Strike while the iron is hot!

そして始まる物語

  そして始まる物語







 時計の秒針の音が、何よりも嫌い。

 頭の中がぐるぐるする。例えば、規則的に水道の蛇口から水がたれる音とか、聞いているだけでアセチルコリンの分泌が鈍くなってしまいそうだ。

 それと一緒で、規則的な音は逆に人間の感覚を刺激する。
 秒針の音を聞いていると、秒刻みがうまくなりそうだけど、そんなはずない。その音と比較できるペースの音がリズムとならないと、直感での秒刻みは、実際難しいものだったりする。

 とは言っても、今は秒針の音しか感じない。
 落ち着かない。
 眠れない。
 でも何か眠い・・・気がする。

 下のベッドを見ると、腹ばいになって携帯をいじっている双子の弟がいる。名前は、柚子涙。
 私と同様で、眠れないのだろう。

 時計に設置されている温度計を見ると、摂氏三十二度。熱帯夜だ。

「柚子、起きてる?」

 私の声に、上を向いた。

「起きててわりぃかよ。・・・・・何だ?」

「いやぁ、何か、眠れないのは一緒だねぇ」

「エアコンつけろ馬鹿」

「違う違う。秒針が怖くって」

「小学校低学年かお前は」

「えへ」

 柚子は携帯を閉じて、エアコンのリモコンを取った。
 涼風が、火照った体を撫ぜる。

「タイマーかけてよ」

「判ってるよ! っせぇなぁ」

 リモコンを、私に投げつけた。それをキャッチして、温度を上げる。
 本当は、夜につけてはいけない。
 窓を開けるか扇風機かにしろ、と、父に言われている。
 もしも父にばれたら、説教だろう。でも、うん、今日と明日は大丈夫。なんと言っても、出張中だ。



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