文の華

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七章~人は集うと醜くなる


七章 人は集うと醜くなる


 そこに俺が滞在したのは約2年ほどだろう。

 そこは、日本での生活から今の生活へ移行するのにちょうど良い町だった。

 今の生活についてはまだ書くべきときではない。
 なぜなら今とこの時とではだいぶ時間差があるから。それはそのときが来たら語ることにしよう。

 とにかく、フランスとこの国は想像通り、求めなければ与えられない国だった。そして、強く求めれば何か与えられる国でもあった。

 他者への関心も日本とは少し違った。

 俺の住んでいた場所からバスとボートで1時間半以内のところにヌーディストの集う島があり、同じくらいの距離のところに同性愛者の集う浜辺もあった。

 俺はどちらも、老人からその存在を聞き、実際に訪ねてみた。

 がっかりした、と言っておこう。

 そう、俺は少なからず、彼等はモラルの側の人間ではない、俺に似たところがあるのではないかという期待があったのだ。
 そういう期待を持ってしまう自分が情けなくも思えたが、ここで重要なことは、彼等はそこで『ヌーディスト』『同性愛者』というモラルを、ルールを、プライドを高らかに掲げていたということだ。

 彼等は社会的に見ればマイノリティに属する。しかし、その島、その浜辺の中に於いて彼等はマジョリティだった。
 マジョリティになった彼等は、普段抑圧されている彼等の『モラル』を必要以上に掲げていた。

 つまり彼等はその中でマイノリティに属する非ヌーディスト、非同性愛者を、彼等のモラルやルールにのっとって抑圧していたということだ。少なくとも俺の目にはそう写った。

 人は集うと醜くなる。

 その場所は俺のそういう感情を高めさせたに過ぎなかった。


 そういういくつかの小さな落胆はあったものの、人に干渉されない南仏での生活は俺を少し変えていたのかもしれない。

 そろそろ、インモラリストを捨てようか。自分を捨てようか。

 たしかにこの時、そういう思いがかなり芽生えていたと思う。

 結局、俺はそうすることが出来なかったといっていいだろう。



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