タフルの日記(^_^)

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堕天使の涙


ある夜、仮装舞踏会で有名なミュザールの夜会において、呼び物のアトラクション“地獄のルシファー”の幕が開く。地獄の妖しげな森を思わせる舞台に現れた主役のダンサーは、アダムとイヴの前に現れた舵となって人間を誘惑し、神への復讐を果たそうとする堕天使ルシファーの悪の魅力を冷たく激しく踊る……。この世のものとは思えない魔力に満ちた踊りに魅了された観客からは、彼に対する賞賛の声が上がる。やがて観客達の前に姿を現したそのダンサーは、新進気鋭の振付家ジャン=ポールと出会い、彼に語りかける「私の名はルシファー。地獄から君を訪ねてやって来た」と……。周りの誰にも聞こえないその声を聞き、驚きを隠せないジャン=ポールに、彼は近いうちに自分の館を訪ねて欲しいと言い残し姿を消すのだった。
その後、ジャン=ポールは、ボードレールの詩“悪の華”に振り付けるという企画が、内容が不道徳すぎるという理由で製作中止になったことを聞く。納得出来ないと激昴する彼の前に、中止するよう圧力をかけたルブラン公爵夫妻が現れる。ルブラン公爵の妻ジュスティーヌはジャン=ポールの母であり、公爵は彼の義父にあたる人物であった。しかし、ジュスティーヌは、息子の作品を芸術に対する冒涜だと貶し、決して認めようとはしなかった。互いに憎み合い、傷つけあうジュスティーヌとジャン=ポール。傷心のジャン=ポールの脳裏に、ルシファーの誘いが浮かぶ。
翌日の夕暮れ、ルシファーの館を訪ねたジャン=ポールは、この世には現実に存在しないはずの青い薔薇ブルーローズが一面に咲き乱れる庭園へと案内される。そこで、ジャン=ポールは、ルシファーから、“地獄の舞踏会”というタイトルの作品を作って欲しいとの依頼を受けるのだった。私の踊る姿に人々は魅せられ、崇め称える…神を呪う人間達がひたすら地獄で踊り続ける“地獄の舞踏会”こそ、私の神への復讐だと語り始めるルシファー。次第に、ジャン=ポールは、ルシファーの魅力に囚われていく……。
やがて、“地獄の舞踏会”の製作が始まり、ルシファーが踊り子達の中からヒロインを決めることとなる。ジャン=ポール作品の後援者であるデュノワ公爵の目にとまった踊り子のイヴェットに近づいたルシファーは、彼女をヒロインに選ぶ。イヴェットの恋人であるピアニストのセバスチャンは、イヴェットがパトロンの世話になることに反対するが、ルシファーはこんなチャンスは二度とないと、イヴェットを誘惑するのだった。一方、音楽を担当するエドモンの創った曲が気に入らず、苛立つジャン=ポールは、彼に書き直しを命じる。やがて、エドモンの弟子マルセルが卓越した才能を持っていることを知ることとなったジャン=ポールは、早速マルセルに曲を書かせることにするが、エドモンに対してはその曲を自分の名前で発表すればいいと告げる。盗作という卑怯な行為を躊躇するエドモン。しかし、そんな彼に近づいたルシファーは、マルセルの才能への嫉妬心をあおり、悪の心を挑発する。神に背き、悪魔に心を捧げても、望むものを手に入れようとし始めるエドモンとイヴェット。欲望と醜さに満ちたこの人間の世界こそが地獄の舞踏会……これが神の愛した人間の真実の姿だとルシファーはあざ笑う。
神によって天を追われ、深い孤独を抱えながら永遠の闇に生きるルシファー。パリの街を彷徨う彼は下町にある小さな教会へと辿り着くが、そこへ、教会の外へ倒れていたという娼婦が運びこまれてくる。目が不自由なその女の手首の自殺の傷跡を目にしたルシファーは、何故死のうとしたのかと語りかける。そして、“悪魔の女”リリスという名を親につけられたその女の持つ孤独に、自らの心の闇に似た悲しみを感じる。
社交界の重鎮達を次々と操り、虜にしていくルシファー。その為ジャン=ポール作品に批判的だった人々も手のひらを返したような態度をとるようになっていく。ジャン=ポールから、“地獄の舞踏会”を創る本当の目的は何なのかと問いかけられたルシファーは、何故神がお前達人間を創ったのかを知りたいと答える。それを聞いたジャン=ポールは、天使になりたいのに悪魔になるしかない、清らかな魂も穢れずにはいられない、それこそが人間であると告げ、生き別れになった双子の妹について語り始める……。やがて、天上界を舞う天子と称されるバレリーナであったという彼の妹が、教会で出会ったリリスであると気付いたルシファーは、彼女の元へと向かう。
輝かしい地位から転落し、最早2、3日の命となったリリスに向かい、ルシファーは、ただ悲しみだけを与えた神を呪わないのかと問いかける。しかしリリスは、こんな私でも神に愛されると信じたい、私は全てを受け入れると答えるのだった。
苦しみだけを抱え生きるのが人間なのか……。救いを求めながら、懸命に生きる人々と触れ合う中で、最後に彼が見出した人間の真実の姿とは……。

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