・辻村深月『この夏の星を見る』は、現代の子どもたちを取り巻く教育と社会のプレッシャーを、瑞々しい筆致で描き出した青春長編だ。舞台は、小学校の天文クラブ。ひとりの少女・星野が、新しい担任の導きによってクラブに参加し、仲間とともに夏の夜空を見上げる物語を中心に展開する。
・転校生の星野は、学校に馴染めず孤独を抱えていた。そんな彼女を気にかけた担任は、放課後の天文クラブに誘う。そこには、学業や家庭の事情、対人関係に悩みを抱えながらも、自分の居場所を見つけようとする子どもたちが集まっていた。
・やがて、クラブは夏の合宿で「星を見る」活動を計画する。しかし、親や学校の期待、成績競争や社会の枠組みが、彼らの小さな自由を容易に奪っていく。子どもたちは、自分が「見たい星」を心の中に守り抜けるのか、それとも現実の圧力に押し潰されてしまうのか――物語は、成長と選択の瞬間を鮮やかに描き出す。
核となるテーマ
- 教育と競争の重圧 子どもであっても、社会的評価や期待が強くのしかかる。
- 居場所と共同体 星を見上げる時間が、他者とつながる唯一の拠り所となる。
- 希望と抵抗 現実に押し流されそうになりながらも、心に星を宿すことが生きる力になる。
・この物語が投げかけるのは、決して子どもだけの問題ではない。大人の社会においても、数字や成果に縛られ、個々人の「星を見たい」という純粋な欲求は後回しにされがちだ。組織における人材育成も同じで、枠にはめ込むことばかりを優先すれば、芽吹くはずの才能を潰してしまう。
つまり、「星を見る」という行為は、成果や効率を超えた人間的な営みの象徴だ。目の前の KPI
・『この夏の星を見る』は、教育の現場を舞台にしながら、子どもも大人も変わらず抱える「心の居場所」と「希望の光」を描き出した物語だ。夏の夜空に広がる星々のように、一人ひとりの願いは小さくとも確かな輝きを放つ。組織や社会の中で生きる我々にとっても、自らの星を見失わないことが、未来を切り開く力となる。
この夏の星を見る 上下巻セット [ 辻村 深月 ]
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