■これは間違いなく「復讐するは我にあり」である。初めて見たのは、テレビの洋画劇場だったが、こんなものテレビでやるなよ~と思った。
■いわゆるホラーではない。実在の連続殺人犯の軌跡をドキュメンタリータッチで追ったものである。
この男、さしたる理由もないのに詐欺と殺人を重ねていく。敢えて言うと、「生きる実感を確かめるために」人を殺していると思える。決して悪の英雄といった勇ましい男ではない。社会的地位の高い人間をかたり、せこい詐欺を繰り返しながら、無意味な殺人に手を染める。むしろ、死を恐れ、いつもびくついている卑小なやつ、そんな男がわざとのように凶悪犯罪にはまり込んでいくのだ。
まだ「快楽殺人」とか「トラウマ」とか便利な言葉がない時代にありきたりの解釈をせずに、この男の内面にとことんまで迫ろうとした映画である。その執拗さが怖い。
■殺人犯を演じたのが緒方拳。これがはまりすぎていて怖い。普通に話すだけ、たたずんでいるだけ、考えているだけ、笑っているだけ。。それだけで異様な迫力である。これをやった後で、普通の役柄に戻るのは難しかっただろう。彼の出世作であり、また代表作となった。
■監督をしたのが今村昌平。独特の土俗的な雰囲気とシュールな映像が冴え渡っている。
緒方拳が、人を殺すために旅館の階段を上っていく。その階下では、なぜか田舎にいる家族が団欒している。時折はさまれるそんなシュールな映像が、実に怖い。
■映画としては犯罪の動機が「親子の葛藤」だという解釈をしようとした形跡があるが、全体としてはその解釈に収まりきっていない。今村昌平もインタビューで「あの主人公だけは理解しきれなかった」と白状している。その理解しきれなかったことをそのまま映画にしたのである。それがこの映画を名作にしたのだろう。
とにかく怖い映画だった。
■この映画に比べたら、カンヌ映画祭でグランプリをとった「楢山節考」も「うなぎ」もぬるい映画である。
■今村昌平監督の冥福を祈ります。
「君の名は。」64点 December 10, 2016
ふたたび「この世界の片隅に」ついて December 8, 2016
「この世界の片隅に」98点 December 7, 2016
PR
Calendar
Keyword Search