マンガ&ゲームな広場

マンガ&ゲームな広場

第一部 前編


「第一ロック解除。・・・・、第二ロック解除・・・・・、最終ロック解除。・・・・・・、アクセス開始」
 青白い光を放つコンピューター画面の前に腰掛けながら、俺はキーボードを叩く。
そして案外簡単に解けてしまったセキュリティシステムに、多少の物足りなさを感じていた。
『SPIRIT』のデータベースのセキュリティがこの程度・・・・・?
 本気で信じられない。こんなに簡単に軍のデータベースが支配されていいのだろうか。警備員も弱かったし。
 ま、任務が遂行しやすくてこちらとしては一向に構わないんだが。
 俺は手早く必要なデータを探し出そうと、ピアノを弾くような感じで素早くキーボードを叩いた。
 画面上に膨大な量のデータが高速で表示されていく。
 幾つも出現してくるデータの中から、求めるデータを見逃さないよう目で追っていった。
・・・・・・あった。
 求めているデータはこれまたすぐに見つかり、俺はさらに拍子抜けした。むしろここまで簡単だと逆に罠なんじゃないかって不安になってくる。データを手に入れた瞬間に警報が鳴るとか、槍が降ってくるとか、警備員がそこら中から湧いて来るとか。
まぁ、その確立は天文学的に少ないだろうしとっとと終わらせるか。
 俺は素早く必要なデータをピックアップし、チップへとデータをコピーした。
 そのチップをコンピューターから取り出すと、自己のポケットの中に入れ、さっさとこの場を後にしようと立ち上がる。
全く・・・・・、楽な任務だ。
 俺は通ってきた道を後戻りしていく。
 先程と全く変わらない鋼鉄で出来た分厚い壁。
 狭い通路にかつかつ、と俺の足音だけが響き渡る。
 さっきと全く変わらない道。変わらない音。
 ただ一つだけ違うのは、

 ――――――そこらに転がってる死体ぐらいのものか。




 暗い廊下の中をただ一つ動く影。
 俺しかいない、多少寂しさすら感じさせる静寂に満ち溢れた通路。
 弱々しい電光の光だけが、唯一辺りを照らしている。
「・・・・・・・」
 俺はこの暗さでも、足元に注意などせず進んでいく。
 今回の任務は軍のデータベースにハッキングし、必要なデータを入手すること。
 軍のデータベースと聞いて多少気を引き締めていったが、この程度か。
 あっけない。
 今までと何ら変わりなくデータを入手することが出来た。
 少しでも緊張していた自分がバカみたいだ。
 さて、こんな薄気味悪いところとはさっさとオサラバして、とっとと帰るとするか。
 俺は歩くスピードを多少上昇させた。
 最初に通ってきたときにこの辺りの警備兵はほぼ全滅させたため、攻撃される恐れは多分ない。
 故にどんなに油断してても大丈・・・・・。
「いたぞ、侵入者だ!」
 ・・・・・・夫じゃなかったか。
 どこかで待機していたのか、それとももう増援が来たのか、増援が来るには早過ぎるから多分前者の方だろうな。
 俺が通ってきた道以外にも道はあったし・・・。
 やれやれ・・・・・。
 一つ大きなため息を吐き、俺は余裕を持ってゆっくりと振り返った。
「おい、そこのお前!今すぐ武器を捨てて投降しろ!!」
「・・・断る、といったら?」
 お決まりのセリフを言ってきた男に向かって反抗の声を上げながら、俺は腰についているホルスターに手を掛ける。
「止むを得ない。力ずくでも投降してもらおう」
 と言いながら、向こうも腰についている刀に手を掛けた。
 刹那、
「ぐわぁぁっ!!」
 俺は瞬時にホルスターから銃を引き抜き、刀に手を掛けた右手に向かって発砲した。
 弾は見事命中。目の前の男は自分の右手を左手で抑えながら唸り声を上げている。
 俺は唸っている目の前の男を見据え再びトリガーに手を掛けた。だが、いくつかの足音が奥の通路から響いてきて一時発砲を中断する。
「おい、大丈夫か!?」
 唸り声か銃声か、どちらを聞きつけたのかは分からないが奴の仲間が駆けつけてきた。今度は刀ではなく銃を装備している。それも三人。
 全くもって勝てない数じゃないが、これ以上事が大きくなるのも御免だ。多少でも怪我はしたくないし。
 それにこの暗さでこの距離なら顔も見えてはいないだろ。いやまぁ、見られたからどうこうっていう問題でもないんだが。
「サラバ」
 俺は仲間を気遣っている目の前の軍人に軽く手を挙げて、そこから一目散に逃げ出した。
「あ、待てっ!」
 途中、何発か発砲の音が聞こえたけど、時すでに遅し、俺はもうすでにあいつらでは捕らえられない暗闇の中へと消えていた。




「ここまで・・・、というか元から追ってきてないか」
 俺は大して切れてもいないが一つ息を吐き、辺りの様子を窺う。辺りの通路は何か来た時と違和感を感じさせる。
 ・・・・マズった。道を間違えて、さらに奥に来てしまったようだ。
「はぁ・・・・、失敗した」
 俺は自分へ多少の情けなさを感じながら、今来た道を戻ろうと振り返り、足を前に出した。
「・・・・・・?」
 と、そこで俺は視野の端にあるものを発見し、その場に踏みとどまる。
 そして俺は再び振り返り、そのあるものへと歩を進めていく。
「・・・・・ふぅん」
 俺の目の前には、まるで病院の集中治療室のように重い扉がある。黒く鈍く、入るなと語りかけてきそうなぐらい不気味な扉。
 ・・・・・怪しい。
この扉の先には何かがあると俺の直感が告げている。
 外見もそうだが、扉を開けるためにはパスワード付きってところも怪しすぎる。
 絶対に、この扉の向こうには何かがある。
 そう確信した俺は、辺りに誰もいないことを確認してから、数字入力式のパスワード入力機に手を掛けた。
 当然ながら、適当に入力して解除されるわけがない。最悪の場合、警報が鳴る可能性すらある。
 だから、ここは俺なりで――――、
 俺は内ポケットから取って置きの品を取り出すと、パスワード入力機のプラグに差し込み、スイッチを押した。
 ポチッと。
 ・・・・・・・・・・・・・・・シ―――――――ン。
「あれ?」
 俺はその事態に多少動揺した。
 これで解除されるはずなんだけど・・・。
 今度のは一筋縄ではいかないらしい。だが、そこがさらに怪しいってもんだ。
「・・・・・・・仕方ない」
 ちょっと荒っぽいけど、まぁ大丈夫だろう。近くには誰もいないし。
 俺はポケットの中から、取って置きその2を取り出して、パス入力機に取り付けた。




 ドオォォォォォォォォン。
 と、いう轟音が室内に鳴り響いた。・・・・・やっぱマズかったかもしれない。
 俺は隠れていたそこら辺の柱から顔を出し、扉の様子を窺った。
 当然のような気もするが成功。パス入力機は大破。これなら扉は手動で開けられるし多分警報も鳴らない。警報以前のような気もするが。
 だが、あの重い扉を俺の腕力だけで開けるのはまず不可能だろう。
 なら―――――、
 俺はホルスターから銃を取り出すと、内ポケットから一つの弾を取り出した。
取って置き3、ってところか。
 もう大きな音は立てちまったし、さらに鳴らしても大して関係ないか。幸いにもこの近くに人はいないし。
 流れるような動作で弾を銃に装填すると、そのまま扉の中心に銃身を向けた。
 そして、引き金を引く。
『クラッシュブレット Crash Bullet 』
 銃身から放たれた弾は、瞬きする間もなく扉にぶち当たり、

―――――――ゴォォォォォンという轟音と共に分厚い扉を粉砕した。

「よし・・・・・」
 俺は崩れた扉の瓦礫を踏みつけながら、部屋の中に進入した。
「・・・・・っ!」
 部屋の中に入った瞬間、眩い光が俺の目の前に広く展開され、咄嗟に目を閉じた。
 次第に目を慣らして回復してきた視力を感じつつ、徐々に目を開けていく。
 まだぼやけていて完全には見えないが、どうやら暗い通路にいたためか、この部屋の通常の明かりですら眩しく感じてしまったらしい。
 もう完全に慣れた目を見開き、部屋の中の様子を探った。
 部屋はだだっ広く、壁も天井も真っ白で天井にはシャンデリアのように大きなライトが幾つも埋めこまれていた。これじゃホントに病院の集中治療室だ。
他には何かの機械、どうやらコンピューターのようだ。
(これは・・・・・)
 画面を見て俺が連想したのは、手術のときなどに使われる心拍数を計測する機械だ。線が波打つように画面を走り、それを延々と繰り返している。
 他にも多彩な種類のコンピューターと連動していた。
 不意に足元に目をやってみる。この機械から幾つものコードが伸びていて、部屋の中央にあるあるものへと繋がっていた。
 まぁ、俺もそれが一番気に掛かっていたんだが。
(何なんだ、これは・・・・・)
 部屋の中央には、巨大な円柱がまっすぐに天井近くまで伸びていた。見たところ、この中には何かが入っているようだ。
 どうやらこれが、パスワード付き厳重ロックまでして守り抜く物の正体らしい。しかしこれは何だか俺には理解不能だ。だが・・・・。
(ここまで来たんだし・・・・)
俺はこのコンピューターのキーボードに手を掛けた。
(この中身が何なのかぐらい確かめてやる・・・・・)
 このコンピューターはこれ専用になっていてこの機械の解除方法については一分も掛からずに探し出すことが出来た。そのデータを表示させようと試みる。が―――、
(・・・・・プロテクト・・・・)
 このデータも外と同じパスワード式になっていた。データまでプロテクトとは随分厳重ロックな事だ。
 さて、どうするか・・・・・。
 多分この機械にもさっきの取って置きは効かないだろう。それに警報を鳴らされる可能性も十分にある。
 ・・・・・・・・・・・・・・。
 迷っていても仕方ない、か。
 俺は再び取って置きを取り出して、プラグに差し込み、スイッチを押した。
 ・・・・・・・・・・・・・・・静寂だけが、辺りに漂う。
 思ったとおり、パスワードの解除は出来なかった。が、警報が鳴らなかったことは幸いだ。俺の機械の完成度が高いのか、この機械の耐性が弱いのか。
 まぁなんにしても、どうするか・・・・・。
 刹那、

 ―――――――ドクン。

「――――――!」
 隣にあった心拍数計測装置の線が先程よりも大きく波打ち、高く心音を鳴らした。
 俺は慌てて心拍数計測装置の前に移動し、その画面を眺めた。
(何だ・・・、今のは・・・・)
 今は先程と同じ様に安定した心音を奏でている。
 俺は少しの間その様子を眺めて、振り向いた。
 謎の機械へ。
(何だ、これは・・・・・、何が入ってるんだ・・・・)
 俺はゆっくりと、機械の方へ歩を進めた。途中、コードに足を捕られそうになったが、構わず機械だけをまっすぐに見つめる。
 そして、機械の元へたどり着いた。
 その巨体を上から下まで眺める。動く気配も何もなく、動作してるのかすら分からない完全にただそこにあるだけの存在。
 それは、どこか切なさを帯びているような、そんな気がした。
(・・・・・・・ん?)
 俺は、表面に文字が彫られていることに気づいて、その文字を見ようと不意に機械に手をついた。

 ―――――――――――――ドクン。

「―――――――!!」
 また先程と同じ様に、高く心音を鳴らした。しかも、今度はコンピューターからではない、この機械からだ。
「な、何だ!?」

 ―――――――――ドクン、ドクン。

 心音は、大きく鳴り続ける。まるで何かを訴えているかのように。
「何だ、何が起きてるんだ!?」

 ―――――ドクン、ドクン、ドクン。

 だんだん心音は早まり、静かにしかし大きく部屋の中に響き渡る。
 そして―――――、

『―――!!』

「―――――――!!」
 声が、聞こえた。
「今の、は・・・・・・」
 ただ何か甲高い声、とでも言えばいいのだろうか。聞こえただけ。俺には全く理解できなかった。何を言ったのかも、何を伝えたかったのかも。
 一つ、分かったことは、

 ―――――――この中には、何かが“いる”。

 “物”ではない“者”だ。“ある”のではない“いる”のだ。
 俺にはこの事実が理解できた。そして同時に、この中の存在が何を言いたかったのかも、次第に理解できてきてしまった。
 きっとこの中の存在は、“助けて”と言いたかったのではないだろうか。不思議と脳裏にそんな考えが浮かんできた。
 何故かなんて分からない。根拠なんてミジンコほども無い。だけど―――、
(・・・・・・)
 考える時間なんて必要なかった。俺の心の中では、すでに自然と決心がついていたのだから。
 俺は、その機械に再び手をついた。もう、先程のような声は聞こえてはこない。
 声の聞こえる聞こえないは関係ない。俺は機械の表面をコンコン、と軽く叩く。硬い鉄の感触とすぐに消えた音。どうやら相当頑丈に出来ているようだ。
 好都合。
 ガシャ、という重い銃の音と共に俺は銃身を目の前の巨大な機械に向けた。これだけ丈夫に作られていれば、中の人(?)を傷つけることもないだろう。
 俺は、この機械を―――――壊す。
 パスワードが分からない以上これしか方法がない。いや、あるのかもしれないがこれが一番手っ取り早く、俺好みのやり方だ。
 俺は目を細め、機械を上から下まで隙間なく見据える。そこにある“あるもの”を発見するために。
「・・・・・・・・」
 ―――――見つけた。
 俺は、発見した位置へと銃口をずらす。
 深く息を吐き、集中を高め、狙いを定めて、一呼吸に、
『クラッシュブレット Crash Bullet 』
 撃った。
 ぶち当たった銃弾は、機械の鋼鉄に負けることなく、貫通して機械に小さな穴を開け、勢いそのままに天井に突き当たった。
 弾は、轟音を立てて天井に大きな傷跡を残し、静止した。
 そして、何事も無かったかのように、静寂が部屋の中に訪れる。
 が、それも一時しか持ちはしなかったようだ。

 ピキッ。

 という音が、部屋の静寂を突き破る。その音は、そう、まるで船に亀裂でも走ったかのような音だった。

 ピキッ。ピキピキ。

 音は次第に大きくなり、軋む回数の間隔も狭まっていった。

 ピキピキピキピキピキッ。

 それはまるで、一つの巨大な卵の殻が割れるかのごとく、

 ドゴォォォォォォォォォォン。

 最後に低い音を立てて、目の前の機械が粉砕した。
 ガラガラと、機械の破片が宙を舞い、重力に従い、力無く落ちていく。
 やがて最後の破片が地上に降り立つのを見計らってから、俺は一時前まで機械があった場所を見上げた。
 するとそこには―――――、
「・・・・・あれ?」
 何も無かった。
 粉々になった先程聞こえた声の主はおろか、機械の破片すらも無く、ただ奥の白い壁だけが俺の視界に入っている。
「なんでだ、なんで何も無い?」
 俺は多少の混乱状態に陥った。確かにクラッシュブレットで外装だけ破壊したはずなのに。
(・・・・・・・・・・まさか)
 声の主も一緒に貫いちゃったとかっ!?
 あのクラッシュブレットに当たれば、そりゃまぁ粉々にもなるだろう。いやでも、確かに外装だけ破壊したはずだ。破壊した穴の隙間から人の姿なんて見えなかったし。つーか人じゃないかもしれないけど。
 俺が必死に考えを張り巡らせていると、
「・・・・・・ん」
 不意に、声が聞こえた。
「・・・・・・・・!」
 もちろん今の声は俺ではない。だが、この部屋には俺以外の人間はいないはずだ。あくまではずだが。
「どこだ・・・・・?」
 俺は、慎重に辺りを見回す。敵兵の可能性も十分に考えられるのだ。先程からかなりここ留まっているし、もうそろそろ来てもおかしくないくらい時間も経っている。
 思わず手にしている銃に力が入った。俺は、入り口の方に全身を向け、銃を構える。いつ敵が来てもいいように。
(さぁ・・・・・、来るなら、来いっ)
 そして次の瞬間―――――!
 つんつん。
「うおわぁぁ!!」
 俺は何者かに脇腹をつつかれ、奇妙な声を出し、文字通り飛び上がった。
「な、なななな、なぁっ!!?」
 全く見当違いの方向から、別の意味で鋭い攻撃を受けて、俺は完全な錯乱状態に陥った。
「な、なんだなんだなんだっ!!?」
 攻撃?敵襲?何故俺の弱点を知っている!?
 俺はやばいくらい動悸が激しい心臓を手で抑えながら、その行動をとった主の元へと振り返る。
 そこには、
「・・・・・・・・・」
 俺はその姿を見た瞬間、錯乱状態から開放されていた。
何故だか、理由は簡単だ。

 ―――――目の前にいた女の子に、見惚れてしまったから。

後編へ

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: