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空想科学少年2
潮の香りが鼻腔をつく。
佐世保から一晩。
早朝にフェリーは大阪南港へと到着した。
長崎以外の土地に立ったのは初めてだ。
一人で出かけるのも初めてだ。
自然と足が浮わつく。
田舎モノなのだろうか?
きょろきょろと、フェリーターミナルを往復する。
絶対今の俺、挙動不審者だ。
街でなくて良かった。
即事情聴取モノだ。
まだ、迎えは来ない。
ただ待つのも空しいから、売店で何か買うことにした。
陳列棚にへばりつく。
真っ先に目に飛び込んできたのがコレ。
たこ焼き!
さっすが大阪!
納得しながら商品を手に取ったその時。
同じ商品の端を掴む手。
はっと手の主を見る。
時が止まった。
お・・・俺が2人・・・!?
もう1人の俺がそこにいた。
でもよくよく見ると。
俺にはないものが1つ。
胸。
さらにスカートはいてるし。
まさか・・・
まさかのまさかだった。
相手はよぅ!と軽く手を挙げて俺を呼ぶ。
弟――と。
――――――――
生まれて初めて見た姉は、ひとめでそれとわかる風貌だった。
うりふたつ、とかいうやつだ。
不思議なものだ、と思う。
別々の環境で育ち、全く違う親に育てられたのに趣味は同じ。
クラブも化学部。
ほぼ同じ。
ただ違うのは気の強さ。
明るさ。
その姉に連れられて今は姉の通う高校へと向かうため、電車に揺られている。
姉の学校の制服を着せられて。
途中、俺の町にはない地下鉄を乗り継ぎ、
大きな都会をいくつも通過する。
ああ、大阪なんだな・・・
痛感させられる。
南港を出てからいくらたったのだろう・・・
揺り起こされ起きたとき、そこは見たことも無いような所だった。
そこは
駅と建物が一体となって大きな箱庭のように見えた。
――駅ビルと学校が合体してるんだよ。
姉はそう教えてくれた。
とかく凄い設備だ。
駅からのアプローチを下りながらひとしきり感心し倒しだ。
ついきょろきょろしてしまう俺に注意が下る。
部外者ってばれるじゃない!!
はい、ごもっともです。
頑張って、頑張ってひた隠す。
学校と駅の境目で守衛さんが立っている。
その守衛さんににこやかに挨拶を交わし、学校内へ入って・・・数歩。
数歩のところで。
俺の挙動不審禁止令は解除された。
されなくてもきっときょろきょろせずにいられなかっただろうが。
外からの見た目以上に凄い学校だ。
俺の学校も県内有数の進学校で、設備は整っているはずだが、比較対照には全く出来そうに無い。お話にならない。
まるで大学と見まごうほどの建物と敷地面積。
きれいに植えられた並木道。
新しい校舎と独特の円形型の校舎・・・
きっと優秀な高校に違いない。
いよいよその校舎に潜入することとなる。
姉が校舎から手招きする。
胸の鼓動が高鳴る。
はじめての不法侵入。
俺は今日、犯罪者になった。
入ったところは食堂だった。
綺麗な食堂。
よく手入れされた観葉植物が置かれていて、壁に高そうな絵が飾られている。
整然と並べられた自販機と壁とが、白とベージュで統一されて、さらに高級感を漂わせている。
もはや、別世界だ。
きっと高い絵なんだろうな。
そう思って姉に聞く。
この絵、いくら位するの?
なぜかぷっ・・・と失笑される。
すごくむかついたから問いただす。
美術部の生徒作品だよぅ!
・・・なるほど。
よく見れば名前とクラスが書かれている。
少し自分が恥ずかしい。
照れ笑いが自然と沸いてくる。
一緒に笑う。
ホントの兄弟みたいだ。
すこしそう思ったとき。
「お姉ちゃんがおごってあげよう!」
にっこりと姉が告げる。
「うん!」
何の違和感も無く、返事が出来た。
その時俺は、彼女が姉であることを受け入れ始めていたのかもしれない。
―――――
うどん。
200円。
相当安い。
しかも、美味い。
涙がキラリ☆
感動モノだ。
それを見て、姉が笑う。
奢ってもらっておいて何だが抗議する。
「☆+*※〒≡◎¥☆!!!」
通じない。
それもそうだ。
口の中にはめいっぱい、うどんの麺が詰まっているのだから。
「飲み込んでから喋れ。」
冷たくあしらわれる。
感動の涙が屈辱の涙に変わる。
悔しいから一気に飲み込む。
と・・・
喉に詰まった!!!
「☆+*※〒≡◎¥☆・・・!!!」
屈辱の涙が苦痛の涙に変わる。
慌てて一気に水を飲む。
_______
かかる時間数分。。。
_______
「大丈夫~?」
そう言いながら、
姉がまだ咳き込む俺の背中をさすっていた。
・・・優しい。
親以外の人間に優しくされたことなんて思えば一度もない。
これが兄弟ってやつなのかな?
漠然と思う。
そう思うと、
ふいにポロリと涙がこぼれた。
「あれ・・・?」
なんでかは自分でもわからない。
止めようとしたが、止めようとするほど、涙は次々と頬をつたっていった。
あふれ出す感情。
心配そうにこちらの顔を覗き込む、姉。
そうか。
嬉しいのか、俺は。
「何か・・・あったんなら聞くよ。」
俺は姉の言葉に甘えることにした。
「実は・・・」
_______
俺は大阪まで来たいきさつを洗いざらい話してみた。
親のこと。
いじめのこと。
手紙を読んだこと。
そして父から言われた言葉・・・。
ひとしきり俺が話し終えた後、
姉はにっこり笑って、あっさりと言いはなった。
「じゃあ、こっちへおいでよ!」
「・・・え?」
あまりに唐突な答えに思考回路が止まる。
そんな俺のことはお構いなしに姉は続けた。
「ここって自由な校風だし、イジメとかもないと思うよ。
それに化学備品も充実してるしね。
いいと思うよ~」
ぴくり。
俺の好奇心がうずく。
「見たい?その化学部室。」
うずうずしている俺の内心を見破ったか、俺が言い出すより先に姉が言った。
俺は深く、こくりとうなずいた。
_______
思わず歓声をあげてしまう程、設備は凄かった。
生物実験室と物理実験室と化学実験室を3つ見せてもらったが・・・
まずは真空に出来る機械。
3台の遠心分離機。
カラムクロマトグラフィー
電気泳動装置
組織培養室
大きい暗室。
電子顕微鏡。
大量の薬品棚。
なぜか炎色反応を見るのに使う、アレ。
(なぜか生物・化学が特に充実していたのは姉の専門だから)
うちの学校ではあるだけで使わせてもらえないようなモノばかり。
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