文在寅韓国大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が4月27日に続いて5月26日にも会談した。6月12日にシンガポールで行われることが予定されていた金正恩委員長との会談をドナルド・トランプ米大統領は一度キャンセルする意思を示していたが、26日になって前言を取り消し、実施する方向で動き始めたようだ。
しかし、アメリカ政府内では朝鮮との話し合いに強く反対し、軍事的な恫喝を強化すべきだと主張している人たちがいる。例えばマイク・ペンス副大統領やジョン・ボルトン国家安全保障補佐官だ。
それに対し、朝鮮を訪問するなどしているのはマイク・ポンペオ国務長官。昨年4月6日、CIA長官だったポンペオは分析部門の評価に基づき、致死性の毒ガスが環境中に放出された事件にバシャール・アル・アサド大統領は責任がなさそうだとトランプ大統領に説明していた。( ココ や ココ )その説明の直前、4月末にポンペオは妻とソウルを訪問、情報機関や軍の人間と協議している。その4日後に朝鮮は金正恩に対する暗殺未遂事件がったと発表している。
シンガポールで話し合いが実施されるかどうかは不透明だが、アメリカにとって朝鮮半島問題の本質はあくまでも中国との関係だろう。中国を属国化するか、侵略して略奪するために利用している。この関係は19世紀から変化していない。日本も朝鮮と立場は似ていて、アメリカが中国を侵略する道具だ。
朝鮮半島の融和ムードはロシアや中国と連携した韓国政府が作り出したと言えるだろうが、もし朝鮮を軍事的な緊張を高める道具に使えないとなれば、アメリカは別の火種を作り出すだろう。すでに東シナ海、南シナ海、台湾周辺などでそうした動きが見られる。
朝鮮半島の南北をドイツの東西になぞらえる人もいるが、ドイツの統一は大きな問題を引き起こしている。1990年2月にアメリカのジェームズ・ベーカー国務長官はロシアのミハイル・ゴルバチョフ書記長に対し、ドイツを統一してもNATOを1インチでも東へ拡大することはないと約束したのだが、すでにロシアの玄関先まで到達、軍隊を配備し、ミサイルを設置してロシアを恫喝している。その結果として軍事的な緊張は高まり、全面核戦争の危険性は冷戦時代よりはるかに高まってしまった。旧東ドイツの国民にとっても幸せではなかったようだ。
もし朝鮮半島が統一されたならアメリカは全域を属国化し、ヨーロッパと同じように中国への軍事的な圧力を強めようとするだろう。当然、中国もロシアもそう考え、対応してくる。アメリカの支配層は約束を守らない侵略者たちだ。1991年12月にソ連が消滅して以来、唯一の超大国になったと考え、驕り高ぶったアメリカは本性を見せてしまったこと、シリアでの戦争でアメリカ軍はロシア軍に勝てないということを見せてしまったことも大きい。 NATO欧州連合軍最高司令官を2013年から16年まで務めたフィリップ・ブリードラブもNATO軍にロシア軍と全面戦争する十分な準備はできていないと語っている 。金正恩委員長もそうした実態を見ている。