気分はスパイ

 私がはじめて化粧品を買ったのは3年前の夏のことだ。とある休日、当時バイトに来ていた大学生とふたりで近所のドラッグストアの一角にしゃがみこんだ。女性客を退けてあれこれ迷う男2人の後ろ姿はさぞ異様に映っただろう。ここまで書いて一応断っておくが、私にその趣味があった訳ではない。私たちが夢中になって見ていたのは化粧品の容器の方だった。(それも趣味だろ、と言われればその通りだが)
 その化粧品のブランドは『FSP』。容器のデザインは、「理科の実験のときに登場する未知の薬品が入ったボトル」といった感じだった。同時期、渋谷などでも大々的にプロモーションが展開されており、『ZERO Halliburton』のスーツケースに整然と納められたその「未知の薬品」は男性にとってもかなりクールな印象だったのだ。ちなみにキャッチコピーは「世界を征服せよ」。「未知の薬品」を持って秘密裏に世界を飛び回るスパイの気分だ。ちなみに当時のウェブサイトは「空港」、商品カタログは「偽造パスポート」だった。
 そしていま、それを思い出させるような商品がまた売られている。それは『CHANEL』の"Summer Colour Collection 2002"の"Artist Palette"だ。絵の具のチューブそのものといった感じのそれは、最高の洒落と(お洒落?)色選びの楽しさを連想させる。
 しかし、だからといって油絵のように絵の具を重ねすぎないようにして頂きたい。キャンバスの素材感ある白も素敵だから。


FSP


『FSP』 (エフエスピー)
ブランディングの都合からか、メーカー名は一切伏せられていたがバックは資生堂だった。

『ZERO Halliburton』 (ゼロハリバートン)
1938年、アメリカで生まれたゼロ・ハリバートンは、1969年にアポロ11号で月から石と砂を持ち帰った。

『CHANEL』 (シャネル)
シャネルが手がけるまでは、ジャージは下着素材、黒のドレスは喪服にしか使われなかったという。


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