・菅原道仁『すぐやる脳』は、脳科学の知見をベースに「先延ばしをやめ、行動を起こすための仕組み」を解き明かす一冊だ。対象は日々の意思決定に追われるビジネスパーソンであり、「なぜやるべきことを後回しにしてしまうのか」という問題に対して、科学的な根拠と実践的な方法を提示している。
・テーマは「人間の脳はそもそも“すぐやる”ようにできていない」という現実から始まる。脳には大きく分けて二つのシステムがあり、計画を立てる前頭前野と、現状維持を好む扁桃体がせめぎ合っている。扁桃体はリスクや不確実性を避ける本能を司り、これが「先延ばし」を生む要因となる。
・菅原はこの対立を乗り越え、「やるべきことを自然に実行できる脳の状態」をつくるためのプロセスを提案する。具体的には以下のポイントに集約される。
・小さな一歩を刻む設計 脳は大きなゴールより “ 小さなタスク ” を好む。 1 分で終わる行動を決めることで、扁桃体の不安信号を回避し、行動が加速する。
・ドーパミンの仕組みを利用する 行動に報酬を与え、快感をリンクさせることで「やる気」を後付けで生む。やる気は行動の前提ではなく、結果として生まれるものだ。
・不安を認識し、分解する 脳が危険と判断する曖昧さを潰すため、情報を細分化し、「何をすれば安全か」を可視化する。
・意思ではなく“仕組み”で動く 意志力は有限である。環境設計や習慣化で、判断を減らし、自動的に動けるシステムを構築する。
・ビジネスパーソンへの示唆
この本は「やる気を出す方法」を説く本ではない。むしろ「やる気に依存しないための方法」を科学的に示している。プロジェクトが停滞する理由、戦略が実行されない理由の多くは、意思決定における脳のクセに起因する。 本書のポイントを取り入れることで、
- 会議で決まったことが実行されない現象
- 重要なのに緊急でないタスクの後回し
- 個人の成長を阻む「そのうちやる」病 こうした問題に構造的に対処できる。
・『すぐやる脳』は、行動力を「性格」ではなく「脳の仕組み」で捉え直し、実践的なトリガーを提示する一冊である。 30
〜 40
代のビジネスパーソンにとって、意思に頼らない “
即動の設計 ”
は、リーダーシップやキャリアの加速に直結するだろう。
すぐやる脳 [ 菅原道仁 ]
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