DarkLily ~魂のページ~

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ドラゴン、街へ行く・第六話



 肘にバスケットをかけて、両手にポットとカップという格好で部屋を訪れると、開けっ放しの扉の向こうで、ソファーにちょこなんと座り込んだ女の子が、興味深げに壁や天井を眺めていた。

 何がこの子の琴線に触れたものかと、つられて視線を巡らせたけれど、これといって変わったところは見いだせない。

 うー、なんとなく残念。

 女の子は、人が入ってきたことに気がついて、一瞬、慌てたみたいだけれど、ぴょんというのがぴったりな様子で、まさにソファーから飛び降りると、ぺこりとお辞儀をした。

 ほけーっと天井を眺めていたときの印象よりも身のこなしは軽いみたい。

「あ、ごめんね、僕は、お茶を運んできただけだから、担当者が来るまでもうちょっと座って待ってて」

 コクリ。

 再びソファーに収まった女の子の前にカップを置いてお茶を注ぐ。

 その間、女の子は意識のし過ぎでカチカチになっていた。

 気の毒に、知らない場所で、知らない人の傍じゃ落ち着かなくても無理ない。

「お茶とあと僕からの差し入れ、パンも食べてね」

 多分、お腹がすいているのかな、バスケットをチラッと見て、けれど、すぐに目をそらしてしまった。

 あらら、でも気になっているのはダダ洩れだよ。

「ほら、遠慮しないで」

 中が見えるようバスケットを傾けつつ女の子に突き出して、にっこり、強引にすすめる。

 押し切られた女の子は、おずおずと丸いパンを取ると、両手で捧げ持って口元へ。食べるのかと思いきや、スンスンと匂いを確かめている。嬉しそうに若干ほころんだので、美味しそうだったのだろう。パンは、ちぎったりせずにパクリ、そのままほおばって、まぐまぐしている。その仕草は、どこか小動物を連想させた。

 見ているだけで謎の満足感がある。

「うぅ、実に残念だけれど、まだ仕事があって行かなきゃなんだ、もう少ししたら、さっき会ったおじさんが来るから、それまで待っていて」

 コクン。

「パンもお茶も好きなだけお代わりしていいからね、それじゃ」

 女の子の頷きに微笑み返して、部屋を後にしようとしたら。

「あ、あの・・・」

 これが女の子の声か、何気に初めて聞いた。

「ありがとうございます」

 ふふふ。

「いやあ、役得、役得」

「どうした、入ってくるなり」

 隊長に怪訝そうな顔をさせることに成功して、さらにほくそ笑んでいると。

「まあいい、急いでこの封書を届けに行ってくれ」

 えっ。

「これは、緊急事態発生を伝えるため専用の・・・」

 ちょっ、あの子は大丈夫なのか。

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