完全に言い争いが終わったのは10時を過ぎてからだった。
守衛さんにケンカを仲裁されて、急いで松本の家へ急ぐ。

学校からだと寮までは大体20分ってところだ。
5月とはいえ、夜はカッターシャツ一枚だと少し寒い。
自然と早足になるのを自覚する。

目標到着時間よりも7分も早くついていた。

夜遅くなのに相変わらず大音量で音楽が掛かっている。
遠慮もなくドアを蹴っ飛ばす。

バターン!と。
大きな音をたててドアが開く。

ドアぎわは出しそびれたゴミであふれかえっていて、辺り構わず飛び散っている。

きっとドアが重く、かつ凄い音がしたのはこれらが入り口を封鎖していたせいだろうと容易に察することができた。

それを見て、住人は口を尖らせている。
そんなことはさておいて・・・

酷い部屋だ。

自分の生活スペースを確保すべく行動に出る。

腕まくりをして・・・
玄関先においてあったちゃぶ台に手をかける。

なにやら叫んでいるようだが問答無用!

ずががががががががが!!!

ブルドーザーの腕のようにそそり立ったちゃぶ台を境に
モノたちが押し込められていく。
まるで俺に道を譲るかのように。

途中
バキッ!やら、
ギョリゴリ、やら、いやな音がしたが、きっと気のせい。

部屋半分を疾走したところで一息。
俺の走ったあとはとてもきれいになっていた。

いい汗かいたなぁ。
すっきりとした達成感のあと、することは1つ。

なにやら口をパクパクさせている宿主に言う。

「女子マル秘データ、見せてくれ!!」

まるで聞いていないようなそぶりも、気にしない。
机の上のパソコンへ直行!

スイッチオン!
ぽちっとな!!

ウイィィィィイン・・・・
起動音。

ターゲット、ロックオン!
即座にCドライブを開ける。

大事なものは、そこの最深部に隠すものだと書いてあった。
・・・エロ雑誌で。

ビンゴ!!

jyosi-dateと銘打たれたファイルが出てくる。
ダブルクリックする。

が、開かない。

拡張子、lzh。
聞いたことがある。
圧縮とかなんとかいうやつだ。
・・・分からない。

諦めて別ファイルを探す。
またあった。
しかし・・・

「パスワードだぁ!?」
ふざけやがって!開こうとするとそれを要求するウインドウばかりが立ち上がる。

クソッ!
自分の力量を恨む。

仕方ない。
最後の手段だ・・・

「オイ!」

ぐいっと胸ぐらを掴む。

「パスワード解除しろ!!」

――――――

怯えながら。
奴がパソコンに向かう。

ちょっと時間はかかったがなんとか見れるようだ。

椅子をぶん取りモニターに向かう。

「うを!マジでスゲェ!!」
思わず叫んでしまう。

なんとデータは全女子載っているし、身長、体重、スリーサイズ、趣味まで載っている。

一部にいたっては詳細情報もある。
注目株には赤字でリンクが貼られている。

まずは同い年から。
つぎつぎと赤字をクリックする。

「をををををををっ!!」

おれの知らない美少女がたくさん!!
おとなしい女子の掘り出しモノが!!

結構おとなしいコって見逃しがちなんだよなー・・・。
脳内にチェックする。
今度見に行こう!

どんどんクリックを進めていく。
すると・・・

その場に似つかわしくないものが1つ。

どう見ても美人とは言いがたい、地味女。
長堀・・・とかいうやつ。

「何だこの、ジミな顔したしずかちゃんは!!」

ついつい叫ぶ。

ギロリ。
一瞬冷たい視線を感じる。

睨まれている。

気まずい沈黙。

そしてそのあとの笑顔。
・・・張り付いてる・・・

「ゴメンゴメン!リンクの貼り間違い!!」

叫んでそそくさとリンクを訂正される。

なにかあるな・・・?
しかし、そこは黙っておく。
そのかわり、名前をしっかりとひかえておく。

長堀 綾芽・・・っと。

そ知らぬふりでどんどんページを読み進める。

すると。

男女。

謎の名前発見。
リンク色は赤ではない。

しかし・・・

気になる!!
俺の心はそう訴えていた。

ぽちっとな!

リンクが開かれる。

ある文字が目に飛び込んできた。

パンチラ写真、一枚1000円!!!!!

・・・・・。
・・・・・・・・・・。

何だ・・・これは?

一枚の顔写真と一般的なデータと3サイズのみのページに、それのみが大きく書かれている。

あまりのインパクトに閉口していると、松本が口を挟んできた。

「そいつのマニアにパンチラ写真が高く売れるんだよな。」

・・・沈黙の末に、俺は戻るキーを即座に押した。

__________

世の中には理解しがたい趣味を持つやつがいるものだ。
床につきながら先の男女のデータに思いをはせる。

松本はというと、床でなにやらぶつくさ言っている。

そんなに俺がベッド取ったことが不服なのだろうか?
まあ、いい。

バスト、70台。
ずん胴。
そんなののパンチラ。

いらん。

俺なら・・・

妄想が駆け巡る。

ちょっと興奮して眠れなくなる。
松本に話をふってやる。

「オマエの好みの女ってどんなのだ?」

すると即答で返ってくる。

「金髪碧眼爆乳美女!!」

こういう話には乗ってくる。
こいつはこういうやつだ。

だから俺も答えてやる。
さっきの妄想の美少女の姿を・・・
「俺はなあ、おとなしくて巨乳で色白で美人で優しくて面白くて・・・」

_____________

気がつけば朝日が俺たちを照らしていた。
夜通し語ってしまったようだ。

「不毛・・・だったな」
互いのくまを確認しながら呟く。

いまからでも遅くは無い。
睡眠をとろう。
お互いに考えは一緒で、カーテンを閉じて布団に潜る。

しかし・・・

ドンドンドン!!!!!!!!

ドアを叩く音。

ドンドンドンドンドン!!!!!!!!

五月蝿く鳴り響くそれに応えるべく。松本がのそりと起き上がる。

その瞬間も絶えることなく鳴り響くドア。
早く止めさせろと目配せする。

しぶしぶと足を早める松本・・・

が、えらい目にあった衝撃の瞬間を俺はまのあたりにしてしまった!

ドアが勢い良く松本に向かって倒れてくる。
下敷きになる松本。
そのドアの上に立つ来訪者・・・

中山 雪見だった。

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