わたしは価値を創る

わたしは価値を創る

February 14, 2010
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カテゴリ: 小説の話
■出張の移動中に読んだ本です。作者は桐野夏生。上下巻900頁近い大作ですが、面白くて一気読みしてしまいました。

この小説は、東電OL殺人事件から想を得ています。昼間は一流企業の総合職をしながら、夜は街娼をしていて外国人に殺されたOLの事件です。ちなみに、あの事件は、よほど小説家の想像力を刺激するらしく、複数の小説がありますね。

ただ今回の小説は、事件の異常性よりも、なぜあのようなOLが生まれたのかという社会的背景を描くことに主眼を置いています。

だから、OLの高校生活のエピソードが半分ぐらいを占めています。

■というか、このOLは主人公でもありません。ある名門高校の同窓生の一人という位置づけです。

必死に勉強して名門高校に入ったのはいいが、その学校は初等部、中等部から上がってきた者たちが歴然とした格差社会を作っている学校であり、少々勉強ができるだけでは相手にされません。

努力だけでは如何ともしがたい格差に合った高校生たちが、その中でどのように自分を位置づけていけばいいのかが語られます。

■作者には「OUT」という凄まじい小説がありましたが、この小説でも、高校という社会にOUTしている女性たちが描かれます。

この高校は、女性の社会進出を拒み続ける日本という社会の縮図としても読むことができます。



■この小説の仕掛けは、これだけではありません。

誰もが驚くような美少女を登場させます。

この少女は美しい以外、何の取り柄もないのですが、美しいというだけで、その高校のヒエラルキーを突破してしまう存在です。

勉強ができるできないだけではびくともしない高校のヒエラルキーの頂点にいる人間もその美しさには一目置かざるを得ないわけです。

ただし、これは別種のOUTです。いわば美しさという「異常」を持っているために、最初から特別枠に入れられているわけです。

ちなみに、この少女は極端な淫乱症として設定されています。このあたり作者の底意地の悪さを感じますね^^;

■小説は、様々な人物の語りや日記、手記によって構成されています。

それぞれの思惑や偏見がそのまま記述されているので、人物や事件が立体的に浮かびあがります。

複雑な仕掛けですが、読者が自分で物語を想像することができるので、心に残るのでしょうね。

■淫乱症が高じて、高校をOUTした美少女は、社会の中でも怪物になっていきます。

それに引きづられるように、後に殺されることになるOLも、その他の人物も、徐々にOUTの度合いを高めていきます。



美少女も、OLも、優等生も一様に、社会不適合者としての姿を痛快に晒してくれます。

最後には、かつての美少女もOLも凄まじく醜くなり、数千円で体を売る街娼に成り果てるのだから、痛快を通り越して、神話のようです。

■桐野夏生の最高傑作とも言われています。

短編は、意地悪さが目に付きすぎて辟易しますが、この長編はカタルシスを感じましたね。





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Last updated  February 14, 2010 10:16:47 AM
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