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2011年04月12日
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カテゴリ: 有事

湯川秀樹(ゆかわ ひでき)
  1907年(明治40年)1月23日 京都生まれ  1981年(昭和56年)9月8日没
  理論物理学者 
  陽子と中性子との間に作用する核力を媒介するものとして中間子の存在を予想
  通称湯川理論で 1949年、 ノーベル物理学賞受賞


「原子と人間」               


人間はまだこの世に生まれていなかった
アミーバもまだ見えなかった
原子はしかし既にそこにあった

ウラン原子もあった
原子はいつできたのか
どこでどうしてできたのか
誰も知らない
兎に角そこには原子があった

原子は絶えず動き回っていた
長い長い時間が経過していった
水素原子と酸素原子がぶつかって水ができた
岩ができた
土ができた
原子が沢山集まって複雑な分子ができた

しまいには人間さえも生れてきた
原子はその間も絶えず活動していた
水の中でも土の中でも
アミーバの中でも
そして人間の身体の中でも

人間の目には見えなかったからである

また長い時間が経過した
人間はゆっくりゆっくりと未開時代から脱却しつつあった
はっきりとした「思想」を持つ人々が現れてきた
ある少数の天才の頭の中に「原子」の姿が浮んだ
人々が原子について想像を逞しくした時代があった
原子の姿が見失われようとする時代もあった
人々が錬金術にうき身をやつす時代もあった
そうこうする中にまた二千年に近い歳月が流れた
「科学者」と呼ばれる人達が次々と登場してきた
原子の姿が急にはっきりしてきた
それがどんなに小さなものであるか
それがどんなに早く動き回っているか
どれだけ違った顔の原子があるか
科学者の答は段々細かくなってきた
彼らは次第に自信を増していった
彼らは断言した
「錬金術は痴人の夢だ
原子は永遠にその姿を変えないものだ
そしてそれは分割できないものだ」

かくて十九世紀も終ろうとしていた
この時科学者は誤りに気付いた
ウラン原子が徐々に壊れつつあることを知ったのだ
人間のいなかった昔から少しづつ壊れつづけていたのだ
壊れたウランからラヂウムができたのだ
崩壊の最後の残骸が鉛となって堆積しているのだ
原子はさらに分割できることを知ったのだ
電子と原子核に再分割できるのだ

やがて二十世紀が訪ずれた
科学者は何度も驚かねばならなかった
何度も反省せねばならなかった
原子の本当の姿は人間の心に描かれていたのとはすっかり違っていた
科学者の努力はしかし無駄ではなかった
「原子とは何か」という問に今度こそ間違いのない答ができるようになった
「原子核は更に分割できるか
それが人間の力でできるか」
これが残された問題であった

この最後の問に対する答は何であったか
「しかり」と科学者が答える時がきた
実験室の片隅で原子核が破壊されただけではなかった
遂に原子爆弾が炸裂したのだ
遂に原子と人間とが直面することになったのだ
巨大な原子力が人間の手に入ったのだ
原子炉の中では新しい原子が絶えず作り出されていた
川の水で始終冷していなければならない程多量の熱が発生していた
人間が近よれば直ぐ死んでしまうほど多量の放射線が発生していた
石炭の代りにウランを燃料とする発電所
もう直にそれができるであろう
錬金術は夢ではなかった
人工ラヂウムは天然ラヂウムを遙かに追越してしまった
原子時代が到来した
人々は輝しい未来を望んだ
人間は遂に原子を征服したのか
いやいやまだ安心はできない
人間が「火」を見つけだしたのは遠い遠い昔である
人間は火をあらゆる方向に駆使してきた
しかし火の危険性は今日でもまだ残っている
火の用心は大切だ
放火犯人が一人もないとはいえない
原子の力はもっと大きい
原子はもっと危険なものだ
原子を征服できたと安心してはならない
人間同志の和解が大切だ
人間自身の向上が必要だ

世界は原子と人間からなる
人間は原子を知った
そこから大きな希望が湧いてきた
そこにはしかし大きな危険もひかえていた
私どもは希望を持とう
そして皆で力をあわせて
危険を避けながら
どこまでも進んでゆこう

                 1947年(昭和22年)に、雑誌『PHP』3・4月号に寄稿したもの
                 1948年(昭和23年)甲文社 刊『原子と人間』より


これを原発推進と取るか反対と取るか、
立場によって、解釈も利用もどちらでもという幅がある。
かの氏の生き様を考えてみようと思う。






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最終更新日  2011年04月12日 16時40分48秒
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Re:原子と人間  湯川秀樹  
てる さん
かつて…
アメリカ大陸の原住民(インディアン)にこんな言い伝えが有ったそうです…
よそから来た人々にインディアンが土地を奪われ…
その土地から掘り出された黄色い土により世界は滅ぶ…
黄色い土とはウランと思われます… (2011年04月12日 16時55分04秒)

Re:原子と人間  湯川秀樹(04/12)  
HANG ZERO  さん
メッセージありがとうございます。
最近、書き込むタイミング、難しくて...
というか...
先日もイベントでそちらの方面の方とご一緒しましたが...
見えない不安...だらけで...
本当にできることを少しずつ積み重ねるしかなくて...ですね。 (2011年04月12日 20時32分40秒)

Re[1]:原子と人間  湯川秀樹(04/12)  
健康mama  さん
てるさん
>かつて…
>アメリカ大陸の原住民(インディアン)にこんな言い伝えが有ったそうです…
>よそから来た人々にインディアンが土地を奪われ…
>その土地から掘り出された黄色い土により世界は滅ぶ…
>黄色い土とはウランと思われます…
-----
自然と共に生きた人たちは自然の声の伝承者.....
私はそう感じています。
(2011年04月12日 22時19分08秒)

Re[1]:原子と人間  湯川秀樹(04/12)  
健康mama  さん
HANG ZEROさん
>メッセージありがとうございます。
>最近、書き込むタイミング、難しくて...
>というか...
>先日もイベントでそちらの方面の方とご一緒しましたが...
>見えない不安...だらけで...
>本当にできることを少しずつ積み重ねるしかなくて...ですね。
-----
いいえ、こちらこそ、こんな日記ばかりで
外の土地に住まう方にはつらすぎるかもしれないと.....
だから、日常にいらっしゃれる方はどうぞ日常を大切になさってください。
こんな思いをするのは福島県民だけで沢山です。

ただ、時折、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ......
その日常を守ることに向きあってくださいな。 (2011年04月12日 22時27分48秒)

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