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「おいー、まーだーかーよー。」 「はいはい、待って。」 「って、さっきからそればっかじゃねーか。」 やりとりを重ねるごとに、ベッドの青年の口調は拗ねを漂わせていく。 「もう少しだから。」 キッチンからは穏和な響き。 調理の手を止めた後姿が振り返り、屈託のない笑みが投げかけられていたが、 そうされるほどに青年は、むしろ宥められまいと頑なになっているかに見えた。 なぜなら笑みだけに留まらず、声音も、仕種も、全てにおいて柔らかなそれらが、 しきりに青年へ呼び起こさせていたのだから。 少し前まで腕の中に在ったその女性の温もりを、香を。 重ねあった素肌の感触を。 青年の城 ━ 小さなワンルームいっぱいに広がった甘いばかりの囁きを、 震う吐息を。 そして、絡め合い、繋ぎ合った全身で分け合った狂おしいまでの官能を。 「おい、ふみ、もうおれは待てねえぞ。 おまえが来ねーなら、おれが行く。襲いに行くからな。」 「ええー、今襲われたら困るわ。 手料理食べたいって言ったの、犬夜叉でしょ。私だって、あなたに食べさせたい。 いつも一人でろくなもの食べていないんでしょうから。」 「そりゃそーだけど・・。今はメシよりふみのこと食いてえ。」 「さっきしたばかりです。」 「何回したってかまわねえだろー。来いよー。」 「私、お洗濯もして行きたいのよ。」 「洗濯は、あとでちゃんとやっとくから。」 「だーめ、毎回そう言うのに、 来てみれば溜め込んだままなんだから、犬夜叉は。」 「ふみー。」 「仕方ないじゃない。時間が」 「だからさっきから呼んでンじゃねーか。 早くしねーと、おまえが帰っちまう時間に・・・・」 「・・・・・・・。」 「・・・・・・・。」 |
| * | 受け答えのつもりが、いつしか混ざり込んでいた禁句。 気づけば胸にはキュンと切なさ。沈黙が訪れる。 「帰るな」「おれだけのものになれ」 今にも青年の唇に、そう呼びかけられそうで、 咄嗟に視線を落とすと、薬指には外せどもクッキリと残る指輪の痕。 だからこそ弾ませた声。 「そっち・・・、行こうかな、私。襲われないうちに。」 それは、脱せずにいる禁断の関係への 「ごめんね」の代わりだったのかもしれない。 そして 「おう、つべこべ言ってないで、早くしろ。」 響き渡ったぶっきらぼうな返答は、失言を蹴散らし、 まるで女性を守ろうとでもしているような・・・・ 限られた時間であっても、育める愛情があるのだと、 語りかけているようにも聞こえた。 「きゃっ」 「へへ、捕まえた。」 ベッドへ近づけば、不意に引かれた手。 瞬く間に女性は、力強い腕の中へ逆戻りとなっていた。 「もーう、犬夜叉・・。」 「残念、どっちにしろ、襲われちまうんだって。」 「バカ・・。 あ、ねえ、お洗濯のこと、約束よ。 それから、ご飯、あとでちゃんと、・・ん・・・」 紡まれる続きすら待てないと主張する青年の唇は、 重なり合う唇を味わいつつ、「わかった」と囁いた。 「ん・・ッ、ふみ・・・。 ん?・・・え゛?・・・・・ああ~?」 「どうしたの?」 「なんか・・・コゲ臭くねぇ?」 「え・・・・・? ハッ!ああ~~、お鍋!!」 キッチンへ駆けつけるや否や、きゃきゃーと声。 「どうしよー」 連発してはベソにも似た表情。 少女のごとくあわてふためく年上の女性(ひと)を見つめる顔は、 和らぎ目尻を下げていく。 「ごめんなさい、私、ちょっと行ってきます。」 「え!?お、おい・・・、ふみ?」 慌しく玄関を飛び出した女性が残した言葉に、 青年は微笑ましさのあまり、更に目尻を下げていた。 幸姫 : あ、あれ? ふみさま行っちゃったよ? 紫石英 : 一体どこへ? 金華 : 買い物・・・(ぽそ)。 紅蓮 : 材料買って作り直すのか・・。偉いな。 翡翠 : 犬夜叉のためだからねー。 金華 : うん。でも材料だけじゃないの。・・・・鍋も。 みんな見る?どんな鍋か。 ここクリックすると見られるよ。→■ (鍋の絵はありません。犬夜叉のような耳つき鍋の絵をご想像下さい) 見た者 : ・・・・・・・・・・・(バタバタバタバタ)ヤベエ、閉じろ! 愛染 : 金華、これってヤカ・・ン(モゴモゴ) 全員 : (愛染を羽交い締める・口を塞ぐ) BloodyMary一同 |