愛し愛されて生きるのさ。

愛し愛されて生きるのさ。

その2

○『世にも奇妙な物語 女優』(CX・1991)
 『世にも奇妙な物語』は当時斬新な企画のドラマだった。まず毎週毎週1時間の枠に3話詰め込まれたオムニバス形式であるのが新しかった。そして内容もホラー・SF・感動モノ・不条理モノと幅広く実験的だったのも子供心に新鮮に映った。またストーリーテラーのタモリが『笑っていいとも!』などとは180度違う不気味な雰囲気を醸し出していたのも効果的だった。

私の家族はみな極端なホラー嫌いのため、この番組のオープニングタイトルが流れるだけで拒否反応を示した。別に必ずしもホラーな内容でもないのに、我が家では『世にも奇妙な物語』はご法度だった。そのため私は昼の再放送でしか観ることができない隠れキリシタン状態であった。

そんな『世にも奇妙な物語』のなかでも、好きだった話がこの『女優』である。出演はジュディ・オングと長塚京三。

人気女優が山奥のクリニックを訪れる。彼女は「役柄と本当の自分の区別がつかなくなる」という事態に悩んでいた。そして今殺人者の役を演じていて、いつ本当に人を殺してしまうかわからないと告白する。その作品のタイトルは「殺されたカウンセラー」であり、それを聞いた医者は一瞬ひるむ。カウンセリングの一環で台本を読み合わせる女優と医者。そのうち女優は役柄が憑依し、医者にナイフを振り上げる。
そこでカットの声がかかる。実はこれは役と自分の区別がつかなくなる女優が主役のドラマ「女優」の収録だったのだ。
しかしそれは実は、自分を女優だと思い込んでいる主婦を治療する実験だったのだ。結果を満足そうに見つめる医者。
医者は控え室に戻り、満足そうにほくそえむ。その姿を映している監視カメラ。その映像を見つめる女優。実はこれは自分を医者だと思い込んでいるサラリーマンを治療する実験であり、女優だと思われていながら実は主婦だった女は実はカウンセラーだったのである…。
アシスタントは呟く。「先生の演技は見事でした。先生は実は女優なんじゃないですか?」と。女は言う。「私は…」
そこで物語は終わる。

結局女は女優だったのか?カウンセラーだったのか?主婦だったのか?何が本当で何が虚構なのかわからない、どんでん返しに次ぐどんでん返しが繰り返される。約15分の間で目まぐるしくストーリーが展開する、『世にも奇妙な物語』の中でも傑作中の傑作ではないだろうか。

人が死ぬわけでもないのに、観るものに妙な不安とショックを与える怖い話である。最後まで目が離せない。

出演:ジュディ・オング・長塚京三

○『私立探偵 濱マイク』(YTV・2002)

元々映画でのシリーズだった「濱マイク」をテレビの連続ドラマに移植。永瀬正敏以外のキャストを一新し、毎回異なる監督を起用し、全編フィルムで撮影するといった意欲作だったが、作家性が強すぎるせいか一般視聴者には受け入れられず、視聴率は振るわなかった。

毎回違う監督であるから出来上がりにムラがあるのは仕方ないっちゃ仕方ない。その中でも印象に残ったのは第6話の青山真治監督作品「名前のない森」。この回は村上淳や中島美嘉といったレギュラーメンバーはほとんど出演しない。マイクが金持ちの依頼を受けて、山奥にある宗教とも自己啓発セミナーともつかぬ団体に潜入する話である。
そこで「先生」と呼ばれカリスマ的なオーラを醸し出しているのが鈴木京香。いったい何を考えているのか、何がしたいのかさっぱりわからない女性である。穏やかな口調も微笑みもとても不気味である。鈴木京香がこんなに不気味に見えたドラマは今までなかった。

結局マイクが見たものは一体なんだったのか。このドラマの12回の中でも、ホラー的な要素が漂う異色作である。

出演:永瀬正敏・鈴木京香・大塚寧々・菊地百合子・津田寛治・原田芳雄

○『恋を何年休んでますか』(TBS・2001)

これは明らかに『金妻』を意識したドラマではないかと思われる。放送していたのも金曜日だったし。
新興住宅地を舞台に、平凡な主婦がクラクラとよろめいちゃう話である。これをロマンポルノでやると『団地妻』になってしまうが、同じような題材でもキョンキョンや黒木瞳だと清潔感すら漂ってしまう。やってることは同じなのに。

このドラマは明らかに女性向けであるが、なぜだか全編観てしまった。しかしというかやはりというか、主婦の気持ちはあまりわからない。それ以前に、小泉今日子や黒木瞳や飯島直子に「恋を何年休んでますか」なんて言われたって説得力がない。あんな主婦なかなかお目にかかれない。リアルにやるなら渡辺えり子や柴田理恵あたりが本物の主婦ってもんである。

そもそも朝からオレンジジュースが出る家なんて信用できない。ドラマの朝食風景を観ていていつも疑問なのだが、どうしてちゃんと着替えてから朝食を食べるんだろう。普通の家庭って汚れてもいいように寝巻きのまま朝食を食べるものじゃないか。「ほらほら、早く食べないと遅刻するわよ」なんて言葉も、トーストに目玉焼きも私にとってはまったくリアリティがない。私のリアルな朝食風景というのは、パジャマのままで朝食は米と漬物だけ。母親が投げかける言葉は「チンタラ喰ってるから片付かない」である。

現実に目を向けるとその程度である。自分の母親がどっかの男に惚れてしまうなんて気持ち悪くて想像したくもない。やっぱり不倫って問題である。

余談だが、劇中で仲村トオルが不倫する相手は「絶対森尾由美だ」と思っていたら矢田亜希子だった。森尾由美のほうがリアルに「不倫」って感じなんだけどなぁ。

出演:小泉今日子・飯島直子・黒木瞳・仲村トオル・宮沢和史・矢田亜希子・伊藤英明・山口祐一郎・森尾由美

○『恋愛偏差値』(CX・2002)

このドラマは全12回のうち、4話ずつの3部構成になっているのが特徴だった。ドラマを12回続けて見るのってけっこう根気がいるもの。その点、4話というのは気軽に観れて「なかなかうまいこと考えたもんだ」と思った。

1部が中谷美紀主演、2部が常盤貴子主演、3部が財前直見と柴咲コウのダブル主演という形であった。私は常盤貴子が嫌いなので、2部は観なかった。そういう、視聴者がニーズに合わせた見方するためにもいい方式だった。

印象に残っているのは1部の中谷美紀主演『燃えつきるまで』である。『恋愛偏差値』というタイトルからも、軽い恋愛ドラマを想像していた。しかし蓋を開けてみれば、これでもかとばかりに性根が腐った人間のオンパレードだった。
特に、先輩への嫉妬からあの手この手を使って追い詰めていく菊川怜がいやらしかった。菊川怜って醸し出す雰囲気が性格悪そうだから、この役はハマリ役だったと言えよう。
フラれた男の家に忍び込んで、ベッドの下で目を見開いて待っているオセロの中島知子もインパクトがあった。それが原因で逮捕されてしまったという話をした後の「笑えるやろ?」というセリフが最高だった。アンタがやるからマジで笑えるよまったく。
中谷美紀もよだれをダラダラ垂らしながら頑張っていた。女って誰でもこういう脆い一面を持ち合わせているのかと怖くなってしまった。恋愛するのが怖くなるドラマである。

3部の『彼女の嫌いな彼女』は打って変わって、軽いタッチのドラマだった。こちらは恋愛というより、「女同士の友情」がクローズアップされていた。明らかに若手の柴咲コウがベテランの財前直見を食っていた。

恋愛をモチーフにしながらも、人間の裏の部分を描いた面白いドラマであった。

出演:『燃えつきるまで』中谷美紀・岡田准一・篠原涼子・菊川怜・中島知子『彼女の嫌いな彼女』財前直見・柴咲コウ・柳葉敏郎・柏原崇

○『ギフト』(CX・1997)

キムタクはどんな役をやってもキムタクである。役名なんか思い出せない、ただただキムタクである。

そんなキムタクドラマの中でも、1番「キムタクらしさ」がハマっていたのがこの『ギフト』である。一筋縄ではいかないストーリーが面白く、脇を固める役者も渋くて個性的だった。

「キムタク臭さ」が鼻につくドラマは、他の出演者があまりクセのないプレーンな役者であるがために「キムタク臭さ」が際立ってしまう。しかしこの『ギフト』は室井滋・小林聡美といったレギュラー陣のほかに、桃井かおり・岸部一徳・宇崎竜童・藤谷美和子などといった一癖も二癖もあるゲスト陣の芝居によって、「キムタク臭さ」が中和されていた。

ストーリーもしっかりしていて、伏線の張り方も絶妙だった。役者たちのコミカルな小芝居も見逃せない。

出演:木村拓哉・室井滋・篠原涼子・忌野清志郎・今井雅之・小林聡美・倍賞美津子ほか

○『昨日の敵は今日の友』(NHK・2000)

このドラマはNHKの「水曜ドラマの花束」という枠で放送されていた6話連続のドラマである。

同じ会社で何かと対立することが多い2人のキャリアウーマンが、結婚によって偶然にも家族になってしまうという話。

仕事の上では対立関係だが、ともに生活を歩んでいく上で友情が芽生えていく様子にほのぼのした。役者もベテランばかりで安心して観ていられる。どうしてこんな地味なドラマを観ていたかというと、原田美枝子のファンだからである。

NHKのドラマというと何となくケレン味がなく、敬遠してしまいがちだったのだが、このドラマは軽妙なタッチで心地よく観ることができた。特におじいちゃん役の大滝秀治と、浅野ゆう子の母親役の白川由美がなんとなくイイ感じになるところが微笑ましかった。

出演:浅野ゆう子・原田美枝子・内野聖陽・山口祐一郎・吉野紗香・白川由美・大滝秀治

○『きらきらひかる』(CX・1998)

郷田マモラの同名コミックを大幅にアレンジしてドラマ化。死者と向き合うことを仕事としている監察医たちの姿を描いた異色ドラマ。ほぼ1話完結で構成されていて、毎回事件が起こり毎回死体を解剖する。しかしこのドラマは決して謎解きサスペンスではなく、「どうしてこの人は死んでしまったのか」というプロセスを丁寧に描いている。脚本の井上由美子の決して暗くはならずに、でも一筋縄ではいかないストーリーテリング能力は凄い。

「死人に口なし」とはよく言ったものだが、監察医の仕事は死体に残された様々な痕跡から事実を割り出していく。たとえば痣にしても形や残された場所から、事実を割り出せるらしい。そんな監察医の仕事っぷりは興味深かった。そして死体によって暴かれた事実は、毎回切ないものだった。

主演の新米監察医役の深津絵里を始め、役者がみんな良かった。キャラクターイメージのバランスが上手くとれていて、みな役にすんなり溶け込んでいた。役者たちのコミカルな丁々発止が小気味よくて面白かった。

最終回近くの3回ほどは阪神大震災が絡んだストーリー。篠原涼子が子供と離れ離れになった母親を熱演。ラストで明かされる娘の事実に観ているこちら側まで号泣。あまりにも辛くて悲しい結末だった。でもどんなに理不尽な結末が待っていようと、決して後味が悪くないのがこのドラマの魅力であった。

出演:深津絵里・鈴木京香・松雪泰子・小林聡美・柳葉敏郎・篠原涼子ほか

○『素晴らしきかな人生』(CX・1993)

実はこのドラマに関しては細かいことは覚えていないが、浅野温子と織田裕二がくんずほずれつやっていた気がする。あとこのドラマでともさかりえを知った。

このドラマで最も印象的なのは富田靖子である。彼女は織田裕二の恋人役なのだが、織田裕二の心が離れていくにつれて徐々に正気を失ってしまい、踏み切りに飛び込んで自殺するという破滅的な最期を迎える。

とにかく富田靖子が怖かった。電話の時報にひたすらノロケ話をするシーンのイっちゃってる目が怖かった。

富田靖子と言えば清純派女優だったのに、このドラマあたりからちょっと狂気を帯びた役が増えた。彼女にとってはこのドラマが布石となって『昔の男』へと続くわけである。

出演:浅野温子・織田裕二・富田靖子・ともさかりえ・田中健・七瀬なつみ・佐藤浩市

○『ショムニ』(CX・1998)

この『ショムニ』が始まる前に、何かの雑誌で出演者は知っていた。私的には豪華キャストなんだが、どこか「再起にかける芸能人」みたいで逆に楽しみだった。それが蓋を開けてみれば社会現象になるまでの大ヒットで続編まで制作。世の中、どう転ぶかわからないものである。ちなみに出演者たちが会社内を闊歩するこのドラマのタイトルバックは近年まれに見るカッコよさだった。

やっぱりこのシリーズも第1シリーズが一番面白かった。最初のうちは主人公の坪井千夏の説教もどこか納得させられるものではあったが、続編になるとほとんどこじつけの正義で「いちゃもん」みたいであった。「ありえなさ」を売りにしているドラマではあるが、あまりにも説得力に欠けると観る気を失くす。ということで続編はあまり見ていない。

第1シリーズの第1話で気弱な女子社員(京野ことみ)がトイレで泣いている。泣き止んで扉を開けると坪井千夏(江角マキコ)が。そこで千夏が言った一言が私のツボだった。

「むせび泣くほどの快便?」

このセリフで「ああ、来週も観よう」と思ったほどである。

出演:江角マキコ・京野ことみ・宝生舞・櫻井淳子・戸田恵子・高橋由美子・戸田菜穂・石黒賢・森本レオ

○『ケイゾク』(TBS・1999)

演出家・堤幸彦が一躍脚光を浴びたドラマである。
玄人受けが良く、ジワジワと人気を集め映画化まで果たした。

始まった当初は1話完結のコミカルなミステリードラマであった。
しかし回を追うにつれ、登場人物があれこれ複雑にこんがらがるスリラーになっていた。

脚本は西荻弓絵。ホームドラマを得意とする彼女が、このような作風のドラマを描けるなんて正直意外だった。
トリック自体はハッキリ言ってチンケなものが多いが、要所要所に小ネタを散りばめ、伏線を張るその手法はなかなかのもの。
適度に抑えた笑いが、わかりやすいことをよしとする昨今のドラマに比べてベタついておらず、心地よかった。

中谷美紀と渡部篤郎の微妙な関係性も秀逸。特に「頭くせえよ」が。

出演:中谷美紀・渡部篤郎・鈴木紗理奈・徳井優・長江英和・西尾まり・高木将大・野口五郎・竜雷太

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