告知~長い長い一日~
平成15年7月9日
朝から、雨模様。
ブブ香をパパのお母さんに預けて、イガ丸を大学病院に連れて行く。
イガ丸は病院が嫌いだ。
一度、この病院に救急でかかったことがあり、点滴をしたことを覚えていて「行きたくない!」と大暴れ。おまけに大雨で、駐車場から病院までの間びしょぬれになってしまう。
小児科外来に到着。調子の悪そうな子ばかり…
イガ丸はここでも大暴れ。「帰る帰る」とうるさいうるさい。
周りの人には(あの子どこが病気なのかしら?)と言う目で見られているような気がして何だか申し訳ない。
イガ丸の診察の番になった。先生にこれまでの経過を話す。
一通り私の話を聞いた先生は、順にイガ丸の身体を診察する。
思い切って聞いてみた。
「脳に何かがあるとは考えられませんか?」
ココでも先生は、
「う~ん、考えられないですねえ。もしも脳に何かがあれば、歩行障害が出たり、反射がおかしくなりますから。イガ丸君は所見では何もそういった所は見られませんよ。胃腸風邪じゃないでしょうかね。」という見解だった。
でも、私は引かなかった。
「せっかくココまで来たので、頭のレントゲンとかを撮ってもらうことはできませんか?」
大学病院なので全ての検査が予約制になっているので、今日の今日で検査ができるか分からないと言われた。もしかしたら、1週間後とかに再度来てもらうことになるかもと言われる。ところが、キャンセル空きが偶然あって、すぐに脳のCTを撮ってもらえることに…。ついてるぞ、イガ丸!!
3歳児のイガ丸にとって脳のCTを撮るのは非常に難しいらしく、眠るための橙色のシロップを飲まされる。イガ丸はとっても感受性の強い子で(何かあるぞ…)と思ったのかちっとも寝ない…。2杯目のシロップでようやく寝てくれた。
CT自体は5分ほどで撮れるのですぐ終わりますと言う話だった。ところがレントゲン室の外で待っていても、ちっともイガ丸は出てこない。うろうろしていたら、レントゲン技師の先生に呼ばれた。
「お母さん。イガ丸君はいつから頭が大きかったですか。どうやら水が溜まっているみたいです。吐いたりする症状が実際に起こっていますか?」と聞かれる。
頭は、小さい頃から大きめだった。パパがとてつもなく頭が大きいので遺伝だと気にしていなかった。
水が溜まっているって「水頭症」て病気かな?とぼんやり考える。
技師の先生は、詳しく検査をするために造影剤という物を使ってもう一度レントゲンを撮りますと、説明し再び部屋に入ってしまった。
30分位して、レントゲン室から出てきたイガ丸はぐっすりと眠っている。付き添ってくれた看護婦さんが、「先生が今から、大学の講義だから結果の説明が今日はできないから後日来てくださいと言っていましたよ。」と言っていたのに、小児科に戻ったら「すぐに先生から説明があります」と言われた。何だかただごとじゃないって感じ。
しばらくして別室に呼ばれた。
イガ丸の頭らしいレントゲン写真がかかっている。
素人の私には普通の脳に見える。
先生は一言、「脳にどうやら、できものがあります」と言った。
「できものって、脳腫瘍って事ですか?」と聞くと
「本当に申し上げにくいんですが、そういうことです。」と言われる。
正直に言って「何言ってるの?あんた」って感じだった。イガ丸はあんなに元気なのに脳腫瘍であるわけないじゃん、誤診だよと何度思ったことか…。
でも、誤診じゃなかった…。脳腫瘍は小児科では扱えないので、すぐに脳神経外科の先生から詳細を説明してもらってくださいと言われ、看護婦さんと先生に支えられ脳神経外科の部屋に出向く。
脳神経外科の先生の方がもっとシビアだった。
「小児脳腫瘍は80%が悪性です。」
「イガ丸君の場合、腫瘍がかなり大きく脳幹(生命を司る大事な場所)にくっついていると思われるので手術で正常な脳を傷つけることは免れない。その場合、立てない、歩けない、座れない。また喋れない、物が飲み込めない、呼吸もできない…と言った障害が残る可能性が高いです。元気でいられる期間は短いと思って下さい。」
ほかにも何か言われたけれど、途中からは頭がぼーっとして何を言っているのか理解できなかった。そして、最後にこう言われた。
「手術をしても5年生存率はかなり低いです。長くは生きられないと思って下さい。」
いきなりそんなことを告知されて正気でいられる人がいたら、すごいと思う。現にイガ丸は今生きてるのに…全然元気なのに…嘘だって誰か言ってよ…誤診だって!!私の心の中は堂々巡りだった。
パパが職場から飛んできた。今日は保護者会だったのに事情を話して全てキャンセルしたらしい。すぐに脳神経外科の先生の所に行き再度告知を受けた。私はもう2度と聞きたくないとイガ丸の側にいることにする。
シロップを2杯も飲んだイガ丸はこんこんと眠ったまま。このまま目を覚まさないんじゃないかと不安になる。
電話でイガ丸の病気のことを知らせた、じいちゃんやばーこ、たまたま仕事が休みだった私の弟(さっくん)も飛んできた。じいちゃんは「じいちゃんよりも先に死ぬなんてゆるさんぞ」と泣いている。今までずっと姉弟をやってきて泣いた所を見たことがなかったさっくんもソファーにもたれて泣いていた。パパも号泣。泣けるみんながうらやましかった。私は涙も出てこない…。
そのまま入院。
寝ているイガ丸を残し、家に荷物を取りに帰る。
玄関を開けたら、朝病院に出かけるときにイガ丸がほかっていったボールが落ちていて何とも言えない気持ちになる。
「イガ丸。この家に帰ってこれるかなあ?」
と考えたりもする。
夕方目を覚ましたイガ丸。入院すると言うことがいまいち理解できていない模様。でもママと2人でラブラブでお泊まりと言うと納得したみたい。
今日もイガ丸は元気。
嘔吐は1回。
嘔吐があるため絶食を命じられる。
飲み物と飴はOKなので、それで飢えをしのいでいる。
点滴をつながれ、栄養剤と脳圧を下げるための薬を1日に4回入れられる。
私は不安と恐怖で一睡もできなかった。