四聖-夢氷月天-

四聖-夢氷月天-

壱「三」



一時間目、二時間目を雄吾と生徒会室で過ごし、それ以降の授業にもなんの変化もなく時間は過ぎていった。
全ては日常、いつも通りである。





月の光が雲で閉ざされた暗黒の世界。
1人の男がそこには存在した。
狭い路地を通り抜けると、そこにはテントで生活をするホームレスの集落があった。
集落には20人以上の人が住んでいる。
その集落を見ている男の元へ、まだ5歳にも満たないであろう女の子が歩み寄ってきた。
物欲しそうな目で見てくる女の子に、男はしゃがんで目線を合わせた。
「食べ物・・・」女の子が小さな声で言った。
「そろそろ飯時だな」
男はそういうと一度目を閉じてもう一度少女へ向き合った。
「飯の時間だ、食ってもいいか?」
「なーにー?」
幼い女の子は、首をかしげた。幼すぎる少女に今の意味を理解することは出来なかった。
ただひたすら、男の顔を見ているだけだった。

「やっぱり、ガキは食感が良いな」
さっきよりも幾分声が元気になり、男はすぐその場を去った。
足下には、赤い絨毯が徐々に広がっていった。
真紅の絨毯が。





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