。
「声が教えてくれたんだよ。将太は聞かなかったの？」
「俺、途中で目が覚めちゃって。」
「将太らしいな。」
紘兎が笑った。
「話を戻すけどさ、紘兎のチカラはなんなの？」
仁が割って入った。紘兎が思い出したように喋りだした。
「分解・・・。かな？」
「分解？」
俺と仁が同時に聞いた。
「原始は普通分子を作って存在してるって中二のとき習ったのは覚えてるよな？」
「うん。」
「俺は、手に触れた部分の分子の結びつきを無くして、原子までばらばらにする。」
紘兎がニッコリ笑った。
「そういえば、仁の能力は何なの？」
しばらく笑っていた紘兎が急に笑うのをやめた。
「俺～？俺はねぇ。図形かな？」
「図形？」
これまたよく分からないチカラだった。
「あー、分かんないよね・・・。ちょっと見てて。」
仁がすっと手を上げた。
ピシ
軽い音が響いた。だけど、それ以上の変化は見られなかった。
「分かんないんだけど・・・。」
「良くここを見て。」
仁が空中を指した。よく見ると、ほとんど透明な立方体があった。
「俺はね、空気を自分の好きな図形に固めることができるんだよ。」
「へぇー。」
真面目に感嘆した。
「じゃあ、そろそろここを出ようかね。」
紘兎がドアに手を押し当てると、そこからドンドン消えていった。最終的に大きな穴が開き、そこから俺達は出た。

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