【 D-ROCK & R 】      D-ISM

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07.10.05


楽器の使いこなし情報満載のWEBマガジン

  『Rolnad Music Navi』(Vol.4)

   DAITAソロインタビュー



インスト曲よりも、BINECKSのような歌モノのほうが、ギターの比重は大きくなるんです

─ ソロ、BINECKS、そして氷室京介さんのツアー・メンバーと、実に多彩なシチュエーションでギターを弾かれているDAITAさんですが、やはりそれぞれの場面で、ギター・サウンドに対する発想は変わるのでしょうか?


DAITA(以下、D):厳密に言うと、それぞれのシチュエーションで、ギター・サウンドはものすごく考えて使い分けています。ただ、その違いが一般の方が聴いて分かるほどのものかは、分からないですけどね(笑)。具体的に言うと、シチュエーションによってギター本体を変えることが、まず大前提です。同じ4~5本のギターを使うにしても、どれをメイン・ギターにするのかで、必然的に作品の質が変わってきます。この前のBINECKSのレコーディング(『Sacred Vision』)では、意識的にサウンドを変えるために、メイン・ギターはディーンのHardTailを使いましたし、チューニングも全弦1音下げにして、さらにドロップCなども使っています。でも、自分のソロではレギュラー・チューニングだし、ギターも普通のチョイスの仕方になりますね。


─ その他には、ギターはどのような使い分けをしているのですか?

D:ポールリード・スミスを使う場合は、歪みに多少の荒さがあったとしても、手元で表現力をコントロールしやすいので、メロディックなフレーズを弾く時に使うことが多いです。それはピック・アップの特性でもあるんですけどね。トム・アンダーソンは、タイトに弾きたい時に手に取ることが多いです。最近のギターの使い分けは、だいたいこんな感じですね。


─ 曲作りの際は、必ずこのギターというような、決めている1本はあるのですか?

D:家で曲を作ったり、デモを制作する時は、最近弾いてないギターを手に取って、違う気分で弾くことはよくありますね。最終的に、本チャンのレコーディングに入る時は、「この曲でこのフレーズなら、これだろう」というギターが2~3本は思い浮かぶので、その中から実際にアンプをつないで音を鳴らしてみて、一番いいのを選ぶようにしています。


─ インスト曲と歌モノでは、ギター・サウンドの組み立て方は、どのように変わってくるのでしょうか?

D:インスト曲の場合の考え方は比較的シンプルです。歌のように主旋律を奏でるギターが1本あると考えると、実は楽曲の中で各パートに置かれる比重は、ギターよりも、曲の背景や雰囲気を作り出す他のパートのほうが重要だったりするんですよ。だから、レコーディングでは、ギターよりもパソコンをいじっている時間のほうが長くなっちゃいますね(笑)。それとは逆に、BINECKSのように歌ありきの曲の場合にギターの比重は大きくなるんです。ギターでバック・サウンドの面積を積み上げていくので、必然的にギターを弾く時間も長くなりますね。インスト曲の場合は、自分がリードマンになるというか、ボーカルの代わりにギターで歌を歌うわけですから、そういう時は、やっぱり自分の声のように鳴ってくれるギターを選んだり、音作りを行います。一方、BINECKSの場合は、歌よりもギターは一歩後ろに引いて、きちんとサウンドに馴染むような楽器選びや音作り、そしてフレージングを考えますね。




テープ・サウンドを知っている耳では、ギター・サウンドの柔らかさや硬さの感覚が違ってくる


─ DAITAさんのレコーディングでは、どの程度の割合でギターのライン録音を取り入れていますか?


D:実はこの数週間、次の自分のソロ・アルバムに向けての曲作りを行っているんですが、デモということもあって、最近はラインでしかギターを弾いてないんですよ(笑)。でも、その中で「ラインもいいな」と感じることが、最近は多いですよ。数年前までは、歪み系のプラグインにしてもアンプ・シミュレーター・ソフトにしても、ラインの音を本番のレコーディングで使うということは、あまり考えませんでしたよね。でも最近は、アンプ・シミュレーターの精度は大いに上がっていると感じています。一般的にアンプ・シミュレーターのライン・サウンドは、エアー感がなかったり、音が硬いという特徴はありますが、CDに収録されるアンサンブルとしては、まったく問題ないんじゃないでしょうか。だから、今日試奏するGT-PROも、とても楽しみなんですよ(笑)。


─ このスタジオで、すべてのギター・パートをご自身で録音したというBINECKSのレコーディングでは、アンプに立てた3本のマイクと、ラインで録った音をミックスしてギター・サウンドを作り上げたそうですね。

D:主旋律を取るリードに関しては、必ずアンプで鳴らしました。でも、ラインも同時に録るようにしていて、アンプの音に芯を加えたいなというような場合に、プラグインのアンプ・シミュレーターなどで微調整したラインの音をミックスするんです。そうすると、EQなどとは違った感じで、ギターの存在感を出せるんですよ。


─ DAITAさんは、プレイだけでなく、マイキングを含めてかなりエンジニアリング的な作業もこなされていますが、もともと宅録歴はいつ頃からスタートしたのですか?

D:14~5歳でギターを始めて、高校1年生の頃には、4トラックのカセットMTRで、バンドのメンバーとオリジナルを作っていました。自分の部屋にメンバーを集めて、小さい音で一発録りをしたりして(笑)。そこから始めて、次にハーフ・インチのオープン・リール式のMTRを手に入れて、「トラック数が倍の8トラックになった」って喜んでいましたよ。今のDAWソフトだと、トラック数なんて無限ですからね(笑)。


─ その頃は、エフェクターはどういったものを使っていましたか?

▲写真1:DAITA氏所有のボス・コンパクトの数々。
左上から時計回りに、アコースティック・シミュレーターAC-2、オクターブOC-2、オート・ワウAW-2、ノイズ・サプレッサーNS-2、ダイナミック・フィルターFT-2、コンプレッション・サスティナーCS-3、ターボ・オーバードライブOD-2。「コンプ、オーバードライブ、コーラス、ディレイ。この4つは、当時はマストでしたね。」というDAITAさん。初期のSIAM SHADEのステージでも、歪み系のコンパクトはよく使っていたという。また、現在はライブ用のラック・システムには、VF-1がマウントされており、主に空間系エフェクターとして自身のライブはもちろん、氷室京介氏のツアーや数々のセッションで活用しているそうだ。

拡大写真を見る D:それこそ、ボスのコンパクトですよ。僕の周囲でも、8~9割方は、ボスのコンパクトを使っていたんじゃないかな。やっぱり、名機のOD-1とかOD-2、ターボ・オーバードライブ、コーラス、ディレイ、コンプとかね。オクターブも使いましたね。エフェクターは、かなり好きなほうで、足元に10個は並べていましたよ(笑)。


─ その頃と比べて、今のレコーディング環境については、どのように感じていますか?

D:当時は、コンピューターでレコーディングするような時代が来るなんて、考えもしませんでした。ギタリストと言えば、腕一本でしたからね。でも、そういう時代も経験しているからこそ、GT-PROのようなデジタル機器でも、使い方は変わってくると思っているんです。やっぱりアナログ的に使いたいというか、最初からデジタル世代の人たちよりも、ギター・サウンドの柔らかさや硬さの感覚は、違うはずでしょうからね。テープで作った音を知っている耳と、ハイファイなデジタル・サウンドしか知らない耳では、やっぱり聴覚が違うと思いますよ。



GT-PROは、ラインで使ってもアンプの鈍り具合やアナログ感を感じます

─ 今回は、GT-PROを試奏していただきましたが、GT-PROの率直な感想はいかがでしたか?

D:ざっと試奏してみた感想ですが、これは凄くいいですね。これを使いこなせれば、アンプがいらないくらいの音が出せるんじゃないかな。ライン・ギターにありがちな硬い音ではなく、アンプで鳴らした時の鈍り具合まできちんと表現されている点が、とても気に入りました。歪みの感じだとか、凄くアナログっぽさを感じます。


─ 実際のレコーディングでは、アンプに立てるマイクの距離などもシビアに調整されているようですが、GT-PROのマイキングのシミュレーション機能はいかがでしたか?

D:僕はアンプにマイクを立てる際も、かなりスピーカーに近づけてオン・マイクで録るんですが、GT-PROでのシミュレーションも、そういったニュアンスまできちんと出せていますね。内蔵エフェクトも、例えば、ボスの名機OD-1などのサウンドとか、とてもリアルに再現できています。この歪み感とコンプレッション感が、ボスなんですよね(笑)。


─ 他に気に入った機能などはありましたか?

D:GT-PROは、2系統のプリ・アンプ(COSMアンプ)を同時に使えるんですよね? それで、2台のアンプをピッキングの強さで使い分けるという機能があったじゃないですか。弱く弾くとクリーンで、強く弾くと歪むってヤツ。


─ ダイナミック・モードですね。

D:あれは面白いと思いました。ライブの現場でも、フレーズによっては「ここでそんなに強く歪まなくてもいいのに」っていう場面もよくあって、そういう場合は手元でボリュームをコントロールするんですが、ボリュームを上げ下げしながら弾くのって、なかなか大変なんですよ。それに、戻りたい時に、すぐに戻れないしね。ボリューム・ペダルを使って足でコントロールするという方法もあるけど、そうすると毎回違う絞り方になってしまうから、結局、1曲の中で3種類の歪みのプログラムを作って、それを切り替えたりする必要が出てくるわけです。GT-PROのこの機能を使えば、ピッキングだけで歪みをコントロールできるから、ライブの現場でも使い勝手がよさそうに思います。


─ 歪み以外でも、強く弾いた時だけにディレイをかけるということも可能なんです。

D:それも面白いアイデアですよね。常にディレイかかりっぱなしでなくて、普通に弾きながら急にディレイをかけられるっていうのは、ちょっと試してみたいですね。もう、とにかく何でもできるように作られているから、買ってすぐにすべての機能を使いこなすというのは難しいでしょうけど(笑)、プリセットから好きな音を探して、そこからサウンドを調整していくというのでもいいんじゃないでしょうか。本体にトレブルやベースといったトーンのツマミが用意されているのも楽ですよね。階層構造のメニューに入ってパラメーター値を設定しないでツマミですぐにコントロールできるという点も、ギタリスト好みだと思いますよ。


▲写真2:DAITA氏お気に入りのプリセットその1:STACK DRIVE。
「この歪みを聴くと安心しますね(笑)。アンプ・シミュレーターでいろんなライン・サウンドを選んでも、やっぱりこのテイストの歪みにたどり着くんですよ。学生の頃から聴き慣れているサウンドなので、耳馴染みがいいんですよね。コードも見えつつ、ドライブ感もある。王道の歪みだと思います」(DAITA)



▲写真3:DAITA氏お気に入りのプリセットその2:TIGHT STACK。
「最初にここからスタートするであろう、サウンドですね。ブギーっぽい質感の歪みで、ここからもう少し歪ませたり、はたまたクリーンにしてみようかとアイデアを練る際の、基準となる歪みです。僕の中の、ベーシックなサウンドです」(DAITA)


優等生な音がするアンプ・シミュレーターが多い中、GT-PROは俄然ロックですよね

D:GT-PROの音をDAWソフトに録音する場合は、アウトプットをオーディオ・インターフェースに接続すればいいんですか?

─ それでもいいですし、パソコンにUSB経由でオーディオ・データを送れるので、パソコンでDAWソフトを立ち上げて、GT-PROのドライバーをオーディオ・トラックにアサインすれば、GT-PROの音をダイレクトにDAWソフトに録音できます。また、通常はGT-PROのインプット・ソースを「GUITAR」に設定してエフェクトをかけますが、「USB」に設定すれば、DAWソフトに録音したギター音をGT-PROに戻し、エフェクトをかけてから別トラックに送って再度録音することも可能です。いわゆる、リアンプ的な使い方ですね。

D:なるほど、それは便利ですね。レコーディングに使うにしても、これ1台でやれることの範囲が、かなり幅広いですね。


─ 実際のレコーディングでは、リアンプ的に後から作り込むことが多いのですか?


▲写真4:GT-PRO試奏中のDAITA氏
この日の試奏は、2ndプロジェクトアルバム『DIRECT MODE』のレコーディングで大活躍したトム・アンダーソンのブルーのモデルが使われた。
D:現状の僕のレコーディング・スタイルでは、最初に「こういう感じの音で録ろうと」決めて音を作って、録った後で「ちょっと違うかな」と感じたら、プラグインのアンプ・シミュレーターで微調整することが多いです。デモ制作の場合だと、フレーズとアレンジが見えればいいので、そこまで厳密には音を作り込まないですけど、それでも、デモの時点で「この音はいいな」と思った音は、最後まで残ることは多いですね。メインのギターの音に関しては、本チャンのレコーディングではほとんど録り直しますが、それ以外の背景の部分のギターに関しては、デモの段階のプレイがいい雰囲気であれば、それを活かすこともよくあります。ですから、デモと言っても、しっかりと音を作っておくというのは大切なんです。

─ こういったプロセッサーを使って宅録でギターをライン録音する際に、注意したほうがいい点などはありますか?

D:ヘッドホンでギター・プレイを楽しむだけならまったく問題ないと思いますが、きれいな音でレコーディングをしようとするなら、電源ノイズの問題はポイントになるかもしれませんね。今日も、電源のグランドをアースに落として試奏したんですが、このスタジオでBINECKSのレコーディングをした時も、電源ノイズの問題には苦労したんですよ。ここではパソコンを3~4台使っているし、シールドの這わせ方でもノイズが変わってきますからね。一般住宅の電源環境って、そんなによくないですし、これだけ機材のクオリティが上がると、その分、些細なノイズも気になります。


─ それでは最後に、GT-PROが、これまでお使いになったアンプ・シミュレーターと最も違うと感じた点を教えてください。

D:これ1台で、レコーディングにおけるギターの音作りの要素がすべて行えるという点が、とにかく素晴らしいですよね。これはやっぱり、プラグインのアンプ・シミュレーターでは、なかなかできない部分だと思います。やっぱりハードウェアならではというか、根本的な音の質感が、ソフトウェアとはまったく違いますよね。


─ 特にギターの場合、ピッキングや楽器の倍音の出方によって、アンプは違う動作をしますよね。だからこそ、ギター本体やプレイヤーが変わると、同じアンプでも鳴りが変わってきます。GT-PROに搭載しているCOSMアンプというのは、このようなギター・アンプの特性を踏まえて、アンプの「出音」ではなく、ピッキングや倍音による「動作の変化」までをもモデリングしたものなんです。

D:そこなんだよね、重要なのは。だから、GT-PROには生々しさを感じるんだと思います。これまで、いろんなプラグイン・タイプのアンプ・シミュレーターを使ってみましたが、それらの音って、どこかキレイ過ぎるんですよね。完成された音というか、品があり過ぎる。優等生なんですよ。それに比べて、GT-PROの音はガッツがあるし、俄然ロックな音だと思います。ギターって、本来はもっと乱暴な楽器で、それを手元でいかに丁寧に弾くか、という楽器だと思うんです。だからこそ、いろんなニュアンスが出せるわけで。GT-PROには、そういったニュアンスがキチンと出せていると思います。歪み具合もラインっぽさがないし、ギタリストが求める感じが、かなりの高いクオリティで追求されていますね。僕は、あまり楽器や製品を褒めるほうではないんですが、これはかなり気に入りましたよ。



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