2004.09.17
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先日、 映画「ドッグヴィル」を紹介したが

グレースの父、ギャングのボスは普通に考えると怒りの神エホバ、のようだ。すると、グレースは新約聖書の神=神の子=人、イエスになる。怒りの神と慈悲の神が車の中で話し合う。

イエス「お父さま、どうしてわたしのことを嫌うの?」

エホバ「お前がワシのことを傲慢だと言っただろう、それが気に入らなかったのだ。ワシから見れば、傲慢なのはお前だ、イエスよ」

イエス「それを言うためにここに来たのですか?私は審判を下す立場にはいません、あなたが審判を下すのです」

エホバ「その通り、お前は審判を下そうとしない。お前はあいつらに同情する。虐げられた子供時代があったから、犯してしまった殺人はほんとの殺人ではない、とか。本当に罪を問われるべきなのは彼らが生きてきた過酷な状況だ、とか。お前に言わせれば、強姦するもの、殺人するものは被害者なのだ。ワシはそんな奴らを犬と呼ぶ。そんな犬が自分の汚物を舐めるのを止めさせる術は、鞭でひっぱたくことだ。」

イエス「でも、犬は単に自分の本能に従っているだけです。何故それを許してはいけないのですか?」

エホバ「犬は教えようによっては役に立つようになる。しかし、本能に従った行動をする度に許していたら、調教することはできない」



エホバ「その言い方だ、その言い回しが人々をどれだけ見下した態度かわからんのか?お前は、自分がどこの誰よりも自分が倫理的に正しいと思っている。だから、人の罪を許す。それが傲慢でなくてなんだと言うのだ。お前は、自分には絶対に許さない言い訳を、人々には許す」

イエス「どうして慈悲深くてはいけないのですか、どうして?」

エホバ「もちろん慈悲を施すべきだ、しかしその時を選ばなくてはいけない。それと、人はあるレベルの倫理を保たなくてはいけない。そのレベルを逸脱したときには、それ相当の罰が下されなけれならない」

イエス「でも彼らはただの人間です」

エホバ「人は自分の行動に責任をもたなくてはいけない。お前は、その最低の責任能力を発揮するチャンスも与えないではないか。それが傲慢だというのだ。」

慈悲の神・イエスを説得して、遂に犬達を皆殺しにさせる、エホバ。アメリカ批判三部作の第一作と言われるこの作品で、フォン・トリアーは怒りの神・エホバをアメリカに擬えているのだろうか。虐げられた人々を鞭打ち、ルールに従わないものは容赦なく抹殺し、彼らを体制の中に組み込んでいく、そうやって調教された下層の人々が、部外者に対してはその差別の牙をむき出す。

確かに、アメリカの内政・外交はそういう一面をもってきた。自分が常に正しいと信じて他国の政治に口を出す、傲慢さ。自分のルールに従わないものには、自国民であろうと外国であろうと、武力を行使する、傲慢さ。傲慢なのが「神」である間は誰も文句を言わないが、「神」への信頼が薄らいだときには、批判の嵐にさらされる。

フォン・トリアーの三部作、この後どう展開するのか、楽しみだ。





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最終更新日  2004.09.19 08:19:55 コメント(11) | コメントを書く


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