*歌*

















便利 ~切ない恋の物語 (違~















ミッチャンは小学5年生。


5年生になっていきなりその頭角を現し、番長にまでのぼりつめた。


番長といっても小学生、可愛いもんだ。


しかも「19」と「嵐」と「ポルノグラフィティ」が大好きな普通の女の子だ。


大好きなんだ。


異常なほどに大好きで、困るのは周りにいる取り巻きたちさ。


19も嵐もポルノグラフィティも全てを知っていなくてはいけない。


いつ、指名されるかわからないからだ。


指名されたやつは、メンバーの名前を言ったり、決められた曲を間違えずに歌わなければいけない。


毎日が通知表をもらうとき並みの緊張感だ。


しかもその時はいきなりやってくる。


よくある連れションの場面。


トイレからでるとミッチャンと目が合う。


「バナナ、アポロ。」


「・・・・ここで?」


「ん?歩きながらでいいけど。」


私は歩きながら歌いだす。


「・・・僕らが生まれてくるずっとずっと前にはもぅアポロ11号は月に行ったっていうのに・・・・・」


しかも下手くそだったら指導が入る。


ミッチャンはかなり厳しく、授業にくいこんでもちゃんと出来るまで終わらない。


よくそれで先生に怒られたものだ。





ちょうどその頃、担任が病気で入院していて新しい臨時の先生がきていた。


愛媛県から来た先生だ。


若い男の先生で、いつもあみだくじの歌を歌っている。


ミッチャンはその先生が気に入らなかったらしく、どこで調べたのか先生の家にイタズラ電話をしまくっていた。


これまた可愛らしい反抗である。


しかもミッチャンは変わっていて、イタ電をしながらわざと誰がかけているかわかるようにバックで嵐のA・RA・SHIを歌わせた。


電話をかける場所は必ずコハマンの家で、A・RA・SHIを歌うのはバレリーナと決まっていた。


私はその場にいたりいなかったりだ。


コハマンの家がちょうど私の通っていた算盤塾の裏側だったので、私は算盤のある日だけ顔を出した。





ミッチャンは、メンバーでは嵐が、歌では19が特に好きだった。


嵐は全員のフルネームを言わされ、19はミッチャンが歌っている最中にいきなり続きをふられたりするときもあった。


一番きついのは、326の詩の朗読とミッチャンが鼻歌で歌っていた部分の続きを歌うことだった。


ミッチャンは326の絵の下敷きを5,6枚持っていて、それを時々朗読させた。


心をこめないとダメだ。


見せかけでなく、詩に入り込まなきゃダメなんだ。


あと、鼻歌だが、常にミッチャンの鼻歌を聞いていなくちゃいけない。


ミッチャンが急に「はぃ。」と言って歌う人を指名してくる。


当てられた人は、その続きを声に出して歌わなければならないのだ。


何番を歌っていたか分からないとかは無しだ。





そんな厳しいミッチャンルール*歌*を完全にマスターしなければ、


楽しい小学校生活、ぃや小学校5年生生活を何事も無く過ごすことはできないのだ。





この際、ミッチャンルールがある時点で何事も無く過ごすのは不可能だというのは見逃してくれ。
















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