・越川慎司『仕事ができる人のパワポはなぜ 2 色なのか?』は、プレゼンテーション資料を単なる「見た目」や「デザイン」ではなく、戦略的なコミュニケーションツールとして捉え直すための実践書だ。著者はマイクロソフト日本法人で Office 製品のエバンジェリストを務めた経験を持ち、企業研修・コンサルティングを通じて、何百人ものビジネスパーソンの資料づくりを見てきた。その中から導き出したのが、「本当に仕事ができる人は資料を “ 装飾 ” で勝負しない」という現実である。
・越川は「プレゼン資料は飾りではなく、意志を伝える道具」という立場を徹底する。その象徴が「 2 色」というルールだ。ビジネス現場で最も効果的だったのは、派手なグラデーションや過剰な写真ではなく、視覚的負荷を下げ、メッセージを際立たせるシンプルな配色だった。色を絞ることで、聴き手の認知コストが減り、メッセージに集中できる。
・色は多くても 2 色
基本色+強調色に限定し、意味を明確に使い分ける。たとえば「通常」「強調」など認知パターンを固定する。
・ 1 スライド 1 メッセージ
複数要素を詰め込まず、主語・述語を簡潔に、図や箇条書きで直感的に見せる。
・ビジュアルは情報整理の道具
デザインは飾るためではなく、論点・関係性を整理して示すために使う。
・「相手の行動」をゴールに置く
資料の目的は「理解」ではなく「行動喚起」。誰に何をさせたいかを先に決め、それに沿って構成する。
・時間軸でのストーリー設計
冒頭で結論、次に理由、最後に行動促進というように、相手の思考プロセスに合わせる。
あらすじ的構成
・本書は、著者が大企業でのプレゼン現場やコンサルの経験をもとに、典型的な「悪いスライド」から「良いスライド」への変換事例を多数示す流れになっている。前半は「なぜ多くの人がパワポで失敗するか」を心理学・認知科学の視点から解説し、後半は「 2 色ルール」「 1 スライド 1 メッセージ」「行動設計」などの具体的テクニックを実践手順として展開する。単なるデザイン本ではなく、資料作成そのものを “ 戦略思考 ” に変える内容になっている。
・管理職やプロジェクトリーダーの立場では、資料づくりが自分の仕事の中心でなくても、意思決定や他部門との交渉を通すためにプレゼン資料が重要な武器になる。この本は「美しい資料」ではなく「伝わる資料」を短時間で作る技法を提供しているため、時間と成果の両立を迫られる中堅層にこそ有効だ。
・この一冊は「資料づくりを最適化し、メッセージを戦略的に通すための“思考”の本」。色やフォントの話に見せかけて、実は相手の認知と行動を設計するフレームワークを教えている。
仕事ができる人のパワポはなぜ2色なのか? [ 越川慎司 ]
価格:1,540円(税込、送料無料)
(2025/8/29時点)
Book #0927 ヤバい経営学 世界のビジネス… 2025.11.13
Book #0926 戦後経済史 私たちはどこで間… 2025.11.12
Book #0925 日本史で学ぶ経済学 2025.11.11