素敵なデジカメを使っていますか?

 素敵なデジカメを使っていますか?しかも首から下げたりなんかしてみてもパチリと決まっちゃうような。まあ、海外から見た日本の風刺画ではないので、いま時カメラを首から下げるかどうかは別にしても、昔のカメラはカッコ良かった。いや、知らない人は銀座の中古カメラショップに行ってみれば判るが、いまだから、まさにカッコ良いのだ。いまのデジカメにそんな道具としての魅力はあるのだろうか…。
 1950年代まで、日本ばかりでなく世界中のカメラメーカーは、あるひとつのメーカーがつくるカメラの完全なコピー品に己のブランドを冠して製造・販売していた。いま考えればまったくおかしな事態ではあるが、その当時、それ程までにそのメーカーのカメラの技術力と価格は他を寄せ付けないアドヴァンテージを持っていた。そのメーカーのカメラとは、ご存じドイツの『Leica』である。
 しかし、その後1959年を機に事態は一転する。日本光学(現在「ニコン」)が『Nikon F』を発表したのだ。『Nikon F』は、それまでは脇役としてしか使われていなかった一眼レフ方式を採用したものだったが、そのころ報道関係を中心に高まっていた「より望遠を」「より明るく」といった時代の声に見事にフィットした。また、そのオーバースペックとも言うべき安定性と信頼性を買われ、世界はおろか、NASAのアポロ15号を皮切りに「スペースカメラ」として宇宙まで制覇した。また、もうひとつ忘れてはならないのは、そのデザインに多大な影響を与えた、日本を代表するグラフィックデザイナー『亀倉雄策』。緊張感のある直線、鋭角的なデザインは、『Leica』やそのコピー品達とは明らかに異なる表情で、まさにトガった存在感を醸し出していた。
 操るものに「知識」よりも「情熱」や「経験」を要求し、それを満たせなければ容赦なく「レベルの違い」を思い知らされる。それは、ストイックなスポーツカーのようなものかもしれない。そして時代は変わり、我々はステアリングさえ切ればスルスルと曲がってくれる中年スポーツカーのようなカメラを操って、いい気になってはいないだろうか…。
Nikon F
『Leica』 (ライカ)
世界中のファンを熱くさせるライカ。そのカリスマ性は不動のもの。

『Nikon F』 (ニコン・エフ)
1959年に発売され、なんと1974年まで15年間も販売が続いたロングセラー。いまでは考えられないライフサイクルだ。
(参考文献: 「月刊日本カメラ92年1月号」

『亀倉 雄策』
日本を代表するグラフィックデザイナー。1991年に文化功労賞を受賞し、1997年に没するまで国内外多数の賞を受賞。カメラの代名詞「Nikon F」の特徴的な三角のペンタカバーも氏の発案によるもの。


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