スラ蔵9巻

●スラ蔵9巻(#91-101)
  • #91「60seconds」
    • 「采配ミス」

      普段チーム内でも自己主張しない長谷川が「三井にボックスワンでつかせてくれ」と言う。内心「おとなしすぎるのが欠点だ」「3年間誰よりも練習してきたのもこの一志なんだ」と感じていた藤真は長谷川の申し出に応じる。藤真の表情を見ればよく分かる。長谷川の自己主張を喜んでいる。「一志がそういうのを待っていたんだ」とでも言わんばかりの表情だ。

      しかしそこが落とし穴だったのではないだろうか。この時点で三井にボックスワンでつく必然性は無い。前半の5点どまりだ。そしてこの試合に関しては体力に難ありとされる流川も問題なさそうだ。

      繰り返すがここで三井にボックスワンで対応する必然性は全くない。藤真がこの作戦をとったのは、ボックスワンが必要・有効な場面だからではなく「他ならぬ一志が言いだしたことだから」なのだ。別の言い方をすれば長谷川が殻を破る、ステップアップするためにボックスワンにしたといえる。

      しかし既に体力的に限界に達していた三井は特に刺激することなく最後までコートに立たせていればよかったのだ。178cmの木暮では三井の代わりは務まらない。190cmの長谷川を止めることは不可能に近いだろう。三井は下げられない選手だったのだ。

      結果的にはボックスワンを裏目に出た。

      小さなボックスゾーンを組んだことで赤木は攻めあぐんだ。小さなゾーンは3Pで広げるのが定石。三井にボールが集まる。直接的には三井の3Pに対する長谷川の安易なファウルが引き金だったが、これで三井は完全に復活してしまう。いや。復活というのは違う。消える寸前の蝋燭に過ぎなかった三井が完全に消えてしまう前に最後にもう一度炎をあげたのだ。刺激してしまった。

      情にほだされた藤真の采配ミスとはいえないだろうか。そしてそこにはかつて圧倒的な三井の才能の前に完全に屈した長谷川の、ドロップアウトしていた三井に対する複雑な思い・囚われが少なからず影響していたことは否定できない。「対三井」の意識に囚われ自分のバスケに徹しきれなかった時点で長谷川の、翔陽の敗北は運命づけられていたのかもしれない。

      三井もまた試合前のトイレの経緯から「対長谷川」の意識に囚われていた。いや、対長谷川の意識を通じて、過去の自分にとらわれていたと言う方が正確な気がする。しかし三井はフリースローをキッカケにとらわれから開放された。本来の自分を思い出した。昔の自分を思い出したが、今の自分とのギャップを感じるのではなく「本来の自分」と感じている。昔の自分であり、現在の自分。今も昔も三井は「こういう展開でこそ燃える奴」なのだ。三井の目には勝利しか映っていない。

      フリースローを3本沈めた時点で三井は8点。「5点に抑える」と豪語した長谷川には勝った訳だが、三井は既にそんなことは気にもとめていない。その後3Pを決めて6点差に詰めた瞬間が最も印象的だ。三井は「負けねえ・・・負けねえぞ・・・」と繰り返すのに対し、長谷川は「11点め・・・くっ…!!」である。二人の差は一目瞭然といえよう。

      3年間誰よりも努力してきたからこそ長谷川は三井を認められなかった。囚われてしまった。悲しい話だが、実際よくある話なんだよなあ。複雑。必死に積み重ねてきた時間があるからこそ認められない何かがある。才能?運? 心技体、全てを磨くことの大切さは耳にたこができるほど聞くが、心を鍛えること、とらわれずに物事に臨むことは言葉ほどにたやすいことではないと思わされるシーンだ。

  • #92「勝ちに行く」
  • #93「三井限界説」
  • #94「大バカヤロウ」
  • #95「4ファウル」
  • #96「ROOKIES」
  • #97「マグレだとしても」
    • 「シード校も楽じゃない」

      60-62で県NO.2の翔陽が敗れる。打倒海南の想いはここに果て、翔陽の夏は終わってしまった。シード校である翔陽はこの対湘北戦1試合で終わってしまったことになる。藤真にいたってはたった14分間だけの夏だった。神奈川の変則的なトーナメント方式が生んだ悲劇だと思うのだが…どうやら神奈川って本当にこんなシステムだったらしいですね。シード校も楽じゃない。

  • #98「今日の有名人」
    • 「特集記事」

      翔陽との激戦の明くる朝。新聞の15面には花道のSLAM DUNKの写真がが大きく掲載された…のはマンガを読めば分かることなので別にどうでも良いのだが、問題はその周辺の記事だ。当然、翔陽対湘北の試合のことを書いているのかと思いきや、全く関係の無い記事が並んでいる。ちょっとNBAをかじった人ならすぐに分かるだろうが、この記事は先日、殿堂入りしたアービン・マジック・ジョンソンについての記事だ。
      おそらくマジックの伝記のような本からの抜粋と思われる。写真の右横の記事はかつてマジックがジョーダンについて語った言葉が載せてある。どうも全体として一つの文章というよりも井上先生の手元にあった資料の文章を適当に詰めこんでいるような印象だ。
      一つ気になるのは…著作権は大丈夫なんですか?ということだ。著作権法上の「引用」にはあたらなさそうだしなぁ。(笑

  • #99「王者への挑戦」
    • 「姉弥生」

      突然現れた週刊バスケットボール編集部の記者相田弥生と進入社員中村君。スポーツマンガにおける典型的解説キャラですね。野球やサッカーとは違い未経験者にはプレイの見所はおろか、ルールもよく分からないのがバスケ。少なくとも連載当時は。これまでは彦一や晴子、彩子が解説キャラだったわけだが、レベルのあがってくる決勝リーグで晴子、彩子の解説にはやや難がある。彦一も陵南戦では対戦相手である以上解説キャラにするのは苦しい。ましてや緊迫した場面でDr.Tを登場させるのは無理がありすぎる。そこで弥生の登場になったのだろう。それにしても彦一の姉という設定は安直なようで絶妙だと思う。

  • #100「大黒柱」

    2-11#101「気合入りまくり」



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