ラストアルバム

Ann1

●EVERYTHING HAPPENS / Ann Burton


   1989年11月29日に亡くなったアン・バートンが
   1988年7月~8月にかけて録音したラスト・アルバム。

   このアルバムのプロモートのためのツアー中、
   彼女は、力尽き、末期がんに倒れた。

   購入早々、聴いてみた。

    が。

   つらくて聴いていられない、と感じた。
   泣きそうになった。

   無理な体を押して、腹筋や声の調節がききにくいのを、
   体の筋肉全体を総動員して、なんとか乗り切ろうと
   している感じが、あらわに伝わってくる。


    ところが。


   繰り返し、繰り返し、聴いていると、
   そうだ、これが Ann なんだなぁ、という歌の抱き方。

   しゃれた「スイングしなけりゃ意味ないよ」と
   「He Ain't got rhythm」のミックス。

   Ann は、アルバム「Burton for Certain」(邦題:雨の日と月曜日は)でも、
   「If I were a bell」の冒頭で、
   「Get me to the church 時間通りに教会へ」の歌詞を
   バースにしてるんですね。

   で、

   Ding dong the bells ringing for me and my man ・・・♪

   と、先にやっておいてから、
   「ねぇ聴いて。もし私がベルなら、ディンドン鳴ってみせるわ」

   と、ハッピィな気持ちを歌いだすんですよね。

   あぁ、声は落ちてても、病気でも、やっぱり Ann だー。

   胸がいっぱいになって、それから嬉しくなってしまいました。



   話は飛びますが、秋吉敏子さんが先日、NHKのジャズ講座で、
   世阿弥まで出してきて、

   「真の芸術家は腕は落ちても芸術は残る」

   と、おっしゃってたんですよね。

   私、秋吉さんがそんなに好きじゃありませんでした。

   だって、子供を産むために日本に戻ってきて、
   産んだら親にあずけたまま、またNYで音楽、

   なんて、どうよ!

   と、一般人としては音楽家以前のところでNOだったのね。

   でも、あの方は、真の芸術家として生まれついた、
   ご自分の運命に従われたんですね。

   いい言葉だと思いました。


    ・・・おっと脱線。。


   Ann は、最期まで Ann だった。



    もうひとつ。



   スローなバラードを得意とした彼女ですが、
   このアルバムの中では、ほとんどがアップテンポ。

   あのビル・エヴァンスも、死に近づくにつれ、
   まるで死に急ぐように、   
   演奏がどんどん早くなっていたとは聞いた話ですが。



   無理な体を押していた痛々しさ。


   自らを鼓舞しようとした健気さ。


   ラストの「Afterthoughts」は、渾身のバラード。

   彼女が生前、最後に歌った歌でもあると言う。



   Afterthoughts。


   文字どおり、後になって、

    色々と考えてみて。

     憶えていて。

      感じていて。


   という問いかけを残して。


   ジャケットには、はじめて、満面の笑顔を残して。


   56年を生ききった Ann 最期の歌声。


                            2004.7.28 Noir




     *****     *****     *****


     Ann Burton (vo)
     Rob Agerbeek (p)
     Harry Emmery (b)
     Frits Landesbergen (d/vib)
     Ack van Rooyen (tp)







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