「黄金旅風」



「平」の名をもつ3人の男が命を懸けて守り抜いたもの。

2004年4月26日
江戸幕府ができて20余年の江戸時代開明期の物語。
キリシタン迫害と航海の基地として独自の庶民の気風が生まれている
長崎が舞台の小説です。
主人公は3人の男性。いずれも幼少の頃、キリスト教の信者になったのですが、おとなになってからは、特にキリスト教にこだわっていない人たち。
平尾才介、末次平左衛門、そして平田真三郎の3人。3人とも同じキリスト教の小学校に通うが様々な事情でドロップアウトし、後にそれぞれの人生において、偉業を成し遂げる。3人に共通していることは、周囲の人への愛情、これである。日本や世界の平和を言うより前に、自分と同じ町内に住んでいる人の幸せのために行動できる人なのだ。それがなんとも心地よい。特に平左衛門は、大金持ちの海商でありながら、いつも長崎庶民に暖かい眼差しを注げる人物で、最後は、絶対の権力者である長崎奉行に命をかけた戦いを挑み、諸外国と長崎が戦となるのを防ぎ、長崎の民が苦労にあえぐのを未然に防ぐ。才介は、火消組の惣頭として、長崎の人が業火に苦しめられるのを身体を張って防ぐ。そして、時代遅れの蜜蝋利用にこだわる鋳物師の真三郎は、愛する幼女を失って身もだえしている母親を見て、なんとか心の平静を取り戻させればと、卓越した腕前で童そっくりの銅像を作って、永遠の心の平静さをさずける。

飯島氏が、意図したのかどうかはわからないが、この3人の名前の中には「平」の一字が組み込まれている。彼は「平穏」「平和」「平静」などを表したかったのではないか、と思っている。

司馬遼太郎の「坂の上の雲」にも似た読後感。
男としてやるべきこと、男だからこそ持てる勇気の役立て方、自分らしさを活かして、世の中に貢献する必要性などを学ばせてもらった気がする。


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