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死ぬということ。

死ぬということ。


時々、想像することがある。
例えば車に乗っている時、このままハンドルを左に切って
ガードレールにぶつかったら死ぬのだろうな・・。
料理をしてる時、包丁で野菜を切りながら、
これで手首を1回切るだけで死ぬのだろう・・。
・・なんてことを。

死は常に自分の身近にあり、
そして死とはいとも簡単に手に入れることが出来る。
自分自身、思うこと。
自分はいつ死んでもいいと思ってる。
思考回路がないのだから別に悲しくないし、寂しくもない。
だけど、誰かが悲しむのが嫌だ。
自分の為に泣かれるのは耐えられない。
そんなのは死んでも死にきれない。
だからぼくは自分に関わる人が皆死ぬまで生きて
誰にもわからずに一人でひっそりと死ぬのが理想だ。
これが、ぼくの個人的な死について考えること。

皆さんも必ず死について考えたことがあると思います。
そしてそれぞれの理想があると思います。
それについてぼくがどうこう言えるわけないですけど
これだけは皆同じだと思う。
死とはその当事者だけではなく、その人に関わる
全ての人が悲しみに包まれるということ。

先日、ある事件がありました。
無職で一人暮らしの40代男性が自宅のマンションにて死亡―。
ぼくは訳あってその事件の発生から現場検証まで
立ち会わなければならなかったのです。
亡くなられた方とは会った事もなく、話したこともありません。
死因は急性アルコール中毒による浴室内での溺死。
元々慢性の中毒患者だったようで、
入退院を繰り返していたそうです。
死亡推定時刻は発見からおよそ24時間前だそうです。
第一発見者は、社会福祉事務所で亡くなられた方を
担当されていた30代ぐらいのAさん。
ぼくはそのAさんと発生から検証までずっと一緒にいました。
もちろんAさんとも会った事もないし、
それまで話したこともありませんでした。

事件発生から色々お話を聞きました。
ぼくとしても仕事上、聞いておかなければいけない立場でした。
話の途中で時折、Aさんは目に涙を浮かべていました。
入退院を繰り返していた事はこの時聞いたのです。
「・・退院してもよく寂しい時は電話があったんです。
だから、ずっと寂しくなくなるまでお話をしてました。。」
「・・だから私もよくこの部屋まで様子を見に来てたんです。」
「・・2週間前にも様子を見にきました。その時は
最近お酒も飲んでないだって笑ってましたし、
室内も綺麗で片付いていたのですが・・」
そう言って眺めた室内には無数の日本酒のパックと
煙草ECHOの紙くずが散乱していました。

Aさんは3日ぐらい前から電話で連絡がとれなくなり
何か不安に駆られて通報されたそうです。
そしていざ室内に入ってみると、
その不安が的中してしまった訳です。
検証の間、こんな話をしているうちに次々と死因や状況などが
警察の方から教えられるわけです。

そしてある一つの状況説明が、それまで我慢し続けていた
Aさんの悲しみを爆発させてしまったのです。
それは「死亡推定時刻は昨日24時間前です。」という言葉。
それを聞いた瞬間、Aさんは悔しくて苦しむような声で
「・・昨日に来ておけば、、たすかったのに!・・」
と、泣き崩れてしまいました。。
あの時の本当に無念な表情をぼくは忘れることが出来ません。
そして自分がどれだけ無力なのかを思い知りました。
その時に喉まで出掛かった言葉。
(それは違う・・あなたのせいじゃない。あなたは悪くない。
むしろあなたは全力を尽くした)・・と。
・・言えなかった。
そして何も言えず終いだった。
Aさんが負ってしまったこの深い悲しみに
ぼくはなんの光も与えられなかった・・。

やがて検証が終わり、解散となりました。
帰り際、Aさんは言いました。
「本当にご迷惑をお掛けいたしました。そして
ありがとうございました。。」

あれから時が経つにつれ、
ぼくはその事を悔やむ日々を送ってます。
そして死について色んな事を考えました。
一人の死が色んな人に、ましてや何のかかわりも無かった
このぼくにまでこうやって闇をもたらすのです。
それは今まで考えてた以上に、死という事を考えさせました。
そして思い知りました。
死とは単純に一人が死ぬのではなく、
皆に闇をもたらすということを。

今、ご存知の通りイラクは戦争です。
そしてメディアではその話題で持ちきりです。
「~地区で銃撃戦の末、○○名が死亡」
恐らくこんな記事が今後増えてくることでしょうし、
こういう書き方をTVや新聞はするのでしょう。
○○名・・・
とても一行で言い表せる死ではないですよ、コレ。
一体どれだけの人々がこの○○名の死で深い悲しみの闇に
包まれるのでしょうか?
こういう記事でも普通に報道される・・

これが"戦争"なんです。

だけど、だからといってこの事実から逃げたり、
目を背けたりしてはいけない。
ぼくらにはこの"戦争"を見届けなければいけない義務がある。
二度とこのようなことが起こらないように。
そして、次の世代に伝えるために。

2003/3/24(MON) BY U.R.E

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