大西睦子(以下、大西):そもそもの不妊の定義とは何でしょう? 大須賀智子先生(以下、大須賀):避妊をせず、夫婦生活(セックス)を営み、一定期間を過ぎても妊娠しない場合を指します。この「一定期間」が年齢によって異なるので、難しいのですが、WHOでは2年間、米国の不妊学会では1年間としています。日本でも一般的には1年間と考えられています。 大西:7組に1組のカップルが不妊って本当ですか? 大須賀:日本での正確なデータはないようですが、米国の大規模な調査では、不妊症の頻度は夫婦全体の6.0~8.5%という報告があります(※1、2)。年齢や国によって異なりますが、世界中の報告をまとめたものでは約9%と推定されているようです(※3)。 ■参考文献 ※1、2)Infertility and Impaired Fecundity in the United States, 1982-2010: Data From the National Survey of Family Growth Natl Health Stat Report. 2013;57:1.(関連サイト) ※3)日本生殖医学会「一般のみなさまへ」 大西:日本の正確なデータはないとしても、不妊は増えている印象があります。その理由は何でしょうか? また、女性が働くということと、男性の晩婚化と、高齢出産という現状に関係していると思われますか? 秋好順子先生(以下、秋好):不妊の原因はさまざまですが、です。 大須賀:私も同じ意見です。昨今問題となっていますし、自身も経験したことですが、女性がキャリアを持って働こうとすると、どうしても20代は仕事中心になってしまいます。 一方、女性の妊娠・分娩の適齢期は、やはり卵子の加齢問題、妊娠合併症の問題などを考えると、20歳代からおそくとも35歳くらいと考えられます。 この2つの両方を実現する=仕事もして結婚・妊娠もとなると、30~35歳に結婚・妊娠を“うまくこなさなければならない”ということになるわけですが、実際には、30歳を超えると、女性が自然に妊娠する可能性は少しずつ低下し、35歳から急激に下がると考えられているわけです。しかも、望む人すべてがこの5年間に子どもを授かることができるわけではありません。 ●卵子は老化し、精子を作る機能は低下していく 秋好:ところが、産婦人科では常識である「年齢とともに妊娠しづらくなる」という事実は、一般の市民には驚くほど浸透していません。 男女ともに、いくつになっても生める、と信じている人がいます。 医学が進歩し、40歳を超えて出産をした事例が報道されたりしますが、妊娠に至るまでの不妊治療や、医学的に特異であることは報道されないことも多く、視聴者側は高齢出産は可能だ! と受け取ってしまうのです。 また学校の性教育でも避妊と性感染症は教えますが、卵子の老化という問題はこれまでほとんど教えられてこなかった経緯があり、「知らなかった」と衝撃を受ける人を生みだしているのだと思います。 また高齢での出産は流早産の増加、異常分娩や分娩時出血多量など、さまざまなリスクが上昇しますが、そうした情報もあまり浸透していない印象があります。 大須賀: 男性の場合も、加齢によって、精子を作る機能は少しずつ低下します。また、年齢とともにリスクの増加する、糖尿病や動脈硬化などの合併症も、妊孕能(にんようのう:赤ちゃんを作る力)に影響するといわれています。