小説出ました

小説出ました

2010.09.18
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類


シュウは再び利二の庭に立っていた。今度ばかりは八方塞がりであった。
それだけではない。父の生死がかかっている。
何か手立てはないか湖を探ったが手がかりはおろか、これだけ広大である湖面を監視するすべはない。
ピーターはボンベが持って一時間であれば当に浮上していると話した。それでも見つからなかった。
止むなく、ピーターの指示で舞い戻ったのである。
「どうだった?」
優しく気遣う利二の前でこらえていた涙が流れた。
「見つからないんです」
地安隊や政府捜査省にも連絡した。ピーターが全て手配したのだ。
「お役所はなんと」
「ただ待っていろと。僕はずっと湖岸で待つと言ったんだ」もはや悲壮の顔をみせていた。
「でも、どれ程待つかわからないといわれて帰されたんです」
真っ赤な目で自分の気持ちを訴える、その青年の想いに何か役立つ事は出来まいか、利二はしきりに知恵を絞った。
タンスからタオルを取り出し彼に渡した。
「大丈夫さよ、きっと生きとる。龍神は誰彼構わず命を奪ったりはせんって」
受け取るタオルもそのままに、橙が言っていた言葉の事を思い出した。
この家は不思議と落ち着いた。
古い家屋の趣に慣れているシュウならば至極当然のことであった。だが彼を和ませる理由はそれだけではない。
見たことのない家具や家財道具、そして数々の書物や趣味の用具など本来であれば一つ一つ丁寧に見て確かめるに値するものばかりであった。
そんな珍しい物に囲まれていても、家屋に漂う空気が、庭から、敷地全体から流れ、開け放たれた窓を通してシュウの五感を刺激した。
それが何であるのかははっきりとわからない。
遠い記憶の中に、知っているような、体験したような感覚がシュウの体を落ち着かせた。

涙も、その心をくすぐるような風に誘われて自然と流れたのである。
そして、利二に尋ねた。
「あの、橙さんは?父が潜ったって知っていた、そのことをどうしても聞きたい。なんで、何も言っていないのに潜るなんて言葉が出たのか知りたいんです」
利二はただ黙っていた。
「あの人が何かを知っていて隠しているのは、最初に来た時から分かっています。だから……」
そう言いかけた時、利二は煙草盆を手繰り寄せてその手を止めた。
「どうも癖だ。いかん。煙草は、今日はおしまいだった」
「そうか、知りたいか」
意味あり気な様子を見せた。シュウはようやくタオルで顔をぬぐった。
「彼女はな私の命を救ってくれた恩人だよ」
「時に不意に現れ時に居なくなる。最初にであったのは平成の天孫降臨を研究していた時だった」
閉まっていた埃まみれの日記を紐解くように重い口を開けたのであった。

今から半世紀前、日本を沈没させるほどの自然災害が起こった。東海大地震である。
それは未だかつて経験したことのないものであった。東海地震の誘発は死火山である富士山を蘇らせたのである。そればかりか大いなる天空からの力が落雷となって東京をおそったのだ。
自然の驚異の前に文明と科学はなすすべはなかったのである。人々は逃げ惑いそして多くの命が失われた。
その時である。人々の頭に声が響いた。それは神からの開示であった。一人や二人ではない。ほとんどの人々がその声をとらえたのである。
神はこの災害を止めるには人間が費やしてきた過剰な浪費、地球に与え続けたその資源の摂取をやめることだといった。
世界人口が膨れ上がる当時において抜本的な解決策を余儀なくされた人類の生活圏に於いて地球からの代償は計り知れないものであった。
人々はその声をうたがった。疑いながらも神に頼らざるをえなかった。
やがて地震はおさまり火山の噴火も止んだ。
当に神のちからであった。
「私もその場所に居た一人であったんだ。御殿場より遥か遠い江ノ島まで逃げおおせた私は、目の前に浮遊する天女を見た。神の声が言っていた事は嘘偽りや幻でないとわかったんだよ」
シュウはこれまでに聞かされたどの話より説得力があると感じた。
それは単に臨場感があるというだけではなく、まるで時を違えてそこにいるかのような錯覚に陥っていたのである。
「どんな人だったのですか」
鼻声気味のシュウに利二は穏やかな顔を照らし応えた。
「あれは若い、それでも今のそなたよりかは幾分上ぐらいか、哀愁の漂う瞳に気迫が全身から溢れておった。宙に浮くその天女はあろうことか水を、海水を操り江ノ島のまわりに海の壁をつくっていた」
「昔私の祖父が言っていた水神の神秘の力という言葉の意味を垣間見たような心持ちだった。そして彼女は私を含め手を合わせる人々に頷き空を駈けていった」
利二がいうには、その時から龍に対する信仰心がうまれたのだという。彼女はどんな神であるのかを調べるきっかけにもなった龍の存在が彼の心を突き動かしたのである。
「大学を卒業してすぐに、神仏の研究にはいった。天照をしらべ、インドの神々を紐解き、更には古代ローマの神をも覗いた」
「それでも龍の存在はおぼろげなるものでしかなかった。そして、天部の神々をもう一度調べている時、彼女があらわれたのだ」



まだまだ時間が取れません。約一ヶ月かけて一話ですから・・・
お許しください。

本当、大変です。

にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へ

にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2010.09.18 13:01:19
コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: