嗚呼、大誤算!! しかぁ~し! 創造生活にトライ!

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■酒の失敗談001/ゲロリンス事件



 若い頃の飲み方はハンパじゃなく、最低だったオレは、その日も勢いに任せて飲みまくっていた。

「じゃ、これで一気してみなよ」

 目の前に出されたのは、大きな業務用シャケフレークの空き缶。直径は20センチ、深さは10センチぐらいだったろうか。今となっては正確に思い出せないが、かなり大型の空き缶だったという記憶は残っている。

「いけいけ! そらそら!」

 何人かが缶にウイスキーをドボドボとつぎはじめる。どのぐらい入ったかは覚えていないが、その量たるやハンパではなかった。

 すでに、そのときのオレは、「できあがっていた」。

 しかし酒の勢いとは恐ろしいものである。オレはウイスキーをたっぷり注がれた缶を両手で掴み、一気飲み。

「こんなの水だよ~~! グイグイグイ」
「じぇ~んじぇん 酔わないもんね~~~♪ がぶがぶがぶ」

 すでに平常の感覚が麻痺していたオレは、勢いのまま空き缶の中のウイスキーを飲み尽くした。

 たしかに飲み終わった記憶は、今でもおぼろげに残っている。しかし、そこで記憶は途切れた。

 ツー、ツー、ツー(って、電話じゃないんだから)

 ネット風の言い方を使うとすれば、どうやら逝ってしまったらしい。
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 気づいたのは、翌日の午後。オレはバイト先のフロアに横たわっていた。頭はガンガン、意識も朦朧。それでも必死に立ち上がったオレは、気力を振り絞って帰路についた。

 (なんかクサイんだよなぁ……)

 帰りの電車の中は辛かった。電車が動くたびに頭と内臓がグルングルンと掻き回されている気分。断続的に発作的な吐き気に襲われる。

 (やっぱり なんかクサイんだよなぁ……)

 まるでキリキリと万力で頭を締め付けられるような感覚。カンペキに脳が痺れていたオレだが、遠い意識の中でボンヤリと「異臭」の存在だけは嗅ぎ取っていた。

 人間の五感の中で生命の危険を感知できるのは「嗅覚」だという説がある。現代社会においては嗅覚を発揮できるシーンが少ないためピンとこないかもしれないが、嗅覚はもっとも原始的な感覚なのかもしれない。古くなった食材の臭いをかぐのも、ガス漏れといった異臭にドラスティックに反応するのも、そんな理由から来ているのかもしれない。

 (どうしてもやっぱり なんかクサイんだよなぁ……)

 そんな疑問が引っかかったまま、オレは帰宅する。じつは帰宅するまでに、とんでもない時間が費やされたのだが、それを書き出すと終わりが見えないので割愛させてもらう。

 そして自分の家に戻ったオレは、鏡を見て驚愕することになる。

「な、なんじゃぁ~~~! こりゃぁ~~~~!!!!」

 『太陽に吠えろ!』のジーパン刑事殉職シーンではないが、鏡に映ったオレの姿は想像を絶する状態になっていた。

 オレの髪型はピストルズのジョニー・ロットンや70年代のデビッド・ボウイ、80年代のボーイ・ジョージも裸足で逃げ出すような、スーパーエキセントリック、ハードパンキッシュ、グロテスティブファッショナブル(こんな英語はあるのか!?)な形に変わっていたのだ!

 (どうりで電車でも近くに人が寄ってこなかったわけだ)

 ゲロでごわごわに固まり、四方八方に広がった髪の毛は、正気の沙汰とは思えない程の仕上がり具合。もちろん見た目の形だけでなく、得体の知れない汚物にコーティングされ、奇怪な有機物らしきものが付着している。

 (そっか だから クサかったんだね……)

 やっと異臭の存在を確認したオレは、安心して部屋に倒れ込んだのだった。

 その日の夜にバイトに向かったオレを待っていたのは、ゲロリンスというあだ名。この伝説はオレがバイトを辞めた後でも語り継がれていったと聞く(マジです)。


                      (酒の失敗談001 おしまい)

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