Salon de Ciel

Salon de Ciel

バイバイ

映画館から出て、

地下鉄の駅へ。


地下への階段を下りて、キップを買う。



じゃあ、もう行くね。

今日、すごく楽しかった。どうもありがとう。


そういうと、彼は私をぎゅっと抱きしめた。


You really have to go?


うん、明日も仕事あるしね。


ラッシュアワーを過ぎてもまだ沢山の人が行きかう駅で、


彼は自分の着ているジャケットで私を包んで

更に強く抱きしめた。


体全体から、行かないで、って言うのが

伝わった。


おい、Ciel!

あんた、この人と今日一日デートしただけなんだから!

このまま遅くまで一緒に、いられないでしょ!

もう10時過ぎてるんだから、終電だって近づいてるんだよ!



頭のなかで、私の理性はまだしっかりと

私をしかって、現実に引き戻した。


そうだった。

あぶねー。

家に帰らなきゃ。


Ok, Bye. S!

出来るだけの可愛らしい笑顔でそう言っても


何度も何度も

体は離れても手だけは離してくれなくて

引き戻されて、ハグとキスを繰り返した。


手をひっぱられて彼の胸の中に戻るたび

コロンのいいにおいがして、溶けそうだった。



最後のキスをして、もう、本当に行くからね

と言って別れてから

ちょうど来た終電に飛び乗って


私は、悲しいというよりも、むしろ

長い緊張から解けて、ホッとしていた。笑


でも、彼としたキスの感触は

忘れられなかった。



「あの時、君が去っていく後ろ姿を、

僕はずっと見てたんだよ。

君は一度も振り返らなかったけど。

I was standing there so long.

I felt like it was forever.」



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