暗い。それが最初に受けた印象だった。
怪しいカーテンは取り払われ、窓からは月が望めた。

夜だ。

時計は9時を指していた。
とっくに下校時間は過ぎていた。

帰らなきゃな。
体を起こす。

しかし。
視界が霞む。

眼前に明かり。
だれか、いる?

「体、大丈夫?」

その、誰かから声。

かなり否定する。
まるでクスリでも飲まされたように視界がぼやけるのだから、そんなはずはない。その症状を訴える。

奴は緑茶を持ってきた。
ただし、ビーカーにいれて。

絶対怪しい!!
はっと何かがよぎる。

さっきの紅茶に毒か睡眠薬でも入ってたのか!
まさか寝てる間に体に怪しいチップが・・・!

必死で手術痕を探す。
しかし痛みはない。頭のたんこぶ以外。
だが油断は禁物だ。麻酔か何か神経系を麻痺させるクスリを使ったのかもしれない。

必死で手術痕を・・・

「ごふうっ!」

思わず叫ぶ。
俺のわき腹に、拳がささっていた。

「・・・何のマネ・・・?」

かなりご立腹の形相。
あわてて機嫌伺い。

「いや、あはははは・・・」
情けないが言葉が出ない。

「あたしの茶が飲めないの?」

「いえ、めっそうもない!有難く薬漬けにさせて・・・」

あっ!

禁句を口にしてしまった。
俺としたことが。
見る間に形相が。

ふっ!ふっ!おうりゃあ!!

掛け声とともに壁に飛ばされる。

「見事なジャブ、右フックだ・・・」

「通常攻撃よ。」

・・・殺される日も近い。

とうとう飲まされる瞬間が来た。
奴がビーカーを持ってこちらに向かってくる。
きっとむりやり押し込まれる・・・
身構えた腕をつかまれる。

・・・ほら来た!

って・・・・あれ?

拍子抜けする。
俺を起こそうとしているのか腕を前に引っ張っている。
しかも力がないのか起こせずにいる。
なんだかホントに拍子抜けだ。

「自分で起きれるよ。」
起きて自分で診療台?に座る。

ビーカーが手渡される。
やっぱり恐い。
躊躇する。

ぼそりと。

「・・・・・薬も毒も無いから・・・。」

しぶしぶとビーカーに口をつける。
もし普通の茶でもビーカーで飲むのは嫌だ。
躊躇する。

「・・・ちゃんと洗ってあるから。」

「・・・・・・・・・。」
どうやら俺は覚悟を決めなければならないらしい。

一気に飲み干す。

「・・・美味い。」
それが俺の第一声だった。

「最高級品だ。」

「なるほど。」
たしかに美味い。このほのかな甘みと渋みがなんとも・・・
しばし感動にひたる俺に。

「粉末インスタントだ。」
さもおかしそうに大声で笑う。

プツン、と何かが切れた。

「クソッ!ムッカツク!!化学部員の分際で!」

プツン、と音が聞こえた。

「逆切れすんなハゲ!あたしのなまえは中山雪見だ!」

・・・ハゲ・・・?

「あのよぉ、雪見大福さん、ハゲって・・・」

「あんたしかいないでしょ。」
きっぱりと、はっきりとそう告げられる。

「自慢のサラサラヘアを見ろ!お前の目は節穴か!俺の髪は女子の間でなぁ
 ・・・・」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

30分経過。

すっかり言うネタも体力も尽きて沈黙が場を支配していた。

「やるな、ハゲ。」
親指を力なく立てて化学部員もとい、中山が言う。

「ハゲじゃねえ。辻曲神南だ。」
言い返す力も余裕もない。

「目、すっきりした?」

そういわれてふと気づく。
お茶飲んでから視界の調子がいい。

「目にいい成分混ぜたから。」

「おい!」

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