続きは、球場で。

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F41【序】

F41



     序

 さらり、と軽い音をたてて空色の絹布が外される。
 姿を現したのは一抱えもある箱庭水晶[ガーデンクリスタル]だ。
 驚嘆の表情の相談者を視界の端に捉えながら、占い師はいつもどおりに占いの準備を始めた──

 ここはとある港町。
 多くの住民が住みなれた家を失った地殻変動が近隣の山村にゴールドラッシュをもたらし、その輸送基地として大いに栄えたのは既に過去の話。
 資源の枯渇と共に街は寂れ果て、品のない外観の建築物たちが廃墟と化して虚しい風音を立てている。

 そして、この25階建てのビルディング。

 かつては百貨店やアミューズメント施設、大企業の支店事務所などが入居して、人の出入りが絶えなかった。
 この街のランドマークとして、十二分に機能していた。

 しかし今は地階に食堂街、1、2階に大手スーパーが入居して地域住民の利便性を保っている他は『テナント募集』のポスターも剥がれかけ、最も栄えていた頃アミューズメント施設の一角であった20階の“占い横丁”だけがかつての繁栄の面影を覗かせている。

 繁栄と凋落の両方を短期間に味わうと、人は己の行き先に迷い、立ちすくみ、やがて人智を超えた存在に道標を求めるものだ。
 不景気なこの街で“占い横丁”だけが繁盛しているのは、そのせいだろう。

 無論“占い横丁”はアミューズメントの一つであるから、そこに占い師として勤務する者の大半は親会社の教育プログラムで研修を受けた社員に過ぎない“普通の人”だ。
 が、そこに数名、本当に人智を超えた目を持つ者が混ざっている。

 占いに使うオイルランプの準備を終え、相談者の方にゆったりと向き直った占い師の三景(みかげ)も、その数名のうちの一人だ。

 その風貌は占い師というよりは、エスニック雑貨の店の店員に近い。
 浅黒い肌にエキゾチックなプリントのチュニックを重ね着して、麻のターバンで漆黒の髪をまとめている。無駄な装飾はない。

 向き合っているのが悩みを抱えた迷える仔羊でなければ、占い師の両腕が女性にしてはごつごつと筋肉質なのに気づくだろう。
 この両腕の筋肉は、学生時代に地質学調査のアルバイト(時にボランティア)をしていた頃についたのだと、親友に指摘される度に語っている。

 それが真実である証拠が、“商売道具”である箱庭水晶なのだとも…



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