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chiro128
知っても得しない自転車の話
ペダルはなく、足で地面を蹴って進む、
本当に楽なのかどうかよく判らない機械だ。これは「ドライジーネ」と名付けられた。まあ、勢いが付けば、両足を離すことも出来るから、少しは楽なのかもしれない。この機械をイギリスでは「ダンディホース」と呼んだと言う。どうダンディなのか判らないけれど、当時はそう見えたんだろう。
その後、ペダルを付けたり、様々な発明が続く。例えば、大きな車輪の上に人が載っている絵や写真がある。あれも伊達に大きい訳じゃない。当時、つまり19世紀後半、道は馬車のためにあったようなもので、ぬかるみや轍ばかりだった。当然、走りにくい。それではただペダルを踏んでも動かしにくい。考えた挙げ句の結論が大車輪だったのだ。車輪が大きければ段差は越えられるし、一踏みで沢山進む。それに車輪が大きい方が乗り心地はいい。まだ車輪にタイヤがなかった時代の話だ。
もちろん乗り心地の良さだけではない。あの優雅なデザインも人気を集めた大きな要因だったろう。当時のイギリスにはバイシクル・クラブなるものもあったそうだ。いい大人が集まってはみんなで自転車に乗って遊ぶのだ。これも社交の一部だったそうだから、そんなに気軽なもんじゃなかったかもしれない。でもなかなかいい時代だと後からは思う。
更にチェーンと歯車を使うようになる。車輪が小さくても沢山進む自転車とか様々な暴走が続く。そのとりあえずの終止符を打ったのがローバー社のその名も「安全自転車」。チェーンと歯車で動力を後輪に送り、車輪は前後とも同じ大きさにした。更に前輪にはブレーキ(それまでは前輪駆動でしかも大車輪だから重心が高い。ブレーキは付けても使う訳にいかなかったのだ。急に止まったら、自転車は倒れるから)が付いている。これで自転車の基本的な形が完成した。この辺からよく耳にする名前が登場する。
続いての発明は空気入りのタイヤ。これはアイルランドに住んでいた獣医さんが考え出した。その名はジョン・ボイド・ダンロップ。彼は石畳の上をいつも苦労しながら自転車で走る息子の姿を見ながら、いつも見慣れている動物の腸を付けたらいいな、と思った。で、結局はゴムのタイヤを付けた訳だが、空気入りのタイヤを作り、抜け目なく一挙に世界中に売り出した。そしてそのすぐ後にフランスのエドワード・ミシュランが取り外し可能なタイヤを考えた。という訳で、この辺で妙に納得して嬉しい気がする。19世紀も終わりの話だ。
200年近い時間の中で自転車は進化を続けてきた。環境問題の中でひとつの答として自転車は相変わらず注目されている。デンマークやオランダ、ドイツではそうした試みが行われている。
しかし自転車っていいな、と思うのはそんな理屈ではないと思う。何よりもそれは人間の力だけで動く(そうじゃないのもありますが)機械だからだ。そんな機械は滅多にない。この機械には道具としての存在感がしっかりとある。
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